「仮想通貨ってどうなんだ?」
「なぁ、仮想通貨ってどうなんだ? 相続しない方がいいのか?」彼がいつになく神妙な顔で聞いてきた。
私は「そんなもん税理士に相談してくれよ」と返事をしながらも、説明をはじめる。「あくまでざっくりした説明だが、仮想通貨はおすすめしない。4年に1度くらいだけ発生するバブルの時以外は値上がりしないし、税金も高いから……」
私が言い終わらないうちに、悠斗さんは「まあなんか難しそうだし、相続で仮想通貨をもらうのはやめにするわ」と、早々に結論を出した。私もそれが一番だろうと思ったので、その日はそれ以上とくに追及しなかった。
悠斗さんの弟、剛生さんも、後日悠斗さんと話し合った際に、同じ結論に達したという。
一方、末っ子の麻子さんは上2人とは全く異なる感性を持っていた。流行に敏感でSNSも駆使する麻子さんは、むしろ仮想通貨に強い関心を持っていたのだ。
また、当時の仮想通貨の価格は過去最高値付近にあった。利にさとい彼女が飛びつかないわけがなかった。
「じゃあ仮想通貨は全部私がもらうね」と麻子さんが主張し、その通りすべて相続することになった。
おのずと、仮想通貨以外の財産は剛生さんと悠斗さんが半分ずつ分けることになった。
遺産分割についてそのように決まった翌週、悠斗から呼び出された私は事のいきさつをすべて聞いた。
そのうえで、「遺産分割が終わったから書類作ってくれないか?」と依頼を受け、遺産分割協議書を作成した。
揉めることは一切なかった。みな、当面お金の心配をしなくてもいいくらいの金額を相続できて満足していた。そのため遺産分割協議書の作成も非常にスムーズだった。
こうして近藤さんの遺産の相続は平和裏に終わったはずだった。
●長女・麻子さんの選択が、思わぬ悲劇を呼び寄せてしまう……。後編【「暴落すると知っていたら仮想通貨はもらわなかった!」と激怒…遺産を仮想通貨でもらった長女が「家庭裁判所に訴える!」と逆上した理由】では、仮想通貨で相続するリスクについて解説します。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
