妻への思いを抱える一男

「……1人で何とかなる。別に今だって暮らせてる」

瑠美は一男に厳しい視線を向ける。

「このまま家で孤独死されると周りが迷惑するの。だから入院してよ。お願いだから死んでまで人に迷惑かけないで」

「……どうせ死ぬのならこの家がいい」

「なんで?」

一男は背中を丸めて答えた。

「……ここには母さんとの思い出が」

瑠美は思わず鼻で笑ってしまった。

「思い出? 何それ? あんたがギャンブルで借金を作って母さんに苦労をかけたっていう思い出がそんなに大切なの?」

「……申し訳ないとは思ってるよ」

「そんな言葉、今さら聞きたくないよ。母さんにあれだけ苦労かけておいてさ」

一男は苦しそうな顔をして何も言わなかった。

「そういえば借金はどうしたの?」

「……もう完済したよ。土木の現場を転々としながら何とか返したんだ」

瑠美の記憶では高校卒業して家を出るまでの間は借金は残っていた。一人暮らしを始めてからは母親に借金のことを聞いていたが、ずっとごまかされて返済が済んだかどうか分からなかった。

「完済したのいつ?」