finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

「外国人受け入れが年金問題を救う」は本当か? 厚生労働省が踏み込んだ”センシティブな議論”の中身とは

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.09.26
会員限定
「外国人受け入れが年金問題を救う」は本当か? 厚生労働省が踏み込んだ”センシティブな議論”の中身とは

厚生労働省社会保障審議会は9月4日、第106回年金数理部会を開き、外国人の受け入れが公的年金財政の安定性にどのような影響を及ぼすかについて議論が行われました。基調講演で登壇した専門家は、外国人の働き手をその家族とともに積極的に受け入れることで、長期的にみて公的年金財政の負担が減少するとの分析を紹介。参加した有識者委員からは、排外主義的な論調の広がりを念頭に、制度の支え手として外国人を受け入れる意義について、国民に広く理解を共有すべきといった声が上がりました。

公的年金にとって外国人は「貢献度大きい」

会合では国立社会保障・人口問題研究所の林玲子所長が登壇。「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」と題して基調講演を行いました。

日本の出生率は、2005年から2015年にかけて微増が見られたものの、その後は低下しています。少子高齢化が深刻化する中、一部では、外国人が日本で子どもを産むことで、結果的に出生率の減少が食い止められるのではないかとの期待論があります。

ただ、林氏は、フランスなど他国と比べて、受け入れた外国人が入国後に出産する割合が少ないことや、そもそも日本へ送り出す国(中国、韓国、タイなど)の出生率が日本よりも低くなっている現状を指摘し、外国人増加による出生数改善は見込みにくいことを説明しました。

また、日本での外国人の「出生力」が低い原因については、婚外子の権利・選択的夫婦別姓を含め結婚や出生をめぐる規範・制度が欧米などと比べ著しく前時代的であるといった課題を挙げました。

一方、現在の公的年金制度についてみると、外国人の多くは被用者であることから、厚生年金への外国人の加入は203万人に上る一方、国民年金は加入者が自営・留学生に限られ、77万人にとどまっています(いずれも2025年3月時点)。

外国人労働者が自ら払った分は将来的に本人に一時金として戻ることになりやすいものの、企業が払った部分は年金基金に入ります。林氏はこれを踏まえ、「現時点では受給要件を満たす前に帰国する者が多いと考えられ、年金制度に対しては中立ないしは貢献度の方が大きい」との考えを示しました。

それでは今後、外国人の人口増加は公的年金財政にどのような影響を与えるのでしょうか。林氏が紹介した先行研究(2015年発表)では、低賃金の男性労働者を政策的に毎年10万人受け入れると仮定して、「外国人労働者のみを受け入れる」(ケースA)と、「家族の帯同・呼び寄せや第2世代以降の誕生などを前提とする」(ケースB)の2パターンに分けてシミュレーションを実施。その結果、ケースAでは、社会保障負担の大きさを示す一つの指標となる老年従属人口指数(生産年齢人口に対する老年人口の割合)に当初、一定の低減効果がみられるものの、外国人もまた年々高齢化していくため、長期的に見れば効果が薄まっていくことが示されました。

一方の外国人だけでなくその家族も受け入れるケースBでは、来日した本人が高齢化したとしても第2世代以降の誕生があるため、老年従属人口指数の「低下幅もより大きい」といいます。

公的年金にとって外国人は「貢献度大きい」

会合では国立社会保障・人口問題研究所の林玲子所長が登壇。「少子化及び外国人労働者の動向と年金財政」と題して基調講演を行いました。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
次のページ 外国人が年金制度の支え手に?
1 2

関連キーワード

  • #マーケット情報
  • #ニュース解説

おすすめの記事

11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 

finasee Pro 編集部

滋賀銀行の売れ筋ランキングが様変わり、年末を控えてインデックスファンドからアクティブファンドに流れが変わった?

finasee Pro 編集部

【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに

みさき透

【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」

Finasee編集部

今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解

川辺 和将

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
変化の時期における「長期投資家」の立ち位置は?ベイリー・ギフォード共同経営者に聞く
【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からの評価は? トップはキャピタル・インターナショナル、運用力やサポート力で図抜けた評価/IFA法人編
野村證券の売れ筋で首位に定着する「グロース・オポチュニティ・ファンド」、さらに「半導体」「ゴールド」も追い上げ
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
【みさき透】SBI新生銀行の上場で現実味を増す「帝国の野望」――分配・解約資金をグループに還流、金利でも稼ぐモデルに
11月のトップは「電力革命」、静銀ティーエム証券の売れ筋の変化は新しいスターファンドの胎動か? 
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解
変化の時期における「長期投資家」の立ち位置は?ベイリー・ギフォード共同経営者に聞く
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
ECL計算方法は解釈の余地が大きすぎないか
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら