社債市場に「とりわけ強い課題意識」
日本証券業協会の日比野隆司会長が7月1日、半年ぶりの記者会見に臨みました。会長は比較的初期のがんが見つかり2月以降は基本的にリモートで業務に当たっていましたが、「一連の治療も無事完了した」と説明。「新たな事務年度を迎えることができて大変嬉しく思っている」と述べました。
日証協は新事務年度のスローガンとして、前年度に引き続き「貯蓄から投資、その先へ」を掲げ、方針を打ち出しています。会長は、「国民の安定的な資産形成」と「資本市場の更なる機能発揮」の2軸で取り組みを進めると説明。資産形成については、来年スタートするこどもNISAに触れ、「さらに幅広い層にとって、資産形成の入り口としての役割がますます大きくなる」と指摘。家計金融資産に占める現預金の比率が半分を割った状態について、「裏返せば、インフレ経済の中でも半分近くが現預金に滞留している状況にあり、まだいろいろと取り組まなければいけないことがある」とし、J-FLECとの連携を通じてNISAや確定拠出年金制度に関する金融リテラシー向上と、「行動変容を促すような教育活動」に引き続き取り組んでいくと述べました。
資本市場の機能発揮に向けた取り組みに関しては、社債市場の発展に向けた制度整備に注力すると説明し、次のように述べました。
「社債市場にはとりわけ強い課題意識を持っている。我が国資本市場の『失われた30年』で失われたミッシングピースと言っていいのではないか。一部個人向け銘柄はあるものの、高格付け銘柄に対するバイアスが発行体・投資家ともに相当強い。多様な発行体、多様な年限、多様な信用力といった銘柄が揃って、多様な投資家が参加しているという状況にはない。経産省研究会の報告書や会社法改正の議論等を踏まえつつ、今後の発行体の拡大に期待するとともに、幅広い投資家層の参加を促すため、プライマリーでの社債発行の効率化・円滑化に向けた取り組み、セカンダリーにおける取引情報の報告・発表の拡充など、実行可能な施策から着実に取り組んでいきたい」
あわせて、スタートアップへの資金供給促進、サステナブルファイナンス推進、ミドルバックオフィス業務の効率化、AI活用支援などに努めるとしました。
米国株へのアプリオリな支持は“努力不足”
記者会見ではNISAの買付が海外株投信に集中することで資本逃避(キャピタルフライト)が生じているのではないかと質問が上がり、次のように回答しました。
「つみたてNISAでオルカンばかりというのはどうなのかという声は当初からあるが、外国人も日本株をせっせと買っているし、NISAで日本株への投資は昨年35%程度だったが、大手10社からの推計で足元41%になっている。内外へフリーに資金が行き交える状況は良いかと思う。日本人が外にある程度投資するのは分散の観点からも特段、今目くじらを立てる状況にはない」
一方、日本の個人投資家については「久しく基本的にマイルドな売り越し主体だが、特にパフォーマンスの良い時や良い展望があるときに、常に売り越しはない方が望ましい」と指摘。「昨年も今年の上半期も日本株はメジャーなマーケットの中では、為替を勘案しドルベースで見ても圧倒的にベストパフォーマーとなっている。その意味では、若い人が『米国がアプリオリに良い』と思っているとすれば、それは我々証券業界の努力不足であり、日本の投資機会をしっかり紹介していかなければいけない」と述べました。
会見時点で1ドル162円に達した為替水準に関しては、「かつてプラザ合意で円高に行くプロセスで経験した40年弱前と同水準だが、ドル自体が弱くなっているので、実効レートからすると360円時代より安い水準になっているのかと思う。そういう意味では、水準が高いか安いかと言われれば、ちょっと円は安いなと思う」と話しました。
