日本銀行のマイナス金利政策解除による「金利のある世界」への移行や、デジタル化の進展によるキャッシュレス決済の浸透などにより、預金者の意識や行動にも変化の兆しが見え始めている。これに加えて、人口減少に伴って将来的には銀行の預金量も減少に転じる可能性があり、従来のコア預金モデルの高度化、さらにはそれを使用したALM(資産・負債の総合管理)の高度化が求められている。
こうした中、「銀行経営の根幹をなすALMにおいて、定量および定性の両面から多角的に研究を行い、業界全体で知見を共有しながらALMの高度化を図ることを目的」としてコンソーシアムを立ち上げられようとしている。当コンソーシアムでは、共同研究を通じてコア預金モデルの高度化やモデルの運用面での課題解決、ALM戦略の定量分析を用いた収益性強化策などが模索されている(図)。
コンソーシアムのメンバーは静岡銀行を中心に複数の国内地域金融機関と資産運用会社でありながら学術的ネットワークも豊富なアリアンツGIに加えて、コア預金モデルの原型の開発者である周南公立大学の木島正明教授、モデル構築のシステム開発やコンサルティングを担う日鉄ソリューションズグループのNSフィナンシャルマネジメントコンサルティングといった専門家で構成されている。
コア預金モデルの高度化にあたっては短期的および長期的な視点に分けて取り組み、7月の会合では、預金動向の予測やコア預金モデルの導入・運用に関する地域金融機関の課題認識、欧米の銀行預金動向調査、そして金利上昇が先行している米国の預金データを用いた分析事例についての考察などが共有された。
会合での議論として、向こう10年以内に預金全体が減少に転じると考えている地域金融機関が少なくないとの指摘もあった。これまでのように右肩上がりを続けてきた預金の推移の転換を示唆しているのだろう。
このほか、コア預金モデルの運用における地域金融機関側の主な課題として「専門性が高く理解が難しい」「行員の教育や知識の承継」などもあげられており、モデルの浸透や理解に対する課題も浮き彫りになった。
AA-Kijimaモデルの開発者である木島教授を交えた踏み込んだ議論がなされ、預金量変化を検知することが重要であることや、将来の金利シナリオを踏まえた預金量予測の精緻化の可能性が示唆された。
金融環境の変化が加速する中、このコンソーシアムの成果によって銀行経営がどう変化するのか、ひいては各地域経済の発展にどのように貢献するか、業界内外から注目が集まっている。コンソーシアムでの議論や研究成果について今後も継続的にウォッチしていきたい。