資金提供だけにとどまらない支援活動に取り組み始めた経緯
――まずは、カーライル・ジャパンの寄付活動についてお聞かせください。いつ頃から、どのような形で寄付を行っていらっしゃるのでしょうか。
カーライル・ジャパンでは、10年以上前から社会課題の解決に向けた寄付を行っています。当社で働くメンバーは社会貢献への意識が高く、個人レベルでNPO(特定非営利活動法人)、NGO(非政府組織)などの活動をしている者もいます。
当初はそうしたメンバーからの紹介や、外部から依頼をいただいた案件を精査して寄付先を決めていました。しかし、7~8年前に当社の寄付のあり方、要は、カーライル・ジャパンとしての寄付政策や、当社のバイアウト投資のノウハウを活かして社会貢献につなげられる寄付先はどこかを社内で議論し、長期的に支援していく寄付先を3団体に絞り込みました。経済的な困難や虐待、いじめ、発達障害など生きづらさを抱える子どもたちを支援するNPOのLearning for All(LFA)も、その1つです。
社内議論の際、メンバーの関心が特に高かったのが教育や貧困問題、さらにベンチャー的な活動を行う非営利の民間団体でした。LFA代表理事の李炯植(り ひょんしぎ)さんから最初にお話をうかがった時、世界で五指に数えられる経済大国の日本で、7人に1人の子どもが貧困に苦しんでいる現状に大きな衝撃を受けました。
そこで、一時的な生活支援にとどまらず、子どもたちが将来に希望を持ちながら成長していける環境作りを長期に渡ってサポートしていこうという話になったのです。
――会社として、あるいは個々のメンバーの方がさまざまな寄付をされてきた中で、さらに一歩踏み込んで長期の支援先を3つの団体に絞り込まれたということですね。御社の寄付政策としては、どんなことをお考えなのでしょうか。
重要なのは、単なる資金提供にとどまらず、当社が築いてきた知見を支援活動に活かして社会貢献につなげていくことです。
LFAの取り組みを例に挙げれば、彼らは企業や個人からの寄付をベースに地域での支援を行っているわけですが、寄付ばかりに依存していると運営が不安定になります。さらに、今後の展開や地域の企業とどう連携していくかなど、組織運営上の課題も多数抱えています。そこで年に4~5回は当社のスタッフが加わり、課題解決に向けた議論を行うようにしています。
当社には多様な企業とのネットワークがあり、銀行や証券会社の支店、大手メーカーの工場などを紹介し、LFAの活動を通して地域社会とのつながりを創出していくことができます。また、資金提供に限らず、応援人員を出すとか、食料を寄付してその保管場所を提供するといった支援の方法もあります。そうした包括的な支援を継続していくことに意義があると考えています。