事業活動と社会貢献の共通項は「持続的かどうか」の観点
――近年は社会や環境へのインパクトを重視する「インパクト投資」が注目されつつあります。御社は本業のバイアウト投資では、経済的なリターンに加えてポジティブインパクトも追求されていることと推察しますが、そうした活動と寄付との両立、あるいは棲み分けをどのように考えていますか。
サステナブルなエコシステムを構築していくという観点では、当社の事業活動も寄付も変わりはありません。当社が投資先企業をサポートする際は、単に雇用を創出するだけでなく、企業活動を通して地域経済の発展にどれくらい貢献できるのかを意識しながら経営に関わってきました。
それは寄付も同様で、だからこそ一度きりに終わらず、いかに循環的、持続的なものにしていくかを常に考えています。
日系金融機関とサポートの形が異なる背景とは
――サステナブルなエコシステムを築いていくには、さまざまな業種の企業や地域社会との結びつきの深い金融機関の果たすべき役割も大きいと思います。日本の金融機関がもっと寄付に積極的に取り組む意義は大きいのではないでしょうか。
そうですね。地域経済の発展という意味では地方銀行など地域金融機関の取り組みは重要です。地銀は地域の何百、何千という会社をサポートする、ある種のインフラ的な役割を果たしています。
一方で、われわれは個別の企業に対してさまざまな形で支援するビジネスモデルで、その企業を通じて地域社会に貢献していく形になります。地域経済全体を俯瞰する地銀とは本質的に役割が違うのです。従って、当社では次代の地域のリーディングカンパニーをいろいろな地域に育てていくことで、地域経済のお役に立ちたいと考えています。その上で、各地域の地銀とうまく連携できれば、面白い事例が生まれるのではないかという期待があります。
――御社が投資先を通じて先端的な取り組みを行い、それが成功体験として地域金融機関の協力も得ながら地域に広く根付いていくといいですね。
そうですね。もっとも、金融機関の皆さんが寄付などを通じた社会貢献活動に決して消極的というわけではないと思います。われわれが支援している団体が各地域でさまざまな活動を行う際に、金融機関に寄付の依頼をすると、各エリアの支店レベルでは非常に前向きな反応であるものの、本部に予算の承認を得る段階で決済が下りずに頓挫してしまうケースも少なくないと聞きます。
そうした中で今後、私が注目しているのは、次代を担う若い世代の方々の発言や行動です。若い世代は寄付や社会貢献といったキーワードに大変敏感です。自分たちの業務が直接的、あるいは間接的に社会貢献や社会課題の解決に寄与しているという実感を得ることは、彼らにとって大いに意義があるのです。
金融機関はもとより、さまざまな業種の企業が積極的にサステナブルな経営に取り組むことが彼らのエンゲージメントを向上させ、将来に渡って長く活躍してくれることにつながっていきます。
――本日はどうも、ありがとうございました。