finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

野村アセット社長が語る プロダクトガバナンス構築への取り組みと「難しさ」

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.05.10
会員限定
野村アセット社長が語る プロダクトガバナンス構築への取り組みと「難しさ」

金融庁で4月24日に開かれた金融審議会「市場制度ワーキンググループ」(WG)では、野村アセットマネジメントの小池広靖CEO兼代表取締役社長が登壇し、同社におけるプロダクトガバナンスに関する取り組みについてプレゼンしました。WGでは資産運用会社におけるプロダクトガバナンスに関するプリンシプル(行動原則)の新設に向けた検討を始めており、同社の施策は一つのプラクティスとして今後の議論に反映されることになりそうです。

「ステージ2」で何が変わったか

野村アセットの小池社長は、今般始まったプロダクトガバナンスに関するプリンシプルの策定(既存FD原則の改定)に向けた議論の間、市場制度WGに暫定的にメンバー入りしています。

金融庁はここ数年、商品の企画、運用の実務が販売会社など顧客外の影響力によって歪められることのないよう注意を呼び掛ける趣旨で、プロダクトガバナンス(商品統治)の重要性を強調しています。小池社長は、金融庁による働きかけが始まるよりも前から利益相反管理などの体制整備を進めてきた野村アセットの取り組み経緯について説明しました。

2016年に同社はファンド業務運営諮問会議を設置。諮問会議は独立社外取締役を含む社外メンバーが過半数を占め、ファンドの信託報酬水準に関する方針などを検証してきました。しかし、「この体制が資産運用業の高度化が求められる中で、現在の管理体制が本当にこのままでよいのかという思いが強くなり、様々議論を重ねた結果、お客様目線でより実効的に強化をしていくのために判断を行った」結果として、2022年に新たにプロダクトガバナンス部を設立しました。

プロダクトガバナンス部の設置後を、顧客本位に向けた取り組みの「ステージ2」と位置づけています。ステージ1とステージ2の違いについて小池社長は、「もちろん以前のパフォーマンスの検証は行ってきたが、過去のモニタリングは運用の巧拙の評価に偏る傾向があった。現在は商品全体の評価、パフォーマンスがふるわない商品の改善に関するルールなど、顧客目線で踏み込んだプロダクトガバナンスを推進している」と説明しました。

プロダクトガバナンス部では(1)長期的な資産形成に資する商品提案(2)説明責任の履行(3)課題の発見と改善の実施という3つの柱を設け、循環的、包括的に取り組みを推進することを基本姿勢として打ち出し、社全体として投資家目線を取り入れた評価プロセス、評価基準のフレームワークを構築しているということです。

2023年には、同社が抱える約700本に上る公募投信のレビュー(ファンドレビューレポート)の作成・公表を開始。パフォーマンス、商品性、情報提供の3つの観点でそれぞれ3段階評価を行い、赤評価(要改善)と判断したファンドについては、あわせて改善策を記載し、一定期間経過後に改めて改善策のその進捗度合いについて公表しています。

小池社長はレビューの狙いについて「高品質のファンド群に、より多くの経営資源が投入されるようになる結果、運用力向上などサービスの改善が図られ、最終的にお客様の利益に資する商品提供を促進していく効果を期待している」と語りました。

想定属性、最初は「心配」も

今回の新プリンシプル策定に向けた議論では、金融商品の組成事業者が各商品の想定顧客層をいっそう具体化、明確化するよう求める案が浮上しています。

野村AMでは、想定顧客を「広く一般的な顧客向け」「特定のニーズがある顧客向け」「特定の顧客向け」の3段階に分類。想定顧客の区分に応じて、顧客理解の促進や顧客層の確認など追加的な対応を取るよう取り決めているということです。

追加的な対応が必要な商品の例として小池氏は同社が手掛けるプライベートエクイティファンドを挙げ、「低流動性資産に投資を行っており、流動性、換金に制約があることから、レターを販売会社にお送りしている」と説明。販売会社に対し、想定顧客属性を踏まえた提案や、販売先に関するデータ提供を求めているとしたうえで、「販売会社の皆様にとっても初めての試みであり、承諾いただけるかどうか非常に心配だったが、弊社のプロダクトガバナンスの方針にご賛同いただき、前向きに対応いただいている」と説明しました。

また、小池社長はプロダクトガバナンスを推進するうえでの販売会社との連携の重要性についても言及。「運用会社とひとことで言っても、規模も違えば商品もまちまち、販売チャネルも多様であり、求められるプロダクトガバナンスの姿が必ずしも一つにまとまるというところではないところに難しさがある。資産運用会社だけで考えるものではなくインベストメントチェーン全体で捉え、販売会社にも資産形成普及のパートナーとして理解してもらえるよう取り組んでいきたい」と語りました。

「ステージ2」で何が変わったか

野村アセットの小池社長は、今般始まったプロダクトガバナンスに関するプリンシプルの策定(既存FD原則の改定)に向けた議論の間、市場制度WGに暫定的にメンバー入りしています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

福岡銀行で国内株「配当フォーカスオープン」が売れ筋トップ、「純金」「米国株」はランクダウン

finasee Pro 編集部

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

森脇 ゆき

IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」

川辺 和将

成長と財源の両立に具体策はあるか?野党「NISA再強化提言」に見る多党制時代の“建設的議論”のあり方

文月つむぎ

2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」
福岡銀行で国内株「配当フォーカスオープン」が売れ筋トップ、「純金」「米国株」はランクダウン
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編
「投信のパレット」の進化形でコンサルティングのさらなる高度化へ case of ふくおかフィナンシャルグループ
2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド
利益相反リスクを内包する日本の「総合証券モデル」「顧客本位」の下で求められる「顧客は誰か」という定義
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
利益相反リスクを内包する日本の「総合証券モデル」「顧客本位」の下で求められる「顧客は誰か」という定義
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編
2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド
三菱UFJ銀行の売れ筋は「日経225」に人気集中、「純金」に代わって「オルカン」人気が復調
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら