「ステージ2」で何が変わったか
野村アセットの小池社長は、今般始まったプロダクトガバナンスに関するプリンシプルの策定(既存FD原則の改定)に向けた議論の間、市場制度WGに暫定的にメンバー入りしています。
金融庁はここ数年、商品の企画、運用の実務が販売会社など顧客外の影響力によって歪められることのないよう注意を呼び掛ける趣旨で、プロダクトガバナンス(商品統治)の重要性を強調しています。小池社長は、金融庁による働きかけが始まるよりも前から利益相反管理などの体制整備を進めてきた野村アセットの取り組み経緯について説明しました。
2016年に同社はファンド業務運営諮問会議を設置。諮問会議は独立社外取締役を含む社外メンバーが過半数を占め、ファンドの信託報酬水準に関する方針などを検証してきました。しかし、「この体制が資産運用業の高度化が求められる中で、現在の管理体制が本当にこのままでよいのかという思いが強くなり、様々議論を重ねた結果、お客様目線でより実効的に強化をしていくのために判断を行った」結果として、2022年に新たにプロダクトガバナンス部を設立しました。
プロダクトガバナンス部の設置後を、顧客本位に向けた取り組みの「ステージ2」と位置づけています。ステージ1とステージ2の違いについて小池社長は、「もちろん以前のパフォーマンスの検証は行ってきたが、過去のモニタリングは運用の巧拙の評価に偏る傾向があった。現在は商品全体の評価、パフォーマンスがふるわない商品の改善に関するルールなど、顧客目線で踏み込んだプロダクトガバナンスを推進している」と説明しました。
プロダクトガバナンス部では(1)長期的な資産形成に資する商品提案(2)説明責任の履行(3)課題の発見と改善の実施という3つの柱を設け、循環的、包括的に取り組みを推進することを基本姿勢として打ち出し、社全体として投資家目線を取り入れた評価プロセス、評価基準のフレームワークを構築しているということです。
2023年には、同社が抱える約700本に上る公募投信のレビュー(ファンドレビューレポート)の作成・公表を開始。パフォーマンス、商品性、情報提供の3つの観点でそれぞれ3段階評価を行い、赤評価(要改善)と判断したファンドについては、あわせて改善策を記載し、一定期間経過後に改めて改善策のその進捗度合いについて公表しています。
小池社長はレビューの狙いについて「高品質のファンド群に、より多くの経営資源が投入されるようになる結果、運用力向上などサービスの改善が図られ、最終的にお客様の利益に資する商品提供を促進していく効果を期待している」と語りました。
想定属性、最初は「心配」も
今回の新プリンシプル策定に向けた議論では、金融商品の組成事業者が各商品の想定顧客層をいっそう具体化、明確化するよう求める案が浮上しています。
野村AMでは、想定顧客を「広く一般的な顧客向け」「特定のニーズがある顧客向け」「特定の顧客向け」の3段階に分類。想定顧客の区分に応じて、顧客理解の促進や顧客層の確認など追加的な対応を取るよう取り決めているということです。
追加的な対応が必要な商品の例として小池氏は同社が手掛けるプライベートエクイティファンドを挙げ、「低流動性資産に投資を行っており、流動性、換金に制約があることから、レターを販売会社にお送りしている」と説明。販売会社に対し、想定顧客属性を踏まえた提案や、販売先に関するデータ提供を求めているとしたうえで、「販売会社の皆様にとっても初めての試みであり、承諾いただけるかどうか非常に心配だったが、弊社のプロダクトガバナンスの方針にご賛同いただき、前向きに対応いただいている」と説明しました。
また、小池社長はプロダクトガバナンスを推進するうえでの販売会社との連携の重要性についても言及。「運用会社とひとことで言っても、規模も違えば商品もまちまち、販売チャネルも多様であり、求められるプロダクトガバナンスの姿が必ずしも一つにまとまるというところではないところに難しさがある。資産運用会社だけで考えるものではなくインベストメントチェーン全体で捉え、販売会社にも資産形成普及のパートナーとして理解してもらえるよう取り組んでいきたい」と語りました。