――まずは2014年のNISAのスタート以降、その推進に積極的に取り組み、口座数でも地方銀行のトップを走ってきた福岡銀行の古澤さんから足元の状況を伺えますか。
古澤 NISAの推進・普及においてはグループのFFG証券との連携をかなり意識しています。新NISAのスタートに際し、昨年5月以降に銀証でつみたてNISA商品を拡充・統一、株式売買手数料の引き下げや提案ツールの整備などを進めてきました。
投資信託による裾野拡大も引き続き重視していますが、新NISAでは個別株式での運用意向も増えてくると予想しています。そのため、銀行本体でも仲介スキームを使って証券総合口座開設の受付をスムーズにできるようにし、併せて口座開設からNISAの申し込み、商品の購入受付まで非対面で完結する仕組みを銀証双方で整えました。また、FFG証券では株式のスマホ売買アプリなども導入し、お客さまの利便性向上につなげています。
テレビCMなどのプロモーションやキャンペーンを銀証で連携している効果もあり、NISA口座の新規開設数は順調に伸びています。一方で昨年10月から昨年末までは金融機関の変更も多く、当社グループでNISAをご利用いただくメリットを訴求するなどの対応を行ってきました。1月に入ると流出も減少し、新規開設による増加件数が順調に伸びています。
NISA国座の獲得は順調な一方
金融機関変更による流出が課題
――続いて、横浜銀行の池野さんはどうでしょう。
横浜銀行 営業戦略部 運用商品推進企画グループ グループ長 池野裕昭氏
池野 当行の場合、もともと従来のNISAについては対面ではなく、非対面チャネルを中心に、特に「つみたてNISA」に注力して推進してきた経緯があります。その主な狙いは資産形成層の開拓で、デジタル分野の強化を継続的に図ってきました。
しかし、新NISAのスタートを見据え、2023年度に入ってからは非対面だけでなく、営業店でも積極的に口座獲得を進める方針に転換しています。そのバックアップの意味もあり、キャッシュバックなどのキャンペーンも恒常的に実施してきました。結果として、今年度のNISA口座開設数は前年度との比較でほぼ2倍となっている状況です。
一方で、福岡銀行さんと同様に、10月以降は金融機関の変更による流出が課題になってきました。月によっては新規口座開設数とほぼ同数の流出があったため、その対策として、銀行でNISA口座を保有する利点を訴求するツールなども作成しました。そこで強調しているのはやはりコンサルティングで、資産運用だけではなく、保険や住宅ローン、外部専門家のご紹介といった多様な商品、サービスを活用しながらライフプランについても相談できる点などもメリットとして掲げています。さらには、NISA口座を保有しているだけで預金金利が上乗せになるキャンペーンをこの1月から追加し、これらを新規獲得と離脱防止の両面で活用しているところです。
――多くの地方銀行が、金融機関の変更による新NISA口座の流出に悩んでいるようですね。やはりネット証券に流れているケースが多いのでしょうか。
池野 そうだと思います。特に当行では従来のNISAを非対面中心に推進してきたため、いわば「粘着性の高い取引」ができていなくて、ネット証券に流れやすい面があったのかもしれません。だからこそ、先ほどの銀行のメリットについても、対面でのコンサルティングを強調しているわけです。
――続いて中国銀行の八杉さん、御行でも同じような状況ですか。
中国銀行 営業統括部 上席スペシャリスト 八杉哲史氏
八杉 実は当行の場合、状況が少し異なっていて、昨年10月から12月のNISA口座の流出数が月間100件前後と、おそらく他行さんに比べてかなり少ない数字なのではないでしょうか。それに対して新規口座の開設数は、同じく10月から12月で月間2200件程度と比較的順調に推移しています。2023年3月に5万8000だったNISA口座数はそれまでの9年をかけて達成したものでしたが、それをグループ証券と合わせて2027年3月までに15万にするという相当チャレンジングなKPIをかかげていることもあり、営業店の意識も変わってきました。来店されたお客さまに改めてお声掛けすることで、ハイカウンターからのトスアップが口座開設へとつながるケースなども思った以上に増えてきています。