再エネは安全保障の文脈においても重要
近年、再生可能エネルギー(以下、再エネ)は脱炭素に加え、エネルギー安全保障の観点からも重要性が増しています。
高市首相は8月11日「山の日」に自身のSNSで「国富流出の抑制やエネルギー安全保障の観点から、再エネを始めとする国産エネルギーの確保は極めて重要」と発信しました。
日本は2024年度における一次エネルギー国内供給量の約80%が化石燃料由来であり、その大半を海外からの輸入に頼っています。電源構成(下図)で見ても、2024年度の再エネ比率は約23%にとどまっています。
そのようななか、政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2040年度の再エネ比率を4〜5割程度となる見通しを示しています。なかでも、再エネの最大の供給源として期待されるのが太陽光発電です。
みなさんも最近は太陽光パネルをよく見かけるようになったと思います。実際に、国内の太陽光発電の発電量は、FIT制度開始前の2011年度から2024年度にかけて約20倍に拡大しています。
2040年度に再エネを4~5割にするためには、さらに2024年度の発電量に対して2.6~3.5倍増やす必要があります。しかしここで疑問がわきます。日本の国土の約7割は山地や丘陵地であり、平地は限られています。設置場所の確保だけでなく、今後の導入拡大においては自然環境や地域社会との共生が欠かせません。
こうした課題に対応する技術として注目されているのが、次世代の太陽電池であるペロブスカイト太陽電池です。
置ける場所が格段に増えるペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を発電層に用いた太陽電池です。 ちなみにペロブスカイトはロシアの鉱物学者であるペロブスキーさんにちなんで名づけられました。従来のシリコン系太陽電池に比べて軽く、フィルム型であれば曲げられることが大きな特徴です。これにより、重量のあるパネルを設置しにくい工場・倉庫の屋根や、建物の壁面などへの設置が期待されています。
ペロブスカイトにより高層マンションがあるような都市部でも創エネができるようになるかもしれません。
注目されるもう一つの理由は原料です。発電層の主要材料であるヨウ素は、日本はチリに次ぐ世界第2位の生産国で、世界生産量の約3割を占めています。一方ペロブスカイト太陽電池の構成材料は多岐にわたり、ヨウ素が国内調達できるから安心というわけではありません。その他の原材料についても特定の国に依存しないようなサプライチェーンの構築をしていく必要があります。
ペロブスカイトの主な課題は耐久性と大型化・量産時の性能確保です。シリコン系太陽電池の耐用年数は25~30年程度とされています。一方でペロブスカイトの耐用年数は各社によってさまざまですが、例えば、積水化学は規格に準拠した加速試験により屋外暴露10年相当の耐久性を確認したと説明しています。これは、実際の屋外環境で10年稼働させた実績を示すものではないため、様々な気象状況にさらされる実環境で、長期にわたり発電性能を維持できるかを確認していく必要があります。
大型化については、研究において小さな面積で得られた高い変換効率を、そのまま量産品に当てはめることはできません。量産化においても高い変換効率を持つ製品を安定して生産できるかに注目したいです。
今後への期待
政府は2040年までに約20GWの導入を目指し、国内市場の立ち上がりを後押ししています。日本企業は各社の技術的な強みと品質への信頼をはじめとしたブランディングにより、価格競争だけに陥らないような市場形成を行っていくことが重要だと考えます。
さらに、国内で培った技術を生かし、将来的には新興国への展開も期待されます。例えば、電力網が十分に整備されていない地域では、蓄電池などと組み合わせることで、地域で電気をつくり、使う仕組みへの活用が考えられます。再エネに適さない地形が多い国では重要なエネルギー源となるかもしれません。現地の気候に耐えられる品質や導入しやすい価格を実現できれば、日本企業の新たな成長機会につながることも期待しています。
(参考文献)
資源エネルギー庁(2026).総合エネルギー統計時系列表.
資源エネルギー庁(2025).第7次エネルギー基本計画の概要.
資源エネルギー庁(2024a).日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?.
資源エネルギー庁(2024b).エネルギー白書2024.
積水化学工業(2025).統合報告書2025.
高市早苗(2026年8月11日).X投稿.
林野庁(2022). 国有林における林地保全に配慮した施業の手引き.

