朝起きることがつらくなった翔子

枕元のスマホが起床時間を告げるアラームを鳴らしていた。翔子はそれに気付きながらも、すぐには布団から出られなかった。いつもならアラームに気付いたらすぐに起きるのに、最近はしばらくぼんやりとしてしまうことが増えていた。

「翔子、まだ寝てるの?」

寝室の外から夫の栄司の声が聞こえた。ようやく体を伸ばしてスマホのアラームを止めた。

「起きてる。今行く」

そう返して、翔子はゆっくりと体を起こした。

熱があるなど、はっきりした症状があるわけではない。ただ、お盆休みが明けてからずっと全身に重りがついているような、なんとなくすっきりしない感覚があった。

リビングへ行くと、栄司が仕事に行く準備をしていた。

翔子より1つ年上で32歳の栄司は物流会社で配車の仕事をしている。朝が早い日も多く、翔子よりも先に家を出ることも珍しくない。

「おはよう。俺、今日も遅くなりそうだから」

「うん、分かった」

翔子は椅子に腰を下ろし、小さなあくびをした。

「そんなゆっくりしてて大丈夫なのか?」

4年前に栄司と結婚してから住んでいる今のマンションから、事務の仕事をしている不動産管理会社までは、電車を使っておよそ1時間かかる。9時前には出社しなければならないため、いつまでものんびりしている時間はなかった。

「……うん、まあ分かってるんだけどさ」

「眠そうだな?」

翔子はうつむきながら答えた。

「ちゃんと寝たんだけどね。なんか最近ずっとだるいのよ」

「ああ、まだまだ暑いからな。夏バテみたいな感じなんじゃない」

「そうなのかな……」

栄司の言葉に納得することはできなかった。だが、反論もできなかった。翔子自身、なぜこんなにもだるさを感じているのか分からなかった。

そうこうしているうちに栄司は出勤のために家を出ていってしまった。残された翔子は大きく息を吐いて立ち上がり、出勤のための準備を始めた。