会社の将来に不安が募るも、転職には踏み切れない

友人からは「実家が近いんだから、実家から通えば家賃の分が浮くのに」と言われますが、私の中に実家に戻るという選択肢はありません。

私は祖父も父も教員という教育者の一家に育ち、地元で中学校の校長をしている兄がいます。父からは「教員は男女の賃金格差もないし、産休もしっかり取れるし、女性の職場としては理想的だぞ」とさんざん言われましたが、跳ねっ返りの私は教職だけは絶対に就きたくないと思い、受験勉強を頑張って東京の私大の外国語学部に現役合格しました。

商社や貿易会社で得意の語学を活かせたらと考えていましたが、就職氷河期ど真ん中だったこともあり、志望先方面に何のコネもない私は50社以上から門前払いされました。結局、都内での就職は叶わず、地元に戻って現在の勤務先の建設会社で職を得たのです。

建設会社と言っても、地元の公共工事が主体の単なる土建屋です。私の仕事はデータ管理や契約書、見積書、請求書などの書類の作成といった純然たる営業のサポート役で、28年間ずっと変わりません。大学で学んだ英語やフランス語も使う機会がなく、どんどんひからびています。DX(デジタルトランスフォーメーション)化の流れの中で自分なりに勉強してデータ管理の一括化やAI(人工知能)の活用を営業部長に提案しましたが、役員会で「予算が取れない」と却下されました。

近年はDXを売りにした新興建設会社が台頭し、公共工事の獲得競争が激化する中で、勤務先が昭和の企業文化とインフラのまま突き進んでどこまでやっていけるのか、いささか疑問です。とはいえ、この年になると、さっさと見切りをつけて転職するわけにもいきません。給料カットはあるいは緩やかな退職勧告だったのかもしれませんが、石にかじりついてでもこの会社で働き続けるしかないのです。