“タイムリミット”意識し再要望
NISAの現行制度では、保有資産を売却しても、その分の投資枠の復活は次の年まで待つ必要があります。仮に2024年の拡充直後から年間360万円の枠を毎年使い切り続けている場合、2029年に生涯投資枠が上限(1800万円)に達し、資産のスイッチングを行ってもその年のうちには追加投資ができません。
制度改正によって当年中の枠復活を解禁すると、NISAをフルで使い続ける人の投資機会を確保できるようになります。金融庁幹部は「例えば若い時に株式など比較的リスクのあるものに投資していて、そろそろリスクを抑えたものに変えたいという時に資産をスイッチングしやすくなるメリットもあると考えている」と説明。昨年に続いての要求について、「問題となるのは2029年だが、システム改修のための準備や予見可能性の観点を踏まえると、そろそろ実現したい」と狙いを語りました。
枠復活を実現する制度整備に向けては、NISA拡充のたびに議論を呼んできた時と同様、富裕層優遇の批判や回転売買の助長などの懸念をいかに払しょくするか、合理的な説明を求められることになりそうです。
また、つみたて投資枠で投資できるETFの範囲拡大についても要望に盛り込みました。現行の要件では、日経225やTOPIX等の指定指数連動の商品のみが認められています。金融庁幹部は指定指数連動以外で新たに対象に含める範囲について「具体的な要件は公募投信の要件(①純資産額50億円以上②信託開始以降5年経過③信託期間2/3で資金流入超④主に株式または公社債に投資)を参考にしながら、今、検討しているところだ」と説明しています。
加えて、銀行の投資専門子会社が中小企業に出資しやすくするため、税制優遇の適用外となる「みなし大企業」の要件見直しについても要求しました。地域金融機関による地元企業へのエクイティ資金供給への環境整備は、昨年策定「地域金融力強化プラン」や後述の新金融戦略の実現に向けた施策の一環とも位置づけられます。
財務省との共同要望として、「国債に関する税制の検討」を事項要望の1つとして位置付けました。国債のNISA対象化の機運が高まっており、金融庁幹部は「国債保有者層の多様化を通じた安定的な国債保有者層の構築と、金融庁としての個人投資家の資産形成ニーズへの対応という2つの観点から、必要に応じてその措置を検討するものだ」と説明しました。
過去最大「403億円」要求の中身
予算要求では、政策的経費の柱の一つに「地域金融力の強化」を掲げ、28億円を計上しました。具体的には、「地域金融機関による企業価値創造に向けた取組支援」(支援能力強化に向けた実証事業、レビキャリ)や、事業再生支援体制構築のモデル事業を推進するとしています。
高市政権が掲げる「強い経済」を実現する「成長投資の促進」には48億円を計上。資産運用業務の効率化や海外運用業者の参入促進、PEファンドへの投資環境の整備促進などに取り組むとしています。新型AIがもたらす脅威への対応や、金融庁自身がAIを活用して監視・モニタリングを行う基盤を整備するなどの「金融システムの信頼確保と利用者保護」には64億円を計上しました。
機構・定員要求においては、32名の増員と18名の合理化を実施し、14名の純増を要求。地域金融機関向け検査の質向上、暗号資産取引業者に対するモニタリング、デジタル技術を活用した決済高度化推進について、それぞれ新たな室長ポストの設置を求めました。また、フロンティアAIなどのリスクへの対応、協同組織金融機関のモニタリングについては、それぞれ担当する新たな企画官ポストを要求しました。
モニタリングの強化策をめぐっては、7月に政府が策定した新金融戦略で、「検査事案を事後的に検証し、検査手法の改善等を図る部署の金融庁への設置を検討する」との方向性が示されていました。金融庁幹部は「検査に実際に入っているメンバーでは客観的に見るのが難しいところもある。独立した立場で事後モニタリングを行ったり、検査の質向上に向けた人材育成を専門に検討する部屋を作る」と狙いを語りました。
