25年で25%の人口減
昨年5月30日に山形県が公表した5月1日現在の人口は99万9378人となり、記録が残る1920年以来、実に105年ぶりに100万人を下回ったことが報じられました。100万人を下回る人口は全国で12県が該当し、東北地方では秋田県に続く2県目となりました。
2000年以降の人口の動きを振り返ると、山形県では毎年漏れなく前年を下回る傾向が継続。これらの結果、2000年と2025年の増減率は、単純計算で全国が-1.86%であった一方、山形県は—25.00%となりました(全国推移は統計手法の変更の影響があり一時増加)。25年で人口が四分の三になったことを意味し、かなり衝撃的な印象を受けます。
このため、県内の人口動態を掘り下げてみました。市部・郡部の別と県内で人口が多い順に5市を抽出し、直近でデータ参照が可能な今年7月と10年前の7月を対比しました。
結果は、黄色く着色した郡部と鶴岡・酒田市の増加率が県内平均を下回り、より大きな比率で人口を減らしたことが確認できました。郡部の過疎地を中心に限界集落が増えた事象が連想されます。
背景には、死亡数が出生数を上回る自然減と、進学や就職での転出者が転入者を上回る社会減の同時進行があると考えられます。山形新幹線の開通によって首都圏への交通アクセスが格段に良くなったことが若年層のストロー現象に拍車を掛けたようですが、根底部分に県内の賃金水準の低さもある模様です。止まらない人口減は、金融機関経営にも甚大な影響を与え続けていることが想像に難くありません。
合宿免許のメッカ
筆者はサラリーマン時代に米沢市を比較的頻繁に訪問し、米沢牛のメンチカツの美味さに驚いた経験があります。そうした機会に山形新幹線で米沢駅に到着すると、改札付近に自動車教習所の案内板などを持った案内者を複数見かけました。案内者の目的は、合宿対応を行っている教習所に来た学生などの通所者をバスなどで施設まで連れて行くことです。飛行機で外国を訪れた際、到着口付近にタクシーや外貨両替をアピールする人が集まってくることがありますが、それを少し小さくおとなしくしたような印象を受けました。
読者各位もよくご存じのとおり、自動車の運転免許は、都道府県公安委員会から指定を受けた自動車教習所を卒業すると、運転免許試験場での技能試験が免除されます。教習所内での検定試験を合格した者が卒業する建付けのため、「卒業=技能試験合格者」の位置付けで、住民票のある都道府県の運転免許試験場で学科試験を受験する流れです。
いわゆる合宿免許事業者は、宿泊に対応することで遠方からも幅広く通所者を集める事業モデルです。昨年のデータでは、運転免許新規発行者(=学科・技能双方の合格者)を指定自動車教習所卒業生(=技能試験の合格者)で割った住民票の置かれた都道府県内の自動車教習所に通ったと見込まれる比率を算出したところ、山形県の比率が全国で最も低くなりました。
自動車教習所の卒業と運転免許試験場での免許交付が年を跨ぐケースも想定されますが、双方を同年に実施したと仮定した大まかな数値では、山形県内の教習所に占める山形県在住者の比率は22.50%に過ぎません。四分の三以上の77.50%は合宿を中心とした県外からの通所者が占め、「教習所卒業生数-普通自動車免許新規発行枚数」で算出した県外からの想定通所者数は23,377人となります。
そうした数字の上からも、山形県が“合宿免許のメッカ”となっている様子が窺え、一定期間滞在することによる経済効果も相応の規模に達していることが見込まれます。それゆえに、大学同様、18歳人口の減少は運転免許試験場の運営主体にも逆風となっていることでしょう。東京都などの都市部を中心とした「若者のクルマ離れ」が与える負の影響も大きいと見込みます。
人材や製造業も豊富
そんな山形県は、個性的な人材や事業者を相当数輩出もしています。
小泉前大臣から引き継ぐ形で昨年のコメ不足に向き合うことを余儀なくされた鈴木農林水産大臣は、熊本・千葉の災害に伴う農業被害などにも向き合わざるを得なくなっています。文字どおりの難局です。
経済界でも、天童の将棋の駒など著名な地場産業があるほか、フジクラ・エプソン・パイオニアなど世界的ブランドの製造拠点を抱えています。豆菓子で有名なでん六も山形市に本社を置いています。
メディアでは、TBSラジオ・文化放送・ニッポン放送の3系列に属する山形放送ラジオが異色です。山形コミュニティ放送はFMで、“ラジオモンスター”を通称として使用しています。
金融機関本店は各地に分散し点在
そんな山形県内に本店を構える金融機関は、4業態で26先があります。前回の金融風土記で取り上げた岡山県が13先ですので、ちょうど倍になります。
注目すべきは本店の分散・点在ぶりです。以前に取り扱った香川県では、4業態6先にまで集約されたうち5の本店が高松市に集中する偏りがみられましたが、山形県では26先のうち山形市に本店を置いているところは6先に過ぎません。地図上でも、県内の主要地域に幅広く散らばる様子が確認できます。冒頭に触れたように人口が減り続ける中にあっても、各地域の金融ニーズに各々の金融機関がきめ細かに応じている実情が連想されます。
荘内銀行は、来年1月1日に北都銀行と合併し、フィデア銀行が誕生する予定です。合併は存続会社となる荘内銀行が北都銀行を吸収する形態となり、登記上の本店は山形市に置かれることが公表されているため、銀行3行の本店は全て山形市に集中する形になります。
山形信用金庫は戦後の1949年に山形市信用組合として設立された後、信用金庫法が施行された後の1952年に山形信用金庫に改組しました。その後の2009年に山形庶民信用組合と業態を跨いで合併し、名称は変更しなかったものの、合併後に旧山形庶民信用組合の本店を本店としました。経営トップである理事長も、旧山形庶民信用組合理事長が就いたことが信用金庫業界内で話題となりました。
鶴岡信用金庫は、2008年に同じ庄内地域にあった酒田信用金庫と合併しています。
旧山形庶民信用組合が上記の合併で姿を消した後、山形市内に本店を置いている信用金庫は、業域信用組合である山形県医師信用組合だけとなり、地域信用組合がない状態となりました。
農業協同組合には、都道府県別収穫量で全体の7~8割を占めるさくらんぼを名称に付けたさくらんぼひがしねが印象的です。東根市は、最高級品種の佐藤錦の発祥の地であるようです。農業協同組合は山形市以外の鶴岡市・酒田市・新庄市にも各々2つずつが本店を構えており、それだけをもってしても、農業の盛んな地域であることが窺えます。
