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【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは

佐々木 城夛
佐々木 城夛
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
2026.07.08
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【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは

岡山県庁(以下「県庁」とします。)が地元を“晴れの国”と謳っているのは、1年に占める降水量1㎜未満の日が都道府県のうち最多層に属するというデータに基づいています。

瀬戸内の温暖な気候の中で桃やブドウなどが実る光景が連想されますが、別のデータと突き合わせると一筋縄ではくくりきれないこの県の実状が見えてきます。都道府県別面積が第17位である一方、都道府県別農業産出額は全国で第21位。木材生産と栽培きのこ類生産を合算した林業産出額は第24位、海面漁業・養殖業を合算した漁業産出額は第35位と、いずれも面積順位を下回るため、第二次・第三次産業の存在感が相対的に高いようです。

 

 

好アクセスというアドバンテージ

その要因の一つは、四国との玄関口に代表される“交通の要衝”という立地です。岡山-高松間は特急料金のかからない快速マリンライナーでも最短で52分しか掛からず、新千歳空港-札幌間の快速エアポートの最短37分と15分しか変わりません。岡山駅と岡山空港もリムジンバスで30分の距離のため、“内外に移動しやすい地方都市”と言えるでしょう。

 

交通の要衝である岡山駅では窓口が大幅に混雑することも[岡山市で筆者撮影]

 

岡山駅のみどりの窓口は、いつ訪れても混雑している印象を受けます。多くの人が常に行き交うため、岡山駅周辺にも非常に多くのホテルがあります。

 

人口減と休廃業の増加

そんな岡山県ですが、県庁によって2025年10月1日現在の2025年国勢調査で得たデータを独自集計した県内人口速報値が、2026年5月18日に公表されています。その結果は180万8,664人と2020年の前回調査から約8万人、比率では約4.2%の減少が認められ、地元紙・ローカル局だけでなく全国紙の支局からもセンセーショナルに報じられました。

この背景を産業面から考察するため、2020年以降の倒産・休廃業に着目すると、2022年を底に件数に上昇基調が認められます。内訳では、休廃業・解散がその多くを占めていました。

 

新型コロナの感染対策として実施されたいわゆる“ゼロゼロ融資”の据置期間が終了して返済が開始された時期は、2023年7月から2024年4月に集中しており、この趨勢とも符合します。中小企業・小規模企業の後継者難も背景にあったことが想像に難くありません。

直近の2025年については、倒産時の負債総額が過去10年で最高額の355億円超となったとの報道もみられます。このうち最大規模の倒産として、笠岡市に本社を置き、干拓地で野菜栽培・バイオマス発電を行っていた株式会社サラが挙げられます。2016年に設立された当社は、太陽光・バイオマス設備によって発電したエネルギーで野菜などを栽培していた事業者で、往時には挑戦的な取り組みがテレビなどで取り上げられることもありました。

倒産時の負債規模は推定157億6700万円、うち金融債務が約152億円に上ります。晴れの国ならではの気象資源の活用を図ったものの、残念ながら頓挫せざるを得なくなった格好です。

 

林原の大型倒産

「岡山県の大型倒産」として聞いて、まずもって林原を連想するのは筆者だけではないでしょう。2011年2月に倒産した同社は、非上場を貫き、財務情報は創業者一族などのごく一部だけが知る一方、地元地銀の中国銀行の株式を10%以上保有する筆頭株主でもありました。

同社は、「利益の7割を不動産に投資し、3割を基礎研究などの研究開発に投資する」という独特のビジネスモデルで運営されていました。不動産から得られる安定収入で、すぐには利益を生まない長期の研究開発に経営資源を投下するというものです。土地の価格が上昇し続ければ不動産に含み益がもたらされるという考え方は、かつてのダイエーの経営手法に似ていると言えるかもしれません。こうした経営の下、糖質トレハロースやインターフェロンの生産・販売で世界的なシェアを誇っていました。

 

同社の倒産の主要因は債務超過で、負債の膨張を銀行融資による自転車操業で乗り切っていたものの、銀行同士の情報交換で銀行に提出していた数値の粉飾が発覚したようです。銀行に求められて提出していた借入残高表の数値が各々異なり、いずれも他の銀行の残高を少なく見せるような工作を実施していたと指摘されています。優良企業と認識されていた同社の粉飾発覚・倒産時は世間を震撼させ、メインバンクであった中国銀行は代表権を持つ役員全員が辞任を余儀なくされました。

一方で、世界的な技術を持つ同社の倒産を惜しむ声も多く、最終的には大阪府に本社を置く化学系専門商社の長瀬産業が再建スポンサーに選定され、完全子会社化しました。2024年4月には、社名もナガセヴィータに変更しています。

 

岡山駅南口から南西側に徒歩約5分の立地にあるイオンモール岡山は2014年12月に開業しており、多くのテナントが入居する西日本のイオンモールの代表的な施設です。ここにはかつて林原の本社・有料駐車場(林原モータープール)・レンタカー店がありました。倒産に伴う不動産の売却によって開発が進んだ形となり、その広大な規模が往時を偲ばせています。

 

人材や製造業も豊富

そんな岡山県は、政界や芸能界などに現在進行形で話題を集める人材も豊富です。経済界も、船舶用プロペラ大手のナガシマプロペラ、医療機器のオルバヘルスケアホールディングス、ガソリン計量機で国内首位世界3位のタツノ、半導体製造のタツモなど、優れた技術を持つ製造業が相当数認められます。オハヨー牛乳のカバヤ、スーツのはるやまなど、エンドユーザー向けに相応のシェアを持つ事業者もみられます。

 
 

メディアでは、障害物の少ない海域を挟んだ距離の近さから、かねてよりテレビ放送で瀬戸内海を挟んで電波が混信し映像が乱れる事象が認められました。そのため電波行政を所管していた旧郵政省の調整により、1979年に岡山・香川両県の民報テレビ局の放送対象地域を統合して同一エリアとする統合が実施されました。

この結果、岡山・香川の両県のどちらに本社をおいても同一エリアとみなし、両県で視聴が可能となりました。現在、岡山県側にTBS系のRSK山陽放送、フジテレビ系の岡山放送、テレビ東京系のテレビせとうちが本社を置き、香川県側に日本テレビ系の西日本放送とテレビ朝日系の瀬戸内海放送が本社を置いています。

 

農協の再編が進行

そうした岡山県内に本店を構える金融機関は、4業態13先に集約されています。経済の中心は面積で11.1%を占める岡山市であり、それゆえに4業態全てに本店を置く金融機関が認められますが、銀行以外の信用金庫・信用組合・農業協同組合は、いずれもそれ以外の地域に本店を構える金融機関を擁しています。

一度その名を聞けば忘れられないトマト銀行は、1989年4月に山陽相互銀行からの普通銀行転換に伴って名称変更がなされました。同年2月に(旧)福岡シティ銀行が誕生しているため、名称に片仮名を付けた2番目の銀行となり、全て片仮名である国内唯一の銀行です。

 

信用金庫では、岡山市内に本店を置いていた(旧)岡山・岡山市民・岡山相互の3信用金庫が2000年3月に合併し、おかやま信用金庫となりました。近年では、2020年2月に(旧)日生・備前の2信用金庫合併し、備前日生信用金庫が誕生しています。

農業協同組合でも、2015年の県JA大会で、来るべき将来を見据えた組織再構築の一環として、当時9つあったJAから「1県1JA化」への方針が正式に決議されました。その3年後の2018年には、合併に向けた具体的な協議を促進させるため「合併推進協議会」が設立・運営されるようになりました。

そうした協議の過程で、都市型JAとして独自の強みや経営基盤を保有するJA岡山が構想からの離脱を選択したため、2020年4月に残る(旧)岡山東・岡山西・倉敷かさや・びほく・阿新・まにわ・つやま・勝英の8JAが合併し、JA晴れの国岡山が誕生しています。2026年3月末現在の組合員数は137,810人ですが、このうち農業者等の正組合員が83,355人を占め、非公式ながら全国トップとも言われているようです。

 

リーディングバンクである中国銀行は、地域における持続可能な経済・社会の構築のため、様々な取組みに腐心している模様です。2017年にサンマルクホールディングスと共に立ち上げた岡山イノベーションスクールを現在まで継続しており、2025年までに427件のエントリーを受け付けています。同時並行的に開催しているイノベーションコンテストも、2017~25年までの間に985件のエントリーがあった模様です。打上げ花火的な実施や尻すぼみ傾向が珍しくない中、継続的な取組みが印象的です。

同行では、2025年4月より「資産運用の相談から契約までの相談を非対面・ワンストップで行う」資産運用サポートデスクを新設・運営しています。日曜営業、水曜日を除く平日4日は夜20:00までの相談に応じることで、稼働後1年の面談実績は約4,000件に達し、先行事例として他行からも照会が少なくないとのことでした。

 

今回の取材にあたり、同行総合企画部広報センターの岡嶋弓恵さんなどから、非常に丁寧に説明・応対いただき、同行の情報開示の熱意を感じた次第です。

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佐々木 城夛
ささき じょうた
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
1967年東京生まれ。1990年慶應義塾大学法学部法律学科卒、信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室 長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。2023年6 月より現職。沼津信用金庫非常勤参与。 「ダイヤモンド・オンライン(ダイヤモンド社)」・「金融財政ビジネス(時事通信社)」ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理(近代セールス社)」ほか。HP アドレスは https://jota-sasaki.jimdosite.com/
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