デジタル社会推進本部(平井卓也会長)が5月21日に政府に提出した「デジタル・ニッポン2026」。個人情報保護法のルール緩和を軸とするデータ利活用の推進や、マイナンバーカードの取得義務化、AI利用拡大、地方公共団体の情報システム統合など、社会全体のDXを推進するさまざまな施策案が盛り込まれています。
このうち金融業界に関わる部分では、「データ連携」と「AI活用」が二大トピックとなっています。
年金を含む家計に関するデータを集約・一元化する「データ連携」に関しては、立国議連の提言書の末尾にも軽く記載があります。データ利活用についての議論はデジタル庁が調整役を担っていることもあり、「デジタル・ニッポン2026」では、省庁間の役割分担を含めてさらに一段階踏み込んで言及しています。
金融分野におけるデータ利活用を推進することにより、家計の収支管理やライフプランの設計·点検を容易にするとともに、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現する。このため、関係省庁において、次の対応を行う。内閣官房は、その状況について適切にフォローアップするとともに、デジタル庁と連携し、適切な対応を行うべきである。
金融庁は、個々人がライフプランの設計·点検を容易に行えるよう、本年2月に金融経済教育推進機構(J-FLEC)に設置した「家計の見える化検討会議」において、金融資産や年金の情報の集約·可視化するため、可視化が必要なデータとその取得の方法について整理を行うべきである。
立国議連の提言では、データ連携はJ-FLECによるJ-FLECのための(延いてはライフプラン設計に取り組む個々人のための)施策というニュアンスが強めでした。一方、今回の「デジタル・ニッポン2026」では「一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現する」と、スコープを一段と広めに取る書きぶりになっています。
金融業界全体でデータ連携を広げるにあたっては、外部事業者との間でデータの出入口を整備するオープンAPI化が不可欠です。2018年の改正銀行法で銀行のオープンAPI化が努力義務となった後も、他の主要先進国に比べ接続が低調だったことから、デジタル庁設置の検討会内では、本格的な義務化への移行や、保険や証券などに対象業種を拡大すべきといった意見が上がっていました。
しかし今回の「デジタル・ニッポン2026」では、オープンAPI推進については経産省が所轄するクレジットカード分野の言及にとどまっています。データの外部提供について保険界や証券界などの一部事業者では反発も大きく、足並みを一致させる難しさが窺い知れます。
経済産業省は、クレジットカード分野における API 連携を推進するため、政府目標として、「2028年度末までに取扱高9割程度を占めるクレジットカード会社がシステム初期投資を完了し、少なくとも自社以外の1社以上とAPI 接続すること」を設定し、目標達成に向け大胆な投資促進税制や中堅等大規模成長投資補助金、新事業進出·ものづくり商業サービス補助金等の活用をインセンティブとして、関係団体や協議会での議論を進め、必要に応じ API ガイドラインや契約書雛形の改定も含め、官民での取組を推進するべきである。
「デジタル・ニッポン2026」に付随して同本部の小委員会が取りまとめた「AIホワイトペーパー2.0」では、金融分野でのAI利活用に言及し、「エージェント AI時代の金融を国家戦略として位置付けること」を政府に提言しています。
金融庁は今年3月に改定した「AIディスカッションペーパー」の中で、AIを事務作業の効率化だけでなく顧客向けサービスの分野でも積極的に活用するよう呼び掛けています。一方、AI/ヒト間の責任の線引きなど法的な整理については「個別具体的な事案に即して実質的に判断する必要」があるなど曖昧な記載ぶりにとどまっていました。
今回のホワイトペーパー2.0では、金融庁に対し、エージェント AI 時代の金融の将来像について官民で共有するため「AI ディスカッション·ペーパー2.0」(仮称)へのアップデートを要請。AIを介した金融商品の説明、勧誘、助言、販売などを行う場合の金融商品取引法、銀行法、保険業法などの適用関係について、「自然人又は法人の関与の程度を含む具体的なユースケースを踏まえた事業者対応·明確化に万全を期す」よう求めました。
