finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.05.15
会員限定
国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは

アセットオーナーにとって国内スタートアップへの投資はマストになっていくのか……?かねて厚労省設置の会議体では、機関投資家に国内投資を促す政府方針について委員間で賛否が割れていますが、このほど注目を集めた資産運用立国議連の提言書は主要アセットオーナーにおける国内VC・PEへの投資促進を打ち出しています。霞が関と永田町で機関投資家のリスクテーク促進策をめぐる本音と建前のギャップが、いっそう強く意識されることになりそうです。

アセットオーナーシップ改革とGPIFのオルタナティブ投資

岸田文雄前首相が率いる資産運用立国議員連盟が4月23日に政府に提出した提言書。NISAの新枠創設に注目が集まった一方、機関投資家やアセットオーナーに関する提言や、DCの制度に関する厚生労働省への注文も盛り込まれています。

この中で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済組合などに対しては、受益者の利益のために、「特定のアセットクラスに偏ることなく、国内のPE・VCを含め、オルタナティブ資産への投資を引き上げていくべきである」と改めて提言しています。

また、昨年政府が策定したアセットオーナー・プリンシプルのさらなる受け入れ促進も打ち出しています。特に、学校法人(国立大学法人、公立大学法人を含む)に対しては海外の基金運用の事例を参考に、文部科学省・総務省が資産運用の実態を把握し、「アセットオーナー・プリンシプルの検討状況を年末を目途に整理すべき」だと迫っています。また、科学技術振興機構が運営する大学ファンド(通称「10兆円ファンド」)による支援対象となる「国際卓越研究大学」の認可について、アセットオーナー・プリンシプルの受け入れを要件に盛り込むことを求めています。

加えて、スタートアップへの成長資金供給を加速させる観点から、「政府は、国内VCへの投資の障壁となっているPE(恒久的施設)課税特例について、グローバル標準に向けて緩和するとともに透明化を図るべきである」としました。

建前上、政府として機関投資家に促しているのは広いくくりとしてのオルタナティブ投資全体であり、国内のPEやVCはその選択肢に過ぎないという位置づけです。ただ岸田政権以来、政府全体としてスタートアップや戦略分野への資金供給に注力していることから、プリンシプル創設などの各種施策を機関投資家へのプレッシャーと見なす向きもあります。厚労省設置の会議体では国内投資への誘導策に対する慎重論が根強く、有識者間で意見の乖離もみられます(関連記事「GPIFが次期中計案を提示、オルタナ投資については温度差も ~厚労省・社会保障審議会レポート~」)。

提言書の提出と同じ日に、岸田政権下に内閣官房が設置した「新しい資本主義実現会議」が第33回会合を実施。スタートアップ分野への資金供給力を官民で強化する施策の一環として、「国内外の機関投資家の資金がベンチャーキャピタルに円滑に供給される」ための働きかけ、機関投資家と企業の対話促進に向けた取引所の対応のあり方などについて事務局側が論点を示しました。石破茂首相は会合で、前政権が作成した「スタートアップ育成5カ年計画」を強化するとともに、「高い成長が期待されるディープテック・スタートアップへの官民の資金供給を強化するなど、その成長の加速を後押しする」と述べました。

内閣府の規制改革推進会議でも、金融庁幹部らが参加し、機関投資家を含め国内成長分野への資金供給を促進する環境整備について集中的に議論が進められています。21日に開かれたスタートアップ・イノベーション促進ワーキング・グループの非上場株式の流動性を高めるため、第一種金商業の新枠を設ける方向性について同庁幹部が説明しました。

「インフレ抵抗力」のため厚労省にも要望

議連の提言書ではこの他、企業年金(DBおよびDC)の運用状況などに関する情報を、他の企業と比較可能な形で「見える化」することを目指し、厚労省が情報集約と公表を進めることについて、デジタル庁との連携も視野に、早期実現を改めて要求しています。DBについても、アセットオーナー・プリンシプルのさらなる受け入れを推進すべきだと強調。また、加入者の退職後の生活におけるインフレ抵抗力確保のため、「DBの運用のあり方を含め、厚労省は好事例を整理・公表すべきである」としています。

また、提言書に盛り込んだ施策を実現するため、「内閣官房において『資産運用立国実現プラン2.0』を作成・公表すべきである」とも迫っています。石破氏がスローガンとして掲げる「投資立国」の具体像が固まりきっていない状況下、議連が要求する「プラン2.0」の策定が実現すれば、現政権が独自色を打ち出すハードルはいっそう高まることになりそうです。

アセットオーナーシップ改革とGPIFのオルタナティブ投資

岸田文雄前首相が率いる資産運用立国議員連盟が4月23日に政府に提出した提言書。NISAの新枠創設に注目が集まった一方、機関投資家やアセットオーナーに関する提言や、DCの制度に関する厚生労働省への注文も盛り込まれています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #法律・制度

おすすめの記事

【プロが解説】光電融合技術「シリコンフォトニクス」が変える未来ー2026年、光の時代が始まる

末山 仁

三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン

finasee Pro 編集部

みずほ銀行の売れ筋は単位型ファンドの一巡で定番ファンドが復調、意外と高リスクのファンドが人気化

finasee Pro 編集部

金融緩和、インフレ、インバウンドで日本の近代美術作品に熱視線?――アート市場の最新動向を銀座画廊界キーパーソンに聞いた

川辺 和将

いわき信組処分の余波……金融庁は刑事告訴を検討も、地域金融機関を救う「資本参加制度の延長論」に落とす影

川辺 和将

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
金融緩和、インフレ、インバウンドで日本の近代美術作品に熱視線?――アート市場の最新動向を銀座画廊界キーパーソンに聞いた
みずほ銀行の売れ筋は単位型ファンドの一巡で定番ファンドが復調、意外と高リスクのファンドが人気化
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
SMBC日興証券の売れ筋に投信市場の主役交代の予感、「電力」と「ブロックチェーン」は「M7」の次を担えるか?
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
大和証券の売れ筋で光る“超新星”、「ピクテ・ゴールド」をパフォーマンスで上回る株式ファンドとは?
いわき信組処分の余波……金融庁は刑事告訴を検討も、地域金融機関を救う「資本参加制度の延長論」に落とす影
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
いわき信組処分の余波……金融庁は刑事告訴を検討も、地域金融機関を救う「資本参加制度の延長論」に落とす影
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
石破カラー残る「地域金融力強化策」、高市政権はいかに脱色・染め直しをするか?
金融緩和、インフレ、インバウンドで日本の近代美術作品に熱視線?――アート市場の最新動向を銀座画廊界キーパーソンに聞いた
高水準の資金流入と株高で純資産残高が約8兆円の大幅増、流入4位に日本株バリュー。高パフォーマンスは「半導体」=25年10月投信概況
大和証券の売れ筋で光る“超新星”、「ピクテ・ゴールド」をパフォーマンスで上回る株式ファンドとは?
野村證券の売れ筋で「日経225」がトップ奪還、「ゴールド」を超えるパフォーマンスでランクインしたファンドは? 
みずほ銀行の売れ筋は単位型ファンドの一巡で定番ファンドが復調、意外と高リスクのファンドが人気化
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
【連載】こたえてください森脇さん
⑩役席者には収益目標、現場には残高目標。両方を達成するには?
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(3)アクティブファンドのモニタリング② α(アルファ)値とβ(ベータ)値
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら