finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

【特別インタビュー】金融庁・堀本善雄政策立案総括審議官
運用立国プラン2年目の針路「商品では競争を、教育では連携を」

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2025.02.12
会員限定
【特別インタビュー】金融庁・堀本善雄政策立案総括審議官<br />運用立国プラン2年目の針路「商品では競争を、教育では連携を」

政府が推進する「資産運用立国実現プラン」が2年目に突入した。とりわけ新NISAをきっかけに「貯蓄から投資へ」の機運が加速するなど、狙い通りのスタートを切ったようにみえる。新たな施策の必要性や金融機関への期待などについて、金融庁の堀本善雄政策立案総括審議官に聞いた。

 

――プランの実現度を現時点でどのように評価しますか。

プランの開始から1年しか経っていませんので、その政策効果を評価するには、まだ早いでしょう。ただ、昨年8月に企業年金や大学ファンドなどを対象とする「アセットオーナー・プリンシプル」を策定し、12月にはiDeCoの拠出限度額と加入可能年齢の引き上げを決めたことで、プラン実現に向けた環境整備が昨年末までに一段落したと考えています。

個々の政策について政府が実施し、その達成度(KPI等を使って)を確認したうえで、更なる政策の必要性を検討していくという流れが一般的です。こうした政府による個々の政策の実施プロセスに加え、資産運用立国実現プランは、最初に目指す将来像を示し、それに関わる販売会社や運用会社、アセットオーナーといった関係者すべてに改革を求め、その進展状況に合わせ、政府が政策を追加していくというダイナミックなプロセスが加わります。昨年末の段階で政策の大きな骨格は措置されたので、次のステージとして、金融機関をはじめ民間の方々がどのように展開していくかを注視する局面に入ったと思います。

――新NISAについては、口座を複数の金融機関で開設できるようにするなど、制度の一部見直しを求める意見が挙がります。

NISAについてはさまざまな要望をいただいておりますが、NISAの趣旨、進捗状況や実現可能性を踏まえ、慎重に検討していく必要があります。

必ず着手しなければならないのは、NISA口座の開設から10年後等に金融機関が行うよう定められている「所在地確認」の撤廃です。現行では金融機関が全ての口座保有者の氏名・住所を確認するために書類の郵送等を行い、その確認ができなければNISA口座での新規取引を凍結する仕組みになっています。これはユーザーにとっても金融機関にとっても大きな負担をかけると思います。とはいえ、NISA口座を保有する資格のない人による取引を防ぐ必要もありますので、現状の所在地確認に替わる措置を検討しているところです。

複数の金融機関でNISA口座の開設を認めるのは、金融機関の競争を促しますので、一般論としては悪くないことです。しかし、それにかかるコストがあまりに大きく、かえってユーザーの負担が増えてしまうのは望ましくありません。特に「つみたて投資枠」のような低コスト設計の制度で、追加の費用を払ってまで複数口座を開設するニーズがあるかどうかでしょう。そのあたりのバランスを見極めていくことになります。

――米国株式や全世界株式を投資対象とした低コストのインデックスファンドに資金が集中しています。信託報酬の引き下げが激化して運用会社の収益が悪化する要因になりませんか。

NISA全体でみれば、現物の日本株が4割を占めています。一部のインデックス投信に資金が集中している状況は、あくまでも投資信託に限った話です。そもそもNISAは、あくまで、国民の資産形成を支援することが目的であり、運用会社の間で競争原理が働いた結果、良質な金融商品が国民に提供されることを前提としています。公平な競争の結果として生じている状況に、政府として何か評価を下すようなことはありません。個別商品の状況に介入するのではなく、例えば、金融経済教育や良質なアドバイザーによるサポートを充実させることで、資産形成に関する国民のリテラシーを高めていきたいと考えています。

堀本善雄氏 1990年 東大卒、旧大蔵省入省。 金融庁監督局・検査局課長補佐、財務省大臣官房文書課課長補佐、企画官、内閣官房内閣総務官室(内閣総理大臣補佐官付)などを経て、民間のコンサルタント会社に勤務。2013年に金融庁総務企画局参事官(金融モニタリング担当)。監督局銀行第二課長、検査局総務課長、監督局総務課長などを歴任したのち、2019年に総合政策局審議官、2021年に監督局審議官、2023年より総合政策局政策立案総括審議官(現職)。

――昨年8月にJ-FLEC(金融経済教育推進機構)が本格始動し、認定アドバイザーの活動もスタートしました。そうしたなか、NISAに限定したアドバイザー制度の新設を求める動きもあります。

18歳以上の国民のうち、金融経済教育を「受けたことがある」と答えた割合は7%にとどまります。政府が掲げる目標は20%ですので、この目標の達成のためには今後1400万人ほどに対し金融経済教育を届けていく必要があります。J-FLECの認定アドバイザーは昨年12月に1000人を超えましたが、J-FLECが直接行う事業だけでは20%の目標達成が難しいのは明らかです。そこで金融機関や一般企業の職域、年金基金、学校といった領域でも金融経済教育を拡充していただき、J-FLECがその中核を担うことによって、関係者の連携を深めてまいります。

足元ではNISAの口座数が2500万件を超え、金融経済教育の一部をなす資産形成のための教育は大きなニーズが見込まれます。認定アドバイザーは、何か新たな助言サービスを行うことを規制したり禁止したりすることを狙っておらず、この制度により、既存の助言サービスに関する規制に変更を行うものではありません。J-FLECが認定アドバイザーを使って行う個別相談事業は、個別の商品を推奨することを想定していないものです。

――投資信託の販売を担う金融機関の皆さまへメッセージを。

資産運用立国の根本的なコンセプトは、国民が中長期的に投資の果実を実感していただけるような好循環をつくりだすところにあります。直近の相場やNISA口座の状況に気を取られがちですが、何より重要なのは、「ライフプランに応じた資産形成の選択肢として長期投資が日常的に考慮される」という国民意識を定着させることです。

国民の皆さまは貯蓄から投資へと動き出していらっしゃいます。ですから、その国民を決して裏切ってはなりません。これは我々の自戒であり、金融機関の皆さまへの切なる要望でもあります。

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #NISA
  • #金融リテラシー

おすすめの記事

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

「オルカン」「S&P500」を追う2強海外アクティブ投信。なぜ? みんなが買う理由がわかった!

Finasee編集部

【連載】金融史観~金融史が語る資産形成の未来~
⑫振り子の金融史観(下)―分断が進む現代の先を読む―

平山 賢一

楽天証券の売れ筋がほとんど動かなかったのは大きな変化の前兆か? 意外にもろかった「SCHD」

finasee Pro 編集部

SBI証券で「オルカン」「S&P500」の人気は継続するもののパフォーマンスは悪化、着実にランクアップするファンドとは?

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」

文月つむぎ

【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを

中村 裕己

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【連載】金融史観~金融史が語る資産形成の未来~
⑫振り子の金融史観(下)―分断が進む現代の先を読む―
楽天証券の売れ筋がほとんど動かなかったのは大きな変化の前兆か? 意外にもろかった「SCHD」
SBI証券で「オルカン」「S&P500」の人気は継続するもののパフォーマンスは悪化、着実にランクアップするファンドとは?
新潟との地銀越境統合は成功するか? 群馬県の金融事情【金融風土記】
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
第9回 投資信託選びの常識を疑え!(その1)
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを
NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」
楽天証券の売れ筋がほとんど動かなかったのは大きな変化の前兆か? 意外にもろかった「SCHD」
SBI証券で「オルカン」「S&P500」の人気は継続するもののパフォーマンスは悪化、着実にランクアップするファンドとは?
新潟との地銀越境統合は成功するか? 群馬県の金融事情【金融風土記】
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
第9回 投資信託選びの常識を疑え!(その1)
NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】
NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】
新潟との地銀越境統合は成功するか? 群馬県の金融事情【金融風土記】
プラチナNISAの創設案が映す「森信親イズム」の終焉
【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由
【金融庁企画室長 今泉氏が語る】金融事業者に期待する地域貢献とプロダクトガバナンスの実践
三井住友銀行で「世界のベスト」が売れ筋トップに返り咲き、「社債」や「ゴールド」が人気化する背景は?
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
金融庁幹部「新たな不確実性の時代に突入」 トランプショックで霞が関からついに消えた「あの言葉」…
シニア向け「プラチナNISA」で毎月決算型も解禁? 毎月決算型の選び方と使い方
みずほ銀行の売れ筋上位が5カ月連続で同じ理由、株価の急落にもしっかり耐えるファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら