――トランプ新政権が発足しました。新政権と米国経済の動向をどのようにご覧ですか。
2024年の米国経済は非常に力強い成長を遂げました。成長ペースはやや鈍化するかもしれませんが、耐性は確認されています。米国の長期金利は上昇圧力を受ける可能性が高いと思われます。減税や規制緩和といったトランプ大統領の公約に加え、関税がどの程度引き上げられるかにも注目が集まる見通しです。トランプ大統領の任期は始まったばかりですが、通商政策はアジア、特に中国に大きな影響を与えるでしょう。
債券運用担当者の信用リスクを正確に評価する能力が試される局面に入ったと思われます。ルーミス・セイレスはまもなく創業100周年を迎えます。創業以来、当社は投資先企業の信用度を評価する独自の格付けシステムを開発してきました。特に、伝説的な債券投資家であるダン・ファスは、当社に約50年間在籍し、そのビジョンによって当社の優れた信用能力の確立に貢献しました。彼が当社に入社した当時、当社の投資文化はすでにファンダメンタル分析を中心としていましたが、彼の影響は、当社の債券投資の成功の礎となりました。
――そもそも米国の債券市場と投信市場は、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。
米国債券市場は、18世紀後半に米国政府が戦争負債の資金調達を必要としたことに端を発しています。その後、社債や地方債(州や地方自治体の債務)も含まれるようになり、成長を遂げました。今日、米国債券市場は世界最大かつ最も流動性の高い市場の一つとなっています。
一方、米国初の投資信託は、1924年に設定されました。これは、ルーミス・セイレスの設立のわずか2年前のことです。投資信託は、個人投資家が専門家の管理の下、さまざまな資産クラスに分散投資することを可能にしました。
米国のリテール市場では早くから、個人投資家のポートフォリオに債券を組み入れることの重要性が認識されていました。ルーミス・セイレスは1990年代後半から日本でもサービスを提供しています。金利が比較的高い水準にある現在、日本の個人投資家に対して、債券ファンドでより高いリターンを提供する機会が生まれています。これまでの日本の市場環境では、債券投資から高いリターンを期待することは難しい状況でしたが、今は状況が異なります。
近年、日本の金融当局は、個人投資家の長期的な利益を受託責任の中心に据える必要性に加えて、リスク分散された安定したリターンを生み出すポートフォリオを設計する必要性を認識するようになりました。金融機関には、市場が混乱している状況においても、個人投資家が投資を継続できるようなサービスを提供することが、今後さらに求められるでしょう。
――日本の個人投資家も債券ファンドに注目すべきでしょうか?
日本の個人投資家は、過去数年、株式市場が概ね堅調に推移してきたことなどから、先進国株式ファンドや米国株式ファンドへの関心が高い傾向にあると聞いています。長期、分散投資を金融庁が推し進めていることで、預貯金から投資への動きがいよいよ本格化しているのではないでしょうか。
株式や投信の家計に占める割合が約53%と、日本より早く預貯金から投資の動きが進んだ米国では、株式ファンドと債券ファンドを持ち合わせる真の分散投資が進んでいます。米国のミューチャルファンドの10種類あるカテゴリー別の資金流入ランキングでは、過去10年、5年、3年、1年のすべての期間で債券ファンドが1位となりました。
一般的に株式は成長性が高く、価格変動が大きい資産です。一方、債券は定期的なインカム収益が期待できるため、株式に比べて安定した収益の獲得が期待できる資産です。特に、米国の国債や投資適格債券は信用リスクが相対的に低く、安全資産としての役割が期待できます。また、景気が悪化する局面などでの株式下落時に債券価格が上昇することが多く、株式ファンドと合わせて債券ファンドにも投資を行うことで、株式中心のポートフォリオのリスクを補完しながら、市場環境に左右されにくいポートフォリオを構築できます。
日本の投資家は、株式ファンドではすでに米国中心に海外投資を進めています。足元で5%程度のインカム収益が期待できる米国の国債や投資適格社債を中心に運用する安定資産としての債券ファンドへの投資を通じた、真の分散投資を進めることが今こそ重要ではないでしょうか?ルーミス・セイレスの米国投資適格債券戦略がその一助になれば幸いです。
――「貯蓄から投資へ」と動き出した日本市場に期待することは。
相応に高い金利環境となり、日本の投資家にも債券ファンドでより高いリターンを提供できる好機が到来しています。特に個人投資家に対して、われわれの魅力をアピールするチャンスだと考えています。これまでの相場環境では、債券投資だとあまり高いリターンを望みにくい投資環境でしたが、これからはリターンを期待できます。まずはNISAの成長投資枠で購入できる「ルーミス米国投資適格社債ファンド(年2回決算型)」の認知度を高めるべく、委託会社であるアセットマネジメントOne社を通じて販売会社への情報提供を一層強化してまいります。
ケビン・チャールストン氏
1988年より資産運用業務に携わり、2000年ルーミス・セイレス社に入社。入社後CFOとしてルーミスの経理、財務を統括し、2014年にはプレジデント(取締役社長)を兼任。その後、2015年にCEOに就任。