finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

大学ファンドへの思い入れが強い井藤長官 講演でアセットオーナープリンシプルへの不満にも応答

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.08.06
会員限定
大学ファンドへの思い入れが強い井藤長官 講演でアセットオーナープリンシプルへの不満にも応答

金融庁の井藤英樹長官は7月30日、都内で開かれた「大学ファンド 大学基金運用フォーラム」(内閣府、文部科学省、国立研究開発法人科学技術振興機構主催)に登壇。間近に迫るアセットオーナープリンシプル正式策定により大学の資産運用の分野にも「高度化」の波が近づきつつある中、主計官時代に科学技術関連の予算編成に携わってきた自身の「思い入れ」とあわせ、プリンシプル策定の狙いや期待について語りました。

講演のオファー「普通なら後任者にまかせるが…」

フォーラムには国立大学法人や大学基金の運用担当者らが出席。大学に資金支援を行うための財源として国が10兆円規模で運営する「大学ファンド」の運用担当者が、同ファンドの運用状況や運用体制についてプレゼンしたほか、大学基金運用の専門家らが登壇し、環境変化の中での運用の現状や課題について意見を交わしました。

井藤長官は「資産運用立国実現プランを通じた資産運用業・アセットオーナーシップ改革」をテーマに講演しました。冒頭では、講演のオファーを受けたタイミングが長官就任前の企画市場局長時代だったと説明しました。井藤氏は「実は(オファーを受けた時点で)長官になることは認識していた。普通であれば後任の局長に『(代わりに講演を)やれよ』と引き継ぐが、私自身5年間(主計官時代に)文部科学予算に携わり、JST(科学技術振興機構)には非常に思い入れも深いので、ぜひ私自身がやらせていただこうと思った」と、登壇の経緯を明かしました。

政府の新しい資本主義実現会議が夏のうちに最終版を取りまとめる「アセットオーナー・プリンシプル」については、「大学ファンド、各国立大学法人、学校法人、企業年金、保険会社が含まれるアセットオーナーは、金融資本市場を通じて企業・経済の成長の果実を受益者にもたらす重要な役割を担っている。このために幅広いアセットオーナーに共通して求められるガバナンス、リスク管理等についての原則を定めた」と策定の目的を説明。すでにパブリックコメントを実施した文案を構成する、運用目標の設定などに関する5つの原則について話しました。

「プリンシプルは迷惑だ」との批判には…

そのうえで井藤氏は、「アセットオーナープリンシプルを作る過程で一部、『こんなのは迷惑だ』というような話もいろいろ聞こえてくることがあった。多分、迷惑だと思われるような方はきっちり、このレベルはクリアしているということなので問題ないと思う。ごく当たり前なことを書いているので、こういうところが押さえられていないな、大丈夫かなというふうにと考えて(そのために使って)いただければ」と述べました。

「もちろんプリンシプル(法的拘束力のない行動規範)なので、従わなかったからといって我々金融庁との間で何か問題があるということではない。ただ受益者に対して、ちゃんと責任、説明できるかについてはなるべく意識してもらえれば」と期待を示しました。

さらに井藤氏は、先日金融庁がFDレポートの中でリテール向け販売に関する課題を指摘した仕組預金や仕組債についても言及しました。「なかにはより金融収入を増やす観点から、預金や国債といった元本確保型のものの延長上にある感覚で、利回りが得られる仕組預金や仕組債を活用するケースもあると聞いている。『安全だ』と思う人も世の中には結構いるみたいだが、とんでもない間違いで、運用として合理的でないものがある」と指摘しました。

「仮に資金があって、それをさらに寝かしておくのはもったいないと、よりよい研究、教育環境を作るためにリスク性商品に投資する際、受益者の最善の利益を追求するために備えておくべきことが原則(プリンシプル)には含まれている。プリンシプルを使用しつつ、自ら資産運用に取り組むための十分な備えがあるかどうかという点はぜひ点検していただければ」と述べました。

また、8月に本格始動した金融経済教育推進機構(J-FLEC)の取り組みについても紹介。「学生などが最近、投資詐欺等トラブルに巻き込まれるような話が非常に多い。投資に携わる人からすると、何でこんなものを買うのかなと思うかもしれないが、自分の若い頃を振り返ってみるとなかなか難しく、有益な金融商品か投資詐欺なのかは、金融に慣れ親しんでなければわからないところもある」と述べました。「もちろん金融トラブルに巻き込まれないというのはイロハのイとして、さらにより良い投資判断を行っていただけるよう、ベースとなる金融知識をつけていただきたいということで官民一体となって中立的な立場から金融経済教育を推進すべくJ-FLECを設立した。本格稼働のあかつきにはこの機構を中心に、学校や企業を含め幅広く金融経済教育を受けていただく機会が提供されるよう、金融庁としても後押ししていく」と語りました。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

大和証券の売れ筋に見える投資家の力量、パフォーマンスが低迷してもトップ10をキープできるファンドとは? 

finasee Pro 編集部

金融庁「地域金融力」強調の狙いは地銀再編の再ブーストか?金融審WG初会合の注目点

川辺 和将

「分配金」重視姿勢は根強いものの予想分配金提示型でトータルリターンを評価の流れ、野村證券の売れ筋にみる変化

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

文月つむぎ

資金流入額は「株式型」への流入増で7カ月ぶりに増額、パフォーマンスは中国A株と「ゴールド」=25年8月投信概況

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
金融庁「地域金融力」強調の狙いは地銀再編の再ブーストか?金融審WG初会合の注目点
地域金融機関44行が参加 バランスシート経営の強化へ向けたコンソーシアムが始動
大和証券の売れ筋に見える投資家の力量、パフォーマンスが低迷してもトップ10をキープできるファンドとは? 
【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
松井証券の売れ筋に現れた次代のスター候補銘柄、「オルカン」を大きく上回るパフォーマンスで注目のファンドとは?
「分配金」重視姿勢は根強いものの予想分配金提示型でトータルリターンを評価の流れ、野村證券の売れ筋にみる変化
コア預金モデル高度化に取り組む背景と今後の課題~地銀担当者と開発者によるパネルディスカッション
第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント
浪川攻の一刀両断
個人投資家がアドバイザーを選ぶ時代に、「J-FLEC」の検索エンジンに学べ
松井証券の売れ筋に現れた次代のスター候補銘柄、「オルカン」を大きく上回るパフォーマンスで注目のファンドとは?
資金流入額は「株式型」への流入増で7カ月ぶりに増額、パフォーマンスは中国A株と「ゴールド」=25年8月投信概況
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(1)インデックスファンドはトラッキングエラーに注目
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
「分配金」重視姿勢は根強いものの予想分配金提示型でトータルリターンを評価の流れ、野村證券の売れ筋にみる変化
eスマート証券の売れ筋から「国内債券」の順位が落ちる、新たに加わったファンドとは?
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
【プロはこう見る!投資信託の動向】
2025年4月の株価急落は変化のトリガー、米国株式への強烈な資金フローの向かう先とは?
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
地域金融機関44行が参加 バランスシート経営の強化へ向けたコンソーシアムが始動
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら