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金融庁の投信モニタリング体制に変化、監督局版「シン・プログレスレポート」発行へ

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.07.22
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金融庁の投信モニタリング体制に変化、監督局版「シン・プログレスレポート」発行へ

2024事務年度がスタートし、金融庁は組織改編を実施。監督局総務課内に資産運用企画室を新設するとともに、監督局証券課の下にあった資産運用モニタリング室を移管しました。新しい企画室では、これまで総合政策局の資産運用高度化室が担当していた「資産運用業高度化プログレスレポート」の趣旨・内容を発展させた調査資料を作成、公表する見通しです。

 

「改革室版プログレスレポート」は幻となったけど…

資産運用業高度化プログレスレポートは従来、総合政策局内の資産運用高度化室が作成を担当。同じく総合政策局内の部署が毎年公表している「FDレポート」(正式名称「リスク性商品の販売会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果について」、発行年によって小異あり)とともに、金融業界では名物レポートとして注目を集めてきました。

22年公表のプログレスレポートでは、複雑な仕組債の一種であるEB債の問題を取り上げて業界内外で話題に。23年版では二重計算問題や新興業者の成長力不足など、岸田政権が掲げる「資産運用立国」の具体化に向けた議論の土台となる問題提起を打ち出しました。

同年には資産運用高度化室が事実上の廃止となった一方で、企画市場局内に「資産運用改革室」を創設。この改革室がレポート担当を受け継ぐ可能性も一時浮上しましたが、「資産運用立国実現プラン」の策定や関連する制度整備の作業が優先されたこともあり、同年中の公表は見送りに。「改革室版プログレスレポート」は幻となりました。

   組織改編前後のイメージ(資産運用高度化室は23年の組織改編で事実上廃止に)

今回、監督局内に作られた資産運用企画室は今後、プログレスレポートと同様、投信に限らず資産運用機能をもつ幅広い金融商品について調査、分析を行い、その成果を取りまとめる見通しです。「監督局版プログレスレポート」といえる新たなレポートは、旧プログレスレポートやFDレポートが軸に据えるプリンシプル(法令とは別に当局が提示する強制力のない行動規範)の範囲を超え、昨年新設された「最善利益義務」を含め法令面での課題にも言及する可能性がありそうです。

モニタリング室を証券課から分離・格上げ

同じく監督局総務課の傘下には、同局証券課から資産運用モニタリング室を移管。企画室と同様に課長級の参事官を置き、実質的には「課」と同格の扱いとしました。

これまで投資信託会社の監督機能を担ってきた資産運用モニタリング室は、証券課内に位置づけられていたこともあり、証券会社などを対象にしたモニタリングの一環という性格がありました。23年11月に開かれた金融審議会資産運用に関するタスクフォースの会合で当時のモニタリング室幹部は「(投信会社を対象とした)対話を行うときには、親会社のFGやHDの人に来てもらうこともある」と説明しています。

岸田政権が掲げる「資産運用立国」の文脈の中で、金融業界の中で資産運用業を銀行、証券会社、保険などと並ぶ主要ビジネスに位置づけるべきだとの論調が強まりました。昨年末の資産運用立国実現プランの策定を受け、大手グループでも資本関係の見直しなどを通じて投信会社の地位向上に取り組む動きが広がる中、証券課からの分離・格上げによって、監督当局として政・民の動向と平仄をとった形です。

 

かつて金融庁では、金融審議会の旧市場ワーキンググループがひな形を提示した「重要情報シート」を通じた顧客属性の特定・公表をめぐって、組成・販売の両サイドとの調整作業で苦戦した記憶があります。

今月公表したFD原則改定案では、金融商品の組成会社を対象として、想定される購入顧客の属性や実際の顧客属性について、販売会社、運用会社の間で情報連携を強化するよう促しています。証券界のモニタリングから監督機能を切り離すことにより、新たな施策の実効性を高める狙いもうかがえます。

 

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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