finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
年金運用から学ぶプライベートアセット投資の手引き

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【後編】

小倉 邦彦
小倉 邦彦
『オルイン』シニアフェロー 元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー
2024.05.09
無料

上場株よりも重視される PE投資のESG

A氏:PEファンドの説明資料では投資戦略や過去実績、投資事例、GPとのネットワークなどは詳細に記載されていますが、ESGに関する記載はあまり見かけませんね。PE投資ではESGはあまり考慮されていないのですか?

B氏:それは全く違うと思います。ESGは当たり前のものになっているからではないでしょうか? 投資先選定におけるネガティブ・スクリーニングは当然でしょうし、投資の意思決定プロセスにはしっかりESGインテグレーションが組み込まれているはずです。投資先とはESGに関する方針をすり合わせて文書化したうえで、投資実行後はESGに関する改善プランの進捗状況をモニタリングしているはずです。投資先のバリューアップを狙うGPからしたらこれは必然でしょうね。特に欧州系のPEファンドは地域柄かESGに対しても積極的に対応しているようです。

C氏:バイアウト投資の場合は基本的に投資先企業の経営権を握るわけですから、エンゲージメントというよりも自らの手でガバナンスを改善しバリューアップを図ることができます。その意味でESGとの親和性は極めて高いと思います。

VCの場合はマイノリティー出資になりますが、とかく成長重視になりがちなVCの経営者に対し、GPの立場から長期的な企業価値向上を見据えたESGの経営視点を導入支援することができるのではないでしょうか。また、VCは成長と共に投資家から段階的に資金を集めていくわけですが、最近は成長ストーリーだけでなくESGの要素も重要視されてきているようです。

B氏:そうですね、ただVCもアーリーステージだと経営者も成長軌道に乗せるのに精いっぱいで、SやGまではなかなか気配りができないのが現状かもしれません。話は変わりますが、FOFsになると投資先企業に対しては出資が間接的になるので、GPのESGに対する姿勢を評価するという立場になりますね。

C氏:そうです、そこはFOFsからシングルファンドのGPに対するエンゲージメントを行うということでしょうね。FOFsがシングルファンドのアドバイザリー・ボード※6 に参画する場合などは、より発言力がある立場でアドバイスができると思います。また最近はGP自身の投資家からもダイバーシティを含めESGに関してはうるさく言われているという話も聞いています。

A氏:なるほど、PE投資は上場株以上にESG投資の要素が強いようですね。

※6 アドバイザリー・ボード:GPにより大口出資のLPが複数名指名されて構成されるLPの利益代表。ファンドへの出資金額の大きさに加え、GPにとって付加価値の大きい投資家が選定されるのが一般的。GPの投資状況等のモニタリングが主な役割であるが、ファンドの運用に重大な影響を及ぼしうる事項の決議(運用者の交代、利益相反事項の判断等)等も行う。

筆者後書き

これで運用執行理事3氏による井戸端会議は終了です。PEはキャピタルゲインを主体に高いトータルリターンを獲得するという点で、PAの中でも収益ドライバー的な要素が強い資産クラスです。米国では年金や大学等での投資の歴史も長く、これまでに高いリターン実績を示していることからも、PA投資の王道と言っても過言ではないと思います。

一方で、非上場企業への投資ということで流動性が低く個別性が非常に強い投資になりますので、ビンテージ、戦略、マネジャー等の分散が極めて重要となります。これを徹底するためには、長期間安定した資金がそれなりの金額で必要になりますので、日本では従来、PE投資は中規模以上のDBに限定されていた感がありますが、最近は少額でも投資可能なクローズドエンド型のFOFsやオープンエンド型ファンドが登場したことで、PE投資の裾野はこれまでよりも広がっているようです。

また、2021年まで好調なパフォーマンスを示してきたPE投資ですが、2022年に入ってからは株式市場の低迷やボラティリティの高まりを受けてパフォーマンスはやや低迷しており、しばらくは調整局面が続くのではないかと思います。しかし、長期投資のPEはこのような好不調の波に流されず、定期的に投資をしていくのが肝要ということを改めて感じているところです。

PA投資はこれまでに説明した不動産、インフラ、PD、PE以外にも森林農地など多種多様ですが、本企画での資産クラス別解説はこれで終了です。次回は今回の3氏に再度登場いただき、プライベートアセット投資の年金資産運用における将来像なども語っていただき、今回のシリーズの締めくくりにしたいと思います。

上場株よりも重視される PE投資のESG

A氏:PEファンドの説明資料では投資戦略や過去実績、投資事例、GPとのネットワークなどは詳細に記載されていますが、ESGに関する記載はあまり見かけませんね。PE投資ではESGはあまり考慮されていないのですか?

B氏:それは全く違うと思います。ESGは当たり前のものになっているからではないでしょうか? 投資先選定におけるネガティブ・スクリーニングは当然でしょうし、投資の意思決定プロセスにはしっかりESGインテグレーションが組み込まれているはずです。投資先とはESGに関する方針をすり合わせて文書化したうえで、投資実行後はESGに関する改善プランの進捗状況をモニタリングしているはずです。投資先のバリューアップを狙うGPからしたらこれは必然でしょうね。特に欧州系のPEファンドは地域柄かESGに対しても積極的に対応しているようです。

C氏:バイアウト投資の場合は基本的に投資先企業の経営権を握るわけですから、エンゲージメントというよりも自らの手でガバナンスを改善しバリューアップを図ることができます。その意味でESGとの親和性は極めて高いと思います。

VCの場合はマイノリティー出資になりますが、とかく成長重視になりがちなVCの経営者に対し、GPの立場から長期的な企業価値向上を見据えたESGの経営視点を導入支援することができるのではないでしょうか。また、VCは成長と共に投資家から段階的に資金を集めていくわけですが、最近は成長ストーリーだけでなくESGの要素も重要視されてきているようです。

B氏:そうですね、ただVCもアーリーステージだと経営者も成長軌道に乗せるのに精いっぱいで、SやGまではなかなか気配りができないのが現状かもしれません。話は変わりますが、FOFsになると投資先企業に対しては出資が間接的になるので、GPのESGに対する姿勢を評価するという立場になりますね。

C氏:そうです、そこはFOFsからシングルファンドのGPに対するエンゲージメントを行うということでしょうね。FOFsがシングルファンドのアドバイザリー・ボード※6 に参画する場合などは、より発言力がある立場でアドバイスができると思います。また最近はGP自身の投資家からもダイバーシティを含めESGに関してはうるさく言われているという話も聞いています。

A氏:なるほど、PE投資は上場株以上にESG投資の要素が強いようですね。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1 2 3

関連キーワード

  • #プライベートアセット
前の記事
第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【前編】
2024.05.08
次の記事
第6回:プライベートアセット投資の心構え②~まとめとPA投資の将来像【前編】
2024.06.27

この連載の記事一覧

年金運用から学ぶプライベートアセット投資の手引き

第6回:プライベートアセット投資の心構え②~まとめとPA投資の将来像【後編】

2024.07.03

第6回:プライベートアセット投資の心構え②~まとめとPA投資の将来像【前編】

2024.06.27

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【後編】

2024.05.09

第5回:資産クラス編④ プライベートエクイティ【前編】

2024.05.08

第4回:資産クラス編③ プライベートデット【後編】

2024.04.12

第4回:資産クラス編③ プライベートデット【前編】

2024.04.11

第3回:資産クラス編② インフラ【後編】

2024.02.29

第3回:資産クラス編② インフラ【前編】

2024.02.28

第2回:資産クラス編① 不動産【後編】

2024.01.30

第2回:資産クラス編① 不動産【前編】

2024.01.26

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

文月つむぎ

第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?

篠原 滋

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

著者情報

小倉 邦彦
おぐら くにひこ
『オルイン』シニアフェロー 元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー
1980年三井物産株式会社入社。本社、広島支店、ドイツ(デュッセルドルフ)等にて経理、財務業務を担当後、1998年~2006年 本店プロジェクト金融部室長。 2006年~2009年 米国三井物産ニューヨーク本店財務課 GM。 2009年~2011年 本店財務部企画室 室長。 2011年~2013年 三井物産フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長。 2013年~2017年 三井物産都市開発株式会社CFO。 2017年5月~2022年6月 三井物産連合企業年金基金 常務理事兼運用執行理事。 2022年7月~2023年3月 同基金シニアアドバイザー。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?
ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋上位は株式インデックスファンド、「TOPIX」のパフォーマンスが「S&P500」に迫る勢い
社保審系会合でGPIFが「安定的収益を確保」実績を強調、オルタナティブ+インパクトの強化策に有識者から注文も
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
面積最小でも貯金好きの県民性?香川県の金融事情【金融風土記】
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの
社保審系会合でGPIFが「安定的収益を確保」実績を強調、オルタナティブ+インパクトの強化策に有識者から注文も
常陽銀行の売れ筋で期待を高める株式アクティブファンドとは? 売れ筋トップの「日経225」は上放れに安堵
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
【連載】こたえてください森脇さん
③マーケットに動きがない、アフターフォローとして何を聞くべき?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら