池田氏、ESG監督の課題と「正当化されるバラツキ」に言及
金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーの池田賢志氏は、投資商品のグリーンウォッシュ対策の課題とテクノロジー活用の可能性について発言しました。
池田氏は「企業がどれだけ(温室効果ガスを)排出しているかのデータは生データに近いが、(ESGの)格付となると色々なデータソースを引っ張ってきて、担当者の主観的判断が入るなどして加工される。データから評価までにはスペクトラムがあり、どこからどこまでと区切るのは難しい」と指摘しました。その上で、「その判断の局面でAIが入りこむという話はおそらく今後、非常に重要になる視点だし、そこをどうモニタリングするか、規制当局にとっても重要な課題だと思う」と述べました。
ESG投資をめぐっては、市場活性化に向けたルール作りの方向性に国ごとのバラツキがみられ、フラグメンテーション(規制の分断)の問題も指摘されています。これについて池田氏は「グリーンウォッシュをどう判断するかは各金融当局も非常に悩んでいる。明らかな故意と認定できるケースはあまりなく、過失がどれくらい重いか、何がグリーンウォッシュか判断は、各当局の監督している市場、相手にしている金融機関、投資家の性質、各法域における投資家や国民の期待によって考え方が違うことが起きてくる」と説明。「一般論としては、各国でグローバルに活動する金融機関もいるので、フラグメンテーションはなるべく少なくしよう、だからこそ開示の世界ではISSBなどがグローバルベースラインを提供しようという話になる。しかし一方で当局間で話していると、たしかにフラグメンテーションはなるべく少なくするのがよいが、各国の事情に応じてある種正当化されるフラグメンテーションもあるという人もいる」と話しました。
また、「傾向として英国やEUの当局者は、グリーンウォッシングの基準をしっかり決めたいというアペタイトがある」との認識を提示。日本におけるAIの学習をめぐる規制が他国に比べ現時点で比較的柔軟であることに触れた別の参加者の発言を受ける形で、「日本における規制のデザインとしては、AIを活用した何らかの基準を日本が先進的に作る可能性を示唆する話だ」とも発言しました。
村井副長官「中小アセットオーナーも建設的対話を」
村井英樹官房副長官は単独講演で登壇。「株式市場で(日経平均株価が3月に初めて)4万円を超えたが、これに一喜一憂することなく取り組みを進めていくことが重要」と強調し、日本経済はデフレ志向で、コストカット型経済とか言われてきたが、これを切り替え、好循環を作り上げる最大のチャンスが今来ている。このチャンスを逃すことなく、我が国の持続的な発展、そして国民のウェルフェアにつなげるため、皆さまに更なるご尽力を」とし、金融業界に改めて協力を呼びかけました。
また、企業年金の改革に触れ、「企業年金といっても大きいところから小さいところもある。あまり大きくないようなアセットオーナーの方は、企業と対話をしてしっかりエンゲージメントしてくださいといっても、限られたリソースの中でなかなか難しく、どうしてもパッシブ運用にとどまってしまうといった話の中で、中小のアセットオーナーの皆さんに協働で企業に対しエンゲージメントをしていただき、適切に建設的な対話を進めていただきたい」と説明しました。