finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

【アクセンチュア・中野将志氏インタビュー】「スピードボート」戦略で実現させた、世界初のフルクラウドバンキング

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2023.03.23
会員限定
【アクセンチュア・中野将志氏インタビュー】「スピードボート」戦略で実現させた、世界初のフルクラウドバンキング<br />

ここ数年、多くの金融機関がDX(デジタルトランスフォーメーション)に着目し、専門部署を作ったりするなどその推進に力を注いできたのは言うまでもない。では、DXを進めるに当たって何がポイントとなり、特に金融機関においては何が障壁となっているのか。アクセンチュアの常務執行役員で金融サービス本部統括本部長を務める中野将志氏に聞いた。

――DXと一口に言ってもその範囲は多岐にわたり、抱えている課題もさまざまだと思いますが、どのように整理できるのでしょうか。

まずは、そもそもDXとは何かがポイントです。実はDXというのは人材改革であり、従来型の人材をデジタル人材に変えていく改革だと私は捉えています。では、そのデジタル人材とはどんな人なのか。そこが明確に定義されていない中で、言葉のみが先行してしまっているように感じています。

例えば当社の場合はSMACS、つまりSocial、Mobile、Analytics、Cloud、Securityという5つの領域の技術を駆使してビジネスやサービス、チャネル、顧客体験を変革していける人をデジタル人材と位置づけています。当然、技術自体を分かっていなければならないし、その技術を使えばこんなに業務を効率化できる、こんな商品やサービスを実現できるといった思考を持ち、実際に推進できる人材。そうした人材を育成することこそが、DXの本質だと言ってもいいでしょう。

DXの推進を妨げているのはIT人材の不足と組織の壁

――なるほど、DXイコール人材の問題なわけですね。

特に金融機関にとってはこのデジタル人材の育成が最大の課題になっています。現在の金融はデータそのものであり、テクノロジーによって成り立っている業界であると言っても過言ではありません。しかし、金融機関の中でシステム部門の立場は相対的に弱かったと思います。業務やビジネスを企画・検討するのは企画部門やユーザー部門で、そこで決まった内容やスケジュール、予算を受けてシステム部門が業務を実現するという「上流・下流」のような構造です。

しかし、先にお話しした通り、金融はデジタルそのものです。だからこそ、システム部門がテクノロジーを活用すればどんなことができるか、どのように既存の業務やサービスを変えられるか提案し、ユーザー部門がそこに顧客視点を持ち込むなど一体となることで、大きな変革を実現できると考えます。もともとアジャイルという考え方も、そこから生まれました。要は、「立場」「立ち位置」を変えられるかどうかということです。

実は、第三次オンラインシステムの1980年代はテクノロジーの最高峰が銀行であり、システムインテグレーター(SIer)やコンサルティング会社でも最高の人材が銀行の業務に従事していたと思います。しかし、今は必ずしもそうではなく、むしろ古い技術を使い続ける、なかなか変化しない組織だという印象すら持たれています。優秀な人材をいかに呼び寄せられるかが大きな課題になっているのです。

さらに、地域金融機関は基幹系システムなどの共有化を進めてきたため、自行のシステム部門が弱くなってしまっているという課題もあります。システムに関してはSIerに任せ、人材を営業や業務にシフトさせてきたため、DXと言われても、質・量・経験を含めて人材が足りない状況になっているように思います。

また、人材に加えて組織の壁もあります。DXのXはトランスフォーメーション、つまり変革を意味し、組織横断で行ってこその変革です。しかし、多くの銀行は組織単位で予算が組まれ、部門内の優先順位もある。組織横断で実現しなければならないDXは、構造的に難しい側面があるように見えます。

――そうした金融機関の多くの課題を貴社は解決されてきましたが、その強みはどこにあるのでしょう。

先ほどSMACSというお話をしましたが、この5つの領域についても実は必要とされるスキルはさらに30くらいに分かれ、その30に対して最低でもそれぞれ30人、できれば100人くらいいなければ、お客さまの取り組みを継続的に支援することはできません。つまり、最低でも約1000人、理想を言えば3000人くらいのデジタル人材がいなければ、スキルを研磨し続けられないのです。当然のことながら、最新の技術を常にキャッチアップしていかなければなりません。

その点、アクセンチュアには日本だけでも2万人近い人材がいて、常に新たな領域にも取り組んでいます。こうした豊富な人材こそが、当社の最大の強みと言えるでしょう。

――コンサルタントと言えば顧客のブレインというイメージもありますが、具体的にはどんな形でサポートするケースが多いのでしょうか。

私たちはお客さまに「伴走」します。一緒にビジネスプランも立てれば、要件定義やシステムの設計、構築、デザイン、その後の運用や業務支援、マーケティング支援まで行うケースもあります。お客さまと一体になり、一緒にリスクを取りながら実践していくというビジネスモデルです。

いわゆるコンサルティング会社が重要視するのが「アウトプット(報告書など)」であるのに対し、私たちは「アウトカム(成果)」を最も重視し、そこにコミットしています。成果が出るまで一緒にやりたい、そのためにはどうすればいいのか、常に悩み続けている集団なのです。

――DXと一口に言ってもその範囲は多岐にわたり、抱えている課題もさまざまだと思いますが、どのように整理できるのでしょうか。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
次のページ 「スピードボート」で変革を
1 2

関連キーワード

  • #フィンテック・DX
  • #人的資本経営

おすすめの記事

「分配金」重視姿勢は根強いものの予想分配金提示型でトータルリターンを評価の流れ、野村證券の売れ筋にみる変化

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

文月つむぎ

資金流入額は「株式型」への流入増で7カ月ぶりに増額、パフォーマンスは中国A株と「ゴールド」=25年8月投信概況

finasee Pro 編集部

投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】

Ma-Do編集部

暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか

川辺 和将

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
金、暗号資産、日本の漫画・アニメに共通する「実質資産投資」の考え方とは?
【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
足利銀行の売れ筋トップはバランス型、米国株式ファンドのランクアップが目立つ
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
SBI証券で“やはり強い”「オルカン」「S&P500」「FANG+」、一方で「ピークは7月末」で価格は横ばいの懸念も
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
「分配金」重視姿勢は根強いものの予想分配金提示型でトータルリターンを評価の流れ、野村證券の売れ筋にみる変化
ラッセル・金武伸治氏が解説する運用課題の解決のヒント
【オルタナティブ投資活用編】
eスマート証券の売れ筋から「国内債券」の順位が落ちる、新たに加わったファンドとは?
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント
浪川攻の一刀両断
個人投資家がアドバイザーを選ぶ時代に、「J-FLEC」の検索エンジンに学べ
第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?
松井証券の売れ筋に現れた次代のスター候補銘柄、「オルカン」を大きく上回るパフォーマンスで注目のファンドとは?
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
資金流入額は「株式型」への流入増で7カ月ぶりに増額、パフォーマンスは中国A株と「ゴールド」=25年8月投信概況
地域金融機関44行が参加 バランスシート経営の強化へ向けたコンソーシアムが始動
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(1)インデックスファンドはトラッキングエラーに注目
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
【プロはこう見る!投資信託の動向】
2025年4月の株価急落は変化のトリガー、米国株式への強烈な資金フローの向かう先とは?
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
地域金融機関44行が参加 バランスシート経営の強化へ向けたコンソーシアムが始動
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら