2人の大切なものを残す工夫

徹はスマホを取り出し、契約した部屋の間取りを見せた。

「こっちの広い部屋、寝室にする予定だったでしょ?」

「うん。もう1つの部屋には私の本棚とか徹のレコードラックを置いて、趣味のものをまとめる予定だったよね?」

「それ、逆にしない?」

「え?」

徹は狭い方の洋室を指した。

「サイズにこだわらなければ、こっちの部屋でも十分にベッド置けると思うんだ。クローゼットもあるし。代わりに広い方を2人の趣味部屋にすればいいんじゃない? こっちならこの部屋くらいの大きさはあるし、置き方を工夫したらギリギリ全部入るんじゃないかな」

徹は間取りをなぞりながら、本棚の置き方やレコードを置く棚の話をして、収納ができそうだと説明した。早希は説明を聞きながら目を輝かせた。

「それなら徹のレコードも処分しなくていいんだね?」

「ああ。まあ、最初はこれで生活してみて、やっぱり寝室狭いねってなったら、そのときまた考えようよ」

徹の言葉に早希は嬉しそうに眉尻を下げた。

「ありがとう。そこまで考えてくれて」

「いやいや、俺もやっぱり手放したくはなかったから」

それから徹たちは本をほとんど処分せずに荷造りを終えた。

我慢せず始めた2人の同棲

2週間後、引っ越しの荷ほどきや配置を一通り終え、早希と徹は新居でお祝いをした。

ビールを注いだカップを2人は軽く触れさせた。

「乾杯。これからよろしくね」

徹がそう言うと、早希は少し照れた感じでうなずいた。

「うん。よろしく」

寝室になるはずだった大きな洋室には、本棚やレコードラックが並べられていた。当初、思い描いていた新居とは違う形にはなった。しかし、自分の好きなものも相手の好きなものも大切にできる部屋があるのは、自分たちらしいと思った。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。