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2026年、注目のアセットクラスは? 債券・株式市場の展望―投資家が注視すべきリスクと機会に迫る

finasee Pro 編集部
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2025.12.18
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2026年、注目のアセットクラスは? 債券・株式市場の展望―投資家が注視すべきリスクと機会に迫る

米国では第2次トランプ政権が発足し、自国第一主義で世界を翻弄。日本では高市早苗氏が女性初となる内閣総理大臣に就任、日経平均株価は初の5万円を突破し史上最高値を更新―。2025年は国内外で政治・経済ともにエポックメーキングとなる出来事が相次いだ。世界を覆う地政学的な緊張や台頭する保護主義政策に象徴されるように、激しい変化が将来の不確実性を高めている。資産運用を取り巻く環境はどう変わるのか。世界的な保険大手アクサグループの資産運用会社、アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)のコア・インベストメント最高投資責任者(CIO)兼アクサIM資産運用研究所議長を務めるクリス・アイゴー氏が2026年の世界経済の見通しおよび注目の資産クラスなどについて語る(後編)。

債券市場の見通しと為替ヘッジコストの影響

2026年における具体的な資産クラスの見通しについてだが、債券市場については比較的前向きな見方をしている。利回りは向こう1年、安定して推移すると考えている。国債については日本を含む各国で発行残高が増加していることは懸念材料ではあるものの、市場にはそれを吸収する十分な流動性があると見ている。

中でも米国のクレジットやハイイールド債に投資妙味があると考えている。欧州でも同様にイールドカーブ(利回り曲線)がスティープ化しており、長期債の利回りが短期金利に比べてかなり高い水準にあるため、2026年にかけて欧州の社債には前向きな見方をしている。

日本の投資家にとって重要なのは為替ヘッジコストだが、各国の短期金利の差は縮小傾向にある。例えばユーロと円の金利差は1%程度にまで縮まってきているため、ヘッジ付き欧州社債の利回りは現在、日本国債とほぼ同等となっている。

一方で、ヘッジ付き米国債は円換算では依然として妙味はないものの、FRBの利下げが進めば日本の投資家にとっても投資妙味が増すだろう。米国経済に若干の減速の可能性と利下げが控えているため相場についてはややドル安傾向とみている。

 
アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM) コア・インベストメント最高投資責任者(CIO)兼アクサIM資産運用研究所議長クリス・アイゴー氏
 

●前編「「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境」

日本株はポジティブ、長期金利は2%程度まで上昇

日本株については非常にポジティブな見通しを持っている。日本には今後も継続するテクノロジーやオートメーションへの投資から恩恵を受ける企業が多く、円安も企業収益にとってプラスに働くからだ。日本国債の長期金利の上昇については、世界的な金利上昇の傾向と日本の金融・財政政策の転換期を迎えている点が反映されていると考えている。日銀は政策金利をもう少し引き上げる必要があると見ている。

新首相の下で打ち出された21兆円規模の財政計画は、国債の増発につながるため総合的に見て日本の10年債利回りは2%程度まで上昇する可能性があると予測している。

S&P500のバリュエーションはITバブル期に匹敵する割高感

株式市場のファンダメンタルズは極めて良好で、企業の利益率は過去2年間で上昇しており、収益性は非常に高い水準にある。AIによる生産性向上に後押しされ、主要な株式市場のほとんどで2026年にかけても力強い増益が続くと期待している。

中でも欧州株は構造的なプラス要因があることに加え、米国株に比べて割安感がある。また、テクノロジー関連投資の拡大から恩恵を受ける新興国市場にも注目している。

一方で懸念材料も存在する。一つは株式相場におけるバリュエーションの割高感だ。特にS&P500種株価指数の株価収益率(PER)は22倍と、歴史的にみても将来リターンが相当低くなる水準を示唆しており、サイクル調整後の株価水準からPERをみると1999年のITバブル以来の割高水準にある。

もう一つの懸念は、米国市場における極端な集中リスクだ。S&P500の時価総額の約半分がわずか8銘柄によって占められており、米国株での分散投資が困難になっていることを示している。

最大のリスクは米国AIバブルが破裂するかどうか

株式市場における最大のリスクは、「AIバブルの崩壊」だ。もしAIバブルが弾ければ株式相場は大きく下落し、米国経済をリセッションに陥れるシナリオが現実味を帯びてくる。

債券市場にもリスクはある。インフレ率の再高騰や政府の財政赤字の高止まりなどだ。また、クレジット市場ではスプレッドが非常にタイトでバリュエーションが割高だ。大手テクノロジー企業によるAI関連の設備投資で負債を利用した資金調達が拡大しておりレバレッジが上昇していることも懸念点だ。急拡大するプライベートクレジット投資では機関投資家の投資も増えており、資産の質についても注視する必要がある。

2025年はコモディティ価格の上昇やテクノロジーブームに後押しされ、株式、債券市場ともに良い年となった。2026年もこの傾向は続くとみるが、米国一辺倒ではなく米国以外の市場を含む、よりバランスの取れた市場展開が訪れると予測している。世界が抱える生産性の問題や気候危機といった課題にAIや再生可能エネルギー、脱炭素化といった解決策が多くの投資機会を提供するだろう。

短期のボラティリティと長期の価値創造

AIブームは新興国市場にも影響を与えており、中国市場でもテクノロジーに牽引されている相場展開となっている。私たちはAIテーマが2026年も重要であると考え、市場に対するポジティブな見方を維持している。ただし、中国市場の見通しはまだら模様だ。住宅市場の弱さは残るが、政府の個人消費刺激策が奏功すれば経済成長は上向くと見ている。米中間の関税交渉が妥結に向かえば、中国を含むすべての地域にとってプラスとなるだろう。

AIの需要はChatGPTなどの利用状況から指数関数的に伸びており、多くの企業のトップがAI投資の必要性を認識している。ただしAI企業以外がAIへの投資を始めるのか否かが明確でない。AIセクターはエヌビディアの株価変動に見られるようにボラティリティが非常に高いのも事実だ。

重要なのは時間軸の観点だ。新しい技術が経済全体に浸透し、その恩恵が広く享受されるまでには時間がかかる。かつてのドットコム・バブル崩壊がマイクロソフトやアップルに終えんをもたらしたわけではない。株価は短期的に大きく変動するが、優れた技術が長期にわたって経済に恩恵をもたらすことは確かなことだ。短期的な株価の変動と長期的な技術革新がもたらす価値とを分けて考える必要がある。

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