財政出動の塩梅は「やはりバランス」
日比野会長は石破現政権について「その前の岸田政権の資産運用立国、NISAの抜本的拡充といった流れをしっかりと引き継いでやっていただけた政権であり、そういう意味で大変評価もしている」と述べました。
その上で、次の政権については「どなたがトップになるにせよ、こういった良い流れが出来ているので、資産形成、企業の成長、そして日本経済の活性化へと繋がるような、そういう流れを更に推し進めてほしい。個人的には日本国が目指す大きな長期的な国家ビジョンを出していただけると、いろんな意味で、大きな転換点に経済の面でもなるので、それを期待したい」と話しました。
また、「財政出動の塩梅については、世界各国、特にフランスが大変なことになっているが、超長期金利の上昇は世界的に現在見られる状況であり、そういう意味では国際的な観点から、財政規律への注視の度合いは以前よりかなり高まってきている」と指摘。「やはりバランスの取れた、短期のインフレの中での生活苦に対する対応と、中長期ではしっかり財政的な健全性を維持するという強いメッセージとともに展開していただくのが良いんだろうなと。今、超長期中心に非常に荒れやすいというか、これは世界的にポピュリスト政権が多くてそうなってるわけだが、フランスのようなことにならないようにというのは当然、必要であるということだ」と述べました。
「投資立国」はどこへ?
日証協は7月、投資信託協会、全国証券取引所協議会と共同で来年度税制改正に関する要望を公表しています。会長は「NISAは相当程度もう自律的な拡大局面に入っており、それを一層進めるという意味で不断の努力、あるいは改善が必要と思う。今回は全世代、重点は特に若年層だが、資産のシフトも含め、この辺りは特にジュニアNISAがなくなっているので、しっかりと導入されるといいなと思っている」と述べました。
また、要望には「世代間の資産承継を円滑にするための税制措置」として、一部の上場株式について相続税に関する税制優遇措置も盛り込まれています。
これについて会長は「ハードルは極めて高いが、相続税のところは株式の評価、長期保有株式に関する優遇税制を引き続き、最重点として訴えていきたい。個人株主の比率が下げ止まりつつあり、それはNISAのおかげかもしれないが、政策保有株が限りなくゼロに近づく状況でもあり、企業経営上、安定株主はそれなりに重要なので、相続が近づくと個人が売ってしまうというビヘイビア(振る舞い方)を抑制するような、サポーティブな株式保有を後押しする税制が期待される」と述べました。
この他に会見では、総裁選後の10月後半に協会が主催するスタートアップ関連のイベントの詳細も公表。スタートアップ支援は岸田前政権が「5カ年計画」を通じて独自色を打ち出した領域であり、今回の会見全体として、次期政権における「岸田路線」の継続を前提として協会運営を続ける考えをうかがわせました。
石破茂首相は就任当初、「投資大国」「投資立国」といったスローガンを掲げて岸田路線との差別化を図っていました。しかし会長の発言からも読み取れる通り、少なくとも現在の証券界で共有される文脈においては皮肉にも、石破氏は「資産運用立国の継承者の1人」という役回りに過ぎなかったとの評価に落ち着きつつある格好です。