finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

玉虫色の金融庁「暗号資産ディスカッションペーパー」、見逃せない3つのポイント

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.04.15
会員限定
玉虫色の金融庁「暗号資産ディスカッションペーパー」、見逃せない3つのポイント

金融庁は4月10日、ディスカッション・ペーパー「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」を公表しました。政府は制度整備に乗り気なのかそうでもないのか、現時点では玉虫色の表現が目立ちますが、ある程度の方向性を見出せる記載もちらほら。①規制の「柔構造化」②インサイダー取引③資産形成手段としての位置づけ――という3つのポイントに注目して解説します。

①「柔構造化」とは?

ディスカッションペーパー(以下「DP」)とは、目まぐるしい環境変化への対応が急務でありながら、性急な法制度変更には慎重さも求められるようなテーマに対し、当局として論点を整理することで業界とのコミュニケーションのきっかけを作るものです。最近では、AI分野においても同様の目的でDPが公表されています。

 

現状、暗号資産に関係する規制は主に資金決済法がベースとなっていますが、足元では金融商品取引法(以下、金商法)に移行する案が浮上しています。一方、金商法は資金決済法に比べて規制が厳しいとされており、暗号資産に対して一律にルールを追加すればイノベーションの可能性が阻害されるといった懸念もあります。

 

そこでDPでは、暗号資産を2つの類型に分けた上で、それぞれの特性に応じて柔軟に規制をかける方向性を提示しています。

 

具体的には暗号資産を、資金調達や事業活動のために発行される「類型①」と、それ以外の「類型②」に区分。類型②にはビットコインやイーサ(イーサリアム)が含まれるので、要するに、一般的に暗号資産と言われてイメージするものはたいていこの「②」に当てはまることになります。

 

DPでは断定的な表現を避けつつ、特に流通量が比較的少ない「類型①」についてはより規制が緩い枠を設けた上で、全体として暗号資産分野の参入規制などについて緩和的な類型を設定する可能性を示唆しています。

 

②インサイダー規制導入には前向き

暗号資産は金商法におけるインサイダー取引規制の直接的な対象とはなっていませんでした。海外で珍しくなくなってきた法執行事例を踏まえ、DPでは暗号資産の取引を新たに規制対象とする方向性に言及しています。

 

ただ、既存のインサイダー取引の定義は主に上場企業が発行する株式を念頭に置いているため、「重要事実」や「内部者」といったベースとなる概念の範囲を暗号資産の特性に合わせて修正する必要がありそうです。DPでは規制強化を前提として、具体的な制度設計については複数の選択肢をテーブルの載せて慎重に議論を進める考えを示唆しています。

 

当局は基本的に、規制のアービトラージ(国ごとの規制のズレが生み出すビジネス環境の歪み)を避けるため、制度整備にあたっては国際的な動向に足並みをそろえることが大前提です。しかし、ことインサイダー取引規制に関しては、そもそも国ごとにセーフ/アウトの線引きがまちまちな分野でもあり、金融審内で議論の注目度はそれなりに高まりそうです。

 

③「家計資産に資するオルタナ投資対象」に

与党が昨年末の作成した税制改正大綱では、一定の暗号資産を「広く国民の資産形成に資する金融商品」として業法で位置づけるという記載が盛り込まれました。DPでも暗号資産が個人投資家を含めて、分散投資の対象として認識されつつある状況に言及。金融庁が実施した投資家の意識調査で、投資経験のある国内個人投資家の暗号資産保有率が一定の割合を占めていることや、米国において、ビットコイン現物ETFに投資する機関投資家が増加しており、公的年金など長期保有を前提とする投資家を含め活用が拡大している現状を紹介しています。

 

また、投資のリスクは「高いものと考えられる」としながらも、「例えばビットコインは株式等の伝統的資産との相関性が低い」「インフレ耐性があるため分散投資の対象となり得る」といった声を紹介。「特に家計においてはリスクを十分に理解し、投資余力の範囲内であることが肝要であるものの、暗号資産は資産形成に資するオルタナティブ投資の対象となり得るものであり、投資家のリスク選好に応じて一部の資金を暗号資産に分散投資することも考えられる」と記しています。

 

金融庁はDPについて6月10日までパブリックコメントを実施し、具体的な規制のあり方を検討していく構えです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉞
変動の大きい市場環境の中、投信市場への資金流入は過去最高に

藤原 延介

【プロが解説】住宅価格高騰への処方箋――関心を集める「アフォータブル住宅」と「中古不動産」、問題に向き合う企業にも注目

伊藤 里沙

「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地

文月つむぎ

【みさき透】資産運用立国プランは残った--内閣官房の新金融戦略、“民権派”からの権力シフトを経て

みさき透

【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか

八杉 哲史

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉞
変動の大きい市場環境の中、投信市場への資金流入は過去最高に
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
【プロが解説】住宅価格高騰への処方箋――関心を集める「アフォータブル住宅」と「中古不動産」、問題に向き合う企業にも注目
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地
【みさき透】資産運用立国プランは残った--内閣官房の新金融戦略、“民権派”からの権力シフトを経て
千葉銀行の売れ筋で株式インデックスファンドがランクアップ、中東紛争の行方次第ではリスクに
「事業者支援で銀行は儲かるのか?」に対する答えは……新プログレスレポートに見る金融庁の“経産省化現象”
「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」
広島銀行の売れ筋で「ポラリス」と「世界経済インデックス」が逆転、米国株は「S&P500」より「メジャー・リーダー」
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地
千葉銀行の売れ筋で株式インデックスファンドがランクアップ、中東紛争の行方次第ではリスクに
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
【みさき透】資産運用立国プランは残った--内閣官房の新金融戦略、“民権派”からの権力シフトを経て
足利銀行の売れ筋でランクアップは「宇宙」「バリュー」「ジャパン」「ロボ」、次の主役を模索する動き
「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉞
変動の大きい市場環境の中、投信市場への資金流入は過去最高に
広島銀行の売れ筋で「ポラリス」と「世界経済インデックス」が逆転、米国株は「S&P500」より「メジャー・リーダー」
「事業者支援で銀行は儲かるのか?」に対する答えは……新プログレスレポートに見る金融庁の“経産省化現象”
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは
「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

デジタル時代における地方銀行の勝ち筋
- アンケートから読み解く顧客行動とAI活用の方向性 -
「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地
マン・グループの洞察シリーズ⑲
AI投資ブーム:いずれ調整を余儀なくされる
「事業者支援で銀行は儲かるのか?」に対する答えは……新プログレスレポートに見る金融庁の“経産省化現象”
広島銀行の売れ筋で「ポラリス」と「世界経済インデックス」が逆転、米国株は「S&P500」より「メジャー・リーダー」
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら