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金融庁幹部「新たな不確実性の時代に突入」 トランプショックで霞が関からついに消えた「あの言葉」…

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.04.09
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金融庁幹部「新たな不確実性の時代に突入」 トランプショックで霞が関からついに消えた「あの言葉」…

トランプ政権による関税引き上げ措置と市場の動揺を受け、金融庁は金融事業者に対し、取引先のサポートを関係省庁と連名で改めて要請しました。政府はここ数年、中小企業の支援策についてコロナ禍からの回復というニュアンスを強調してきましたが、情勢複雑化を受け、新たな危機の予兆を見逃さないことに重点を移しているところがポイントです。

当局幹部「新たな不確実性の時代に」

米トランプ大統領が2日、日本を含む全世界を対象とする相互関税を発表し、各国の株式市場に動揺が広がりました。ある金融庁幹部は「世界経済の中長期的な成長が逆回転するというのは極論であり、長期分散・積立投資の理論的な妥当性が崩れるとは全く考えていないが、トランプ政権の施策によって新たな不確実性の時代に突入したことは間違いない」と話します。

 

金融庁と関係省庁は、トランプ氏による演説翌日の3日、「米国自動車関税措置等に伴う影響を踏まえた金融上の対応等について」と題する要請文を公表。アメリカの関税引き上げによって中小企業の資金繰りに支障が生じないよう、「事業者の業況や資金需要を把握し、適時適切な融資・保証、担保徴求の弾力化、既往債務に係る返済猶予や条件変更を含む資金繰り相談に丁寧にかつ親身になって対応する」ことを求めました。

 

また、民間金融機関に対しては「必要に応じて、早期に政府系金融機関の窓口を紹介するなど、関係機関とも緊密に連携しつつ丁寧にかつ親身になって事業者の経営相談に応じる」よう要請しています。

 

取引先の状況を逐次把握し、早期かつ適時適切なサポートを提供する、という「スピード重視」の書きぶりは、米国の関税措置の少し前から霞が関で広がっていました。

政府が3月に策定した「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」。ここでも、中小企業の経営が行き詰まり、救いようのない状況に陥るよりも早い段階でその予兆を察知してサポートできるよう、早期相談の定着を後押しする施策が盛り込まれています。

 

その注目点の1つが、中小企業庁が所管する既存の「早期経営改善計画策定支援事業」の呼び名の変更です。

 

この事業は、国が認定した認定経営革新等支援機関(金融機関を含む)の支援を受けて経営改善計画を策定する際に、その費用の一部を国が補助するというもの。これまで「ポストコロナ持続的発展計画事業(ポスコロ事業)」という通称で知られていましたが、この度「バリューアップ(Vアップ)支援事業」へと名称が変更されました。

この名称変更には、ポストコロナ時代の回復を後押しするだけでなく、米国の関税措置などを念頭に置き、企業経営がさらなる困難に直面する状況への備えを促すニュアンスがあります。

また、「Vアップ支援事業」という名称は建前上「バリューアップ」の略ですが、「V字回復」の意味合いを含んでいるとすれば、コロナ禍で中小企業が必ずしも「V」字の底を打ったとは言い切れない現状を踏まえ、さらなる支援が必要であるというメッセージを読み取れるかもしれません。

 

金融機関向け「予兆管理ガイド」、近く正式策定へ

企業の経営状況の悪化を金融機関が早期に把握して対策を打つことができるよう、中小企業庁は近く、取引先支援の手引きとなる「予兆管理における着眼点」を正式策定する予定です。

支援を提供する側の情報量や態勢に応じて「簡易診断」「通常診断」「高度診断」の3段階で着眼点を整理。データ取得から予兆の管理と発見、支援ニーズの掘り起こしからフォローアップまでの各段階でどのような対応が必要となるかを解説する内容となる見通しです。

 

石破茂首相は3日の記者会見で、「支援を着実に実施することで、事業者の不安にきめ細かく対応する」と説明しました。ただ、官民が連携して地域経済の支援に専念するためには、政府側から業界に対し引き続き丁寧な説明が求められることになりそうです。

当局幹部「新たな不確実性の時代に」

米トランプ大統領が2日、日本を含む全世界を対象とする相互関税を発表し、各国の株式市場に動揺が広がりました。ある金融庁幹部は「世界経済の中長期的な成長が逆回転するというのは極論であり、長期分散・積立投資の理論的な妥当性が崩れるとは全く考えていないが、トランプ政権の施策によって新たな不確実性の時代に突入したことは間違いない」と話します。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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