finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

貸金庫管理の監督を強化へ、金融庁幹部発言にみる当局の「落としどころ」

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.04.08
会員限定
貸金庫管理の監督を強化へ、金融庁幹部発言にみる当局の「落としどころ」

大手行での貸金庫窃盗事件を受け、金融庁は銀行向けの監督指針改正案を公表しました。改正案は金融機関に対し、管理態勢の強化やマネーロンダリング対策、事案の公表などを求める3つの柱で構成。金融機関の信頼維持のため対策強化は不可避との認識が業界内で広がる一方、大手行ではサービス継続を表明する動きもあります。貸金庫の開け閉めのたびに中身の確認を求められるようになれば、現場の負担が増えると懸念する声もあります。果たして、当局の「力加減」「落としどころ」は……?

指針も約款も「現金」の位置づけ明確化へ

金融庁が今回公表したのは、主要行等向けと、中小・地域金融機関向けの各監督指針改正案です。従来、これらの監督指針の中には貸金庫業務に注目した記載自体が存在しませんでしたが、大手行における巨額窃盗事件の発覚を受けて、項目を新設した改正案を策定しました。

それぞれの改正案は、「管理態勢」「マネロン・テロ資金供与対策」「事案公表」の3つの柱で構成されています。

管理態勢強化については、規約の策定・整備、入口の防犯カメラ設置や生体認証の導入といった入退室・開閉状況の管理、定期点検の実施などを求めています。規約の例としては「貸金庫入室時に複数人による確認を要する手続き」「予備鍵を本部で一括管理する」といった方策を挙げました。

マネロン・テロ資金供与対策に関しては、貸金庫利用時の約款で、高リスクの物品を格納可能な物品から除外するよう求めた上で、現金が高リスク物品に含まれると明記しました。

現状、一般的に金融機関で使用されている約款では、そもそも貸金庫に現金をしまうことができるかが明記されていません。当局は主要行向けの約款のひな形を作っている全国銀行協会に働きかけ、各行に約款の書き換えを促す考えです。

また、事案公表等については、「顧客が公表を望まない等の例外的な場合」を除いて、顧客資産の窃取・横領といった事案を原則公表するよう求めています。

 

当局の「フォローアップ」の中身は…

金融庁幹部は「貸金庫の利用顧客には、現金をかなり入れているケースもあると推測する。我々もハッキリとはわかっていないというのが率直なところではあるが、実際に今回の事件でも現金があったと聞いている」と説明したうえで、「(金利の復活で)預金金利がつくような状況にもあり、基本的には預金等の形で金融機関に預けてもらうのが望ましいと考えている」と述べました。

また、「現金を保管しているからといって、例えば没収など、ただちに顧客に不利益が生じることはない。無用の不安は金融犯罪の温床につながりかねないので、仮に現金を入れている顧客に『金融庁が現金を禁止したから危ない』というように煽るようなことの起こらないように」と呼びかけました。

加えて「監督指針はあくまで監督上の着眼点であり、ルールとして現金を禁止するという類のものではない」と念を押した上で、各事業者や業界団体に対し、指針を踏まえた対応を求め、金融庁として今後も貸金庫業務の実態や対応状況についてフォローアップしていく考えを示しました。

 

具体的に今後、各行の現場ではどのような対応を求められることになるか――。金融庁幹部は現時点での考えとして「詳細は今後詰めることになるが、貸金庫の契約をする際に利用目的などの確認をしていただきたい」と説明。一方、「開け閉めするたびに毎回中身を突き合わせる形で確認を求めることは、実務上、顧客の利便性という観点からもやり過ぎではないかと考えている」と述べました。

 

金融庁は4月27日午後5時までパブリックコメントを受け付け、その後、監督指針を正式確定させます。全国銀行協会は指針確定を受けて各行向けの約款ひな型を修正する見通しです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】

Finasee編集部

中国銀行で売れ筋トップ10にランクインした「パワテク」、今年の新設ながら抜群の運用成績で脚光

finasee Pro 編集部

マーケット・リスク相当額の算出を新たに開始した銀行は「?行」だった

岡本 修

【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング

Finasee編集部

福岡銀行で国内株「配当フォーカスオープン」が売れ筋トップ、「テック株」「純金」「インド株」がランクアップ

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
三井住友銀行の売れ筋で「S&P500」を抜いて「225」浮上、新ファンド「ディープバリュー戦略」は破壊力抜群
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
三菱UFJ銀行の売れ筋トップに限定追加型「CBファンド」、圧倒的なパフォーマンスから「純金ファンド」がランクイン
楽天証券ランキングの「S&P500」至上主義に危うさ、実はもっと好成績のファンドがある!?
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
いま改めて考える
国内プライベートエクイティの投資機会と活用可能性②
中国銀行で売れ筋トップ10にランクインした「パワテク」、今年の新設ながら抜群の運用成績で脚光
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
三井住友銀行の売れ筋で「S&P500」を抜いて「225」浮上、新ファンド「ディープバリュー戦略」は破壊力抜群
三菱UFJ銀行の売れ筋トップに限定追加型「CBファンド」、圧倒的なパフォーマンスから「純金ファンド」がランクイン
【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
資産運用ビジネスの本気度が問われる時代へ、変わる監督行政と業界
7月に発足した金融庁「資産運用課」の課題は  永山玲奈課長に聞く
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」
地銀協が合併促進策の強化を要望!「3分の1赤字」の高度化会社も規制緩和へ【金融審地域金融力WGレポート】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら