finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

行政の信頼回復へ…特別研修から始まる金融庁の2025年、職員株取引「性善説」は維持

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.01.10
会員限定
行政の信頼回復へ…特別研修から始まる金融庁の2025年、職員株取引「性善説」は維持

金融庁では年明け早々、職員の不祥事を受けたインサイダー取引に関する特別研修が予定されています。昨年は行政、民間の両サイドで不祥事案件が目立ちましたが、金融行政と金融市場の信頼向上に向け、当局として今年こそ範を示すことはできるのでしょうか。

始動した4つの「再発防止策」

証券取引等監視委は12月23日、金融庁に出向していた元裁判官の男を金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで東京地検に告発しました。

男は2024年4月1日付で金融庁企業開示課課長補佐に着任。監視委によれば関東財務局を通じて金融庁に寄せられた事前相談によってつかんだ10銘柄分のTOB案件の情報をもとに、9月までに対象銘柄株式を合計900万円超、買い付けたとしています。

 

男は捜査を経て9月6日付で総合政策局に配置換えとなり、監視委告発と同日の12月23日に免職されました。金融庁は企業開示課課長を減給10分の1(3カ月)、現企画市場局長と前局長(井藤英樹長官)を戒告処分としています。

 

処分を受けて、加藤勝信・金融担当大臣は記者会見で「金融行政に対する信頼を揺るがすのみならず、我が国の金融市場そのものの信用を揺るがすあってはならないことであり、大変遺憾に感じている」と述べました。金融庁幹部は「今後こうした事案が繰り返されることのないよう再発防止策に取り組み、我が国の金融行政と金融市場の信頼確保に尽力していく」と話しています。

 

この「再発防止」の具体策について、金融庁は以下の4項目を打ち出しました。

 

① 庁内隅々までの法令等遵守意識の浸透(特定の管理職について取引状況を把握)

② TOB審査担当者等による株取引禁止(内規改正による在任中の個別株取引の原則禁止)

③ 採用時・出向者受入時の確認の強化(事前面接の実施など)

④ PDCAの実践(年1回の確認など)

 

このうち法令遵守意識の浸透(①)の一環として、年明けには職員を対象にインサイダー取引などに関する研修を予定。オンラインが中心で、全職員に法令順守の誓約書を提出するよう求める見通しです。官民の双方で不祥事案が目立った昨年から心機一転、金融市場の信頼性向上に襟を正して取り組む姿勢をアピールする狙いも窺えます。

低リスク部署はほぼ現状維持

一方、職員の株取引を制限するルールに関しては、従来とそれほど大きく変わらないようにもみえます。

上記4項目の再発防止策うち、研修など啓発的な対応を別にして、実務上のルールを改正するのは2箇所。TOB審査担当者等による株取引の禁止と、インサイダー取引規制のあるリスクがある課の取引状況の把握です。後者については、職員の着任時にクリアランス(株式等取引の状況を把握)を実施し、管理職についてはその後も毎年冬、改めて取引状況の報告を受けるとしています。

 

もともと単に資産運用を目的として株を売買することは、一般職の国家公務員を対象とした兼業規制における「兼業」に該当しないことになっています。

そのうえで、金融庁の既存の内規では職員に対し、株式の信用取引と、6カ月以内の短期売買を原則禁じています。やむをえず信用取引や短期売買を行う場合や、同庁が所管する法人の株式を売買する必要がある場合には、事前報告や事前報告が求められます(iDeCoや、NISA積立枠利用は報告不要)。

 

要するに、金融庁に勤める全職員に適用されるルールについては現状を維持し、いわばリスクベースで、インサイダー取引の危険が大きい部署にのみ上乗せで制限をかけるという対応に落ち着いた格好です。処分対象者が出向者だったことや、そもそも職員による個別株の取引がそれほど活発でないとみられるといった事情が背景にあります。

 

再発防止策の公表に合わせて開かれた記者説明会では、性善説に立った現状ルールを維持する妥当性を疑問視する声も上がりました。同日には東京証券取引所の職員もインサイダー取引の疑いで監視委に告発されましたが、他の機関や事業者の摘発が「身内の不祥事から世間の目をそらすためか」…などとあらぬ疑いを招かぬよう、当局は民間事業者とともにいっそう襟を正す必要がありそうです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

SBI証券で“やはり強い”「オルカン」「S&P500」「FANG+」、一方で「ピークは7月末」で価格は横ばいの懸念も

finasee Pro 編集部

「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行

Ma-Do編集部

【プロはこう見る!投資信託の動向】
2025年4月の株価急落は変化のトリガー、米国株式への強烈な資金フローの向かう先とは?

Ma-Do編集部

金、暗号資産、日本の漫画・アニメに共通する「実質資産投資」の考え方とは?

Finasee編集部

特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを

Ma-Do編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【プロはこう見る!投資信託の動向】
2025年4月の株価急落は変化のトリガー、米国株式への強烈な資金フローの向かう先とは?
SBI証券で“やはり強い”「オルカン」「S&P500」「FANG+」、一方で「ピークは7月末」で価格は横ばいの懸念も
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
「ゴールベース資産管理」の実践を通じストックビジネスへの転換を加速させていく case of 足利銀行
NISAの再拡充で債券ファンド追加案が浮上 金融庁が税制改正要望を公表
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
社保審系会合でGPIFが「安定的収益を確保」実績を強調、オルタナティブ+インパクトの強化策に有識者から注文も
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉓
~米国投資信託最新事情
拡大続く米ETF市場、アクティブETFの本数はついにインデックスETF超え!
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの
NISAの再拡充で債券ファンド追加案が浮上 金融庁が税制改正要望を公表
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉓
~米国投資信託最新事情
拡大続く米ETF市場、アクティブETFの本数はついにインデックスETF超え!
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
特別対談/みずほ証券 浜本吉郎代表取締役社長×楽天証券 楠雄治代表取締役社長
提携から3年、価値観の相違に衝突する場面も
顧客が心地よく使えるシームレスなサービスを
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら