finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

まるで運用「プログレスレポート」みたいな販売「FDレポート」中間報告、外貨建て保険にどう切り込んだ?

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.04.16
会員限定
まるで運用「プログレスレポート」みたいな販売「FDレポート」中間報告、外貨建て保険にどう切り込んだ?

金融庁が3日、「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリングレポート」(FDレポート)の中間報告を公表しました。外貨建て一時払保険にフォーカスし、ターゲット型商品の乗り換えによる販売手数料の二重取りについて問題提起しています。販売、組成の両サイドに厳しく切り込み、業界からは一定の反発も予想されます。

「乗り換え時の手数料重複が収益押し下げ」

今回の調査では、2022年度の外貨建一時払保険、仕組預金の販売額を踏まえて27行・社の重点モニタリング対象を抽出。業態別内訳では、地銀グループ13先、主要行等6行、保険会社8社となっています。

外貨建て一時払い保険については、運用パフォーマンスと販売・管理態勢の両面から分析。パフォーマンスに関しては、運用が既に終了している商品のうち、継続期間2.5年のものと、5年以上のものに分けて、それぞれの年率トータルリターンと標準偏差(リスク)の関係を比較。運用が短期化すると、運用効率が低下する傾向があるとの見方を示しました。

損益の要素別分析では、収益のほとんどが円安効果で生み出され、市場価格調整や解約に伴って発生する費用などがトータルリターンを押し下げている傾向が見て取れます。

 

金融庁は、運用の短期化と収益押し下げの背景に、一時払保険の一種であるターゲット型保険をめぐる商慣行があるとみています。

ターゲット型保険は、たとえば「105%」「110%」などあらかじめ定めた目標値に運用成果が達した場合、円建ての終身保険などに移行します。今回の重点モニタリング先では、ターゲット型を中心に外貨建て一時払保険の購入後、4年で約6割の解約等が発生。「ターゲット型保険のほとんどが目標値に達すると解約され、同時に同一商品を同一顧客に販売する事例が多数発生している」と指摘しています。

また、購入時に契約期間に応じた販売手数料を支払ったうえで、途中解約して同種の商品を再購入した場合には「解約期間分の販売手数料が戻入されないため、顧客は二重に販売手数料等を支払うことになる」との認識を示しています。

 

ただ、中間報告の注釈でも触れられているとおり、調査対象の商品は運用期間がそれぞれ異なります。一般的に商品ごとの運用効率の比較は期間をそろえることが前提であり、同一テーブル上で優劣をつけること自体の是非について、事業者側からは反発も予想されます。

販売会社「等」を加えた理由は?

年1回ペースで公表されているFDレポートは、これまで、タイトルが少しずつ変化しつづけてきました。

当初のタイトルは「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」。昨年は投資信託だけでなく仕組債やファンドラップについても取り上げるようになり、冒頭の「投資信託等」がより幅広い商品を意味する「リスク性金融商品」に置き換えられました。

 

今年の中間報告タイトル(「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリングレポート」)は一見ほとんど昨年と同じようですが、よくみると「販売会社」のうしろに「等」が加えられています。

組成会社としての保険会社がモニタリング対象となっていることを反映した形です。組成側の課題についてはこれまで「資産運用高度化プログレスレポート」が取り扱ってきました。今回の中間報告には、プロダクトガバナンスの観点から組成・販売両面の課題を一体的に取り扱おうとする近年の政策運営の反映を見て取ることもできます。

 

さらに中間報告は、金融庁が外貨建債券についても検証を行っていることを明らかにしています。関係者によると当局は、仕組債に続いて通常の債券についても、事業者などが受け取る手数料の開示強化を求める構えです。FDレポートの最終版は今年6~7月ごろに公表される見込みです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #フィデューシャリー・デューティー

おすすめの記事

みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン

finasee Pro 編集部

【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?

森脇 ゆき

投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?

finasee Pro 編集部

FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ

川辺 和将

三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?
足利銀行の売れ筋トップはバランス型、米国株式ファンドのランクアップが目立つ
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
新生モーニングスター始動 投信のレーティングとアワードに「将来性」の評価軸を導入へ 日本子会社のチャン社長に聞く
投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?
滋賀銀行の売れ筋にみえる「打診買い」、新規ランクインファンドの中で他を圧倒するパフォーマンスを残しているのは?
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?
投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?
みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン
三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
「宇宙関連」と「世界半導体株」が抜け出した! 野村證券の売れ筋で目立つ米ハイテク株人気の復権
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
第12回運用資産に関わる常識を疑え!(その1)
銀行預金ではインフレに負けるから投資すべき?
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」
「顧客意向」を盾に取る釈明に「喝」!?新FDレポートの見逃せない5つのポイント
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
広島銀行の売れ筋トップ10から「S&P500」が消える。人気を高めているファンドの特徴とは?
足利銀行の売れ筋トップはバランス型、米国株式ファンドのランクアップが目立つ
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら