「乗り換え時の手数料重複が収益押し下げ」
今回の調査では、2022年度の外貨建一時払保険、仕組預金の販売額を踏まえて27行・社の重点モニタリング対象を抽出。業態別内訳では、地銀グループ13先、主要行等6行、保険会社8社となっています。
外貨建て一時払い保険については、運用パフォーマンスと販売・管理態勢の両面から分析。パフォーマンスに関しては、運用が既に終了している商品のうち、継続期間2.5年のものと、5年以上のものに分けて、それぞれの年率トータルリターンと標準偏差(リスク)の関係を比較。運用が短期化すると、運用効率が低下する傾向があるとの見方を示しました。
損益の要素別分析では、収益のほとんどが円安効果で生み出され、市場価格調整や解約に伴って発生する費用などがトータルリターンを押し下げている傾向が見て取れます。
金融庁は、運用の短期化と収益押し下げの背景に、一時払保険の一種であるターゲット型保険をめぐる商慣行があるとみています。
ターゲット型保険は、たとえば「105%」「110%」などあらかじめ定めた目標値に運用成果が達した場合、円建ての終身保険などに移行します。今回の重点モニタリング先では、ターゲット型を中心に外貨建て一時払保険の購入後、4年で約6割の解約等が発生。「ターゲット型保険のほとんどが目標値に達すると解約され、同時に同一商品を同一顧客に販売する事例が多数発生している」と指摘しています。
また、購入時に契約期間に応じた販売手数料を支払ったうえで、途中解約して同種の商品を再購入した場合には「解約期間分の販売手数料が戻入されないため、顧客は二重に販売手数料等を支払うことになる」との認識を示しています。
ただ、中間報告の注釈でも触れられているとおり、調査対象の商品は運用期間がそれぞれ異なります。一般的に商品ごとの運用効率の比較は期間をそろえることが前提であり、同一テーブル上で優劣をつけること自体の是非について、事業者側からは反発も予想されます。
販売会社「等」を加えた理由は?
年1回ペースで公表されているFDレポートは、これまで、タイトルが少しずつ変化しつづけてきました。
当初のタイトルは「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」。昨年は投資信託だけでなく仕組債やファンドラップについても取り上げるようになり、冒頭の「投資信託等」がより幅広い商品を意味する「リスク性金融商品」に置き換えられました。
今年の中間報告タイトル(「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリングレポート」)は一見ほとんど昨年と同じようですが、よくみると「販売会社」のうしろに「等」が加えられています。
組成会社としての保険会社がモニタリング対象となっていることを反映した形です。組成側の課題についてはこれまで「資産運用高度化プログレスレポート」が取り扱ってきました。今回の中間報告には、プロダクトガバナンスの観点から組成・販売両面の課題を一体的に取り扱おうとする近年の政策運営の反映を見て取ることもできます。
さらに中間報告は、金融庁が外貨建債券についても検証を行っていることを明らかにしています。関係者によると当局は、仕組債に続いて通常の債券についても、事業者などが受け取る手数料の開示強化を求める構えです。FDレポートの最終版は今年6~7月ごろに公表される見込みです。