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金融庁が公開した「大手グループ運用力向上取組リスト」を読む

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.02.20
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金融庁が公開した「大手グループ運用力向上取組リスト」を読む

金融庁は、運用力向上、ガバナンス強化などに関する大手金融機関グループの取り組みを一覧化し、公表しました。2月中旬までに、3メガ銀行グループや独立系証券2グループを含む13社がリスト入りしています。各グループの取組状況について、特にリテールビジネスと関連が強いテーマに着目しながらダイジェストで紹介します。

政府「立国プラン」と呼応

「運用力向上プラン」は、政府の新しい資本主義実現会議傘下「資産運用立国分科会」が昨年末に公表した「資産運用立国実現プラン」を通じ、当局が大手金融機関グループに作成を要請していました。

既存の「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)のリストと同じように、各グループが取組状況を公表している自社サイトのURLを金融庁に報告し、リストを通じて間接的に取り組みを公表するたてつけとなっています。

各グループにおける取組内容をみると、資産運用業の経営戦略上の位置づけの明確化や、オルタナティブ投資の拡充、新興運用事業者への積極的な出資など、「資産運用立国実現プラン」に呼応する項目が多く見受けられます。

メガ+証券、オルタナ拡充やEMPなど掲げる

(記事中社名はリスト掲載順)

大和証券グループは、「資産管理型ビジネスモデルへの移行」を経営戦略の柱として掲げると改めて明記。そのうえで、「今後一層リテールビジネスとアセットマネジメントビジネスに注力してまいります。 こうした経営戦略は、政策の方向性とも合致しており、「資産運用立国」の実現に向け、当社グループも積極的に貢献してまいります」と記載しています。

また、運用力向上のための施策として「新たなオルタナティブ商品の個人投資家への提供」を掲げ、具体的な実績として大和証券で取り扱っている外国籍投信「ダイワ・ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド」などの取り組みを挙げました。

 

野村ホールディングスは、資産運用ビジネスの位置づけについて「投資商品やサービス・ソリューションの供給源であり、その品質や品揃えがお客様の満足度や中長期的な資産拡大に直結する」と説明。グループとして「さらに積極的に経営資本・人的資本を追加投入することで、グループ経営における同部門の比重を高めていきます」と記しています。

また、開発力向上に向けた施策として、「インハウス運用の競争力向上のため、新規運用戦略やプロダクト開発、社内運用人材の育成、運用トラックレコードの獲得、などを目的としたシード投資や、新規領域および未進出地域への進出などを目的としたR&D(研究開発)投資に、2023年11月末時点で約850億円の資金を投じています。今後、グローバル水準の運用力獲得に向けて、これらの運用力開発を目的とした投資額を1,000億円超まで拡大していきます」と目標を掲げ、新興運用会社などとの更なる連携強化を打ち出しました。

 

みずほフィナンシャルグループは、資産運用立国について「「資産運用を行うこと」が日常生活ならびに経済活動に根付き、資産運用会社等の事業者が投資家である個人・アセットオーナーのためにプロフェッショナルとしての役割を全うし、産業として確立している状態」と定義し、「グループ全体で資産運用ビジネスの運営体制を構築し、資産運用立国の実現に貢献していきます」と強調しています。

そのうえで、「海外資産・オルタナティブ資産のインハウス運用力強化やプロダクトラインナップ拡充にも取り組んでいきます。さらに、地球環境・社会・経済のサステナビリティへの関心が高まる中、サステナブル投資への注力、スチュワードシップ活動の実効性向上にも取り組んでいきます」と説明しました。(プラン本文と同趣旨のリリースより抜粋)

 

三井住友フィナンシャルグループは、一連の施策を通じて「お客さまの多様なニーズに寄り添いながら最適なプランを提供する「資産運用ソリューションプロバイダー」への飛躍を実現します」と宣言。運用ポートフォリオの多様化のため、「SMBCの米州・欧州・アジア大洋州の各主要拠点が有するストラクチャードファイナンスに係る人財やノウハウ等を活用し、三井住友DSアセットマネジメントにおけるプライベートデット運用のグローバル展開を加速するほか、三井住友ファイナンス&リース株式会社が有する不動産や航空機等のオルタナティブ資産を投資商品に仕立て」るとしています。

また、グループの資産運用子会社を軸とするマルチブティック戦略の更なる強化に向けた「SMBCグループ版Emerging Manager Program」の導入を目指すと記載しています。

 

三菱UFJフィナンシャル・グループは、資産運用ビジネスについて「貯蓄から投資・資産形成の加速を通じ、「成長と資産所得の好循環」を創出、日本経済を活性化させる重要な取り組みであり、MUFGにとっても重要かつ中長期的な成長戦略の一つと位置付けています」と説明します。

そして、2030年3月末までに運用残高を100兆円から200兆円へ倍増するとの目標を打ち出し、三菱UFJアセットマネジメントについて銀行・信託・証券に次ぐ「第4の柱としてのポジションを確立」することを目指すとしました。また、運用力強化策としてプライベート領域を中心とした運用ケイパビリティの拡充、MUFG版グローバルEMPの策定、推進に取り組むとしています。

政府「立国プラン」と呼応

「運用力向上プラン」は、政府の新しい資本主義実現会議傘下「資産運用立国分科会」が昨年末に公表した「資産運用立国実現プラン」を通じ、当局が大手金融機関グループに作成を要請していました。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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