finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

2023年度中間期 地方銀行・第二地方銀行 決算ランキング
③利益関係動向

佐々木 城夛
佐々木 城夛
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
2023.12.15
会員限定
2023年度中間期 地方銀行・第二地方銀行 決算ランキング<br />③利益関係動向

10月27日より11月14日にかけて、地方銀行・第二地方銀行99行が順次今年度上期(9月末時点)の決算短信を公表した。銀行持株会社傘下の一部の子銀行には、今月下旬以降の決算公告時まで詳細な内訳の情報開示を行っていない先があるものの、これらの公表に伴って、概ね決算状況の定量的な把握が可能となった。

このため、12月4日時点での主要係数に関する定量分析をごく簡単に実施し、ランキング形式でできるだけ分かりやすくお伝えすることとしたい。最終回となる第3回目は、活動の結果もたらされた利益に関係する数値に着目させていただくこととしたい。

経常利益・中間純利益共に減少

前回・前々回同様、最初に合計値から概況を掴むこととしたい[図表1]。

 

業務純益に与信関連費用(信用コスト)や有価証券売買損益など臨時的に発生した損益を加減した経常利益は、銀行の通常活動から生じた利益を表すと言われる。99行の経常利益の合計額は7,763億円となり、前年同期比で3.42%縮小した。

その経常利益に、固定資産祖分損益や有価証券減損損失など臨時的に発生した特別損益分を加減し、さらに法人税などの税金を控除した金額が当期純利益で、最終的な収支となる。年間の丁度半分に当たる9月末(第二四半期末)の当期純利益は、一般的に中間純利益と呼ばれる。

99行の中間純利益の合計額は5,466億円となり、前年同期比で5.65%縮小した。

利益上位に関東地方・増減率下位に東北地方の銀行が多数

経常利益を金額順に並べ替えたところ、富山銀行・長野行を除く97行が黒字となった。

上位および下位の各々10行を抽出したところ、上位は全て地方銀行が占め、うち4行を千葉・東京・神奈川・茨城の関東4県が占めた[図表2]。

 

対照的に、下位は8行を第二地方銀行が占め、スケールメリットが数値に現れる形となった。黒字額が最も多かった第1位の静岡銀行と、最も少なかった第97位の長崎銀行の差は277倍に及んだ。

次に、中間純利益を金額順に並べ替えたところ、経常利益同様に富山銀行・長野銀行を除く97行が黒字となった[図表3]。

 

上位および下位の各々10行を抽出したところ、上位は、順位の入り繰りこそあるものの、経常利益と同一の顔触れとなった。下位も、9行が経常利益の顔触れと同一で、清水銀行と北都銀行だけが入れ替わった。黒字額が最も多かった第1位の千葉銀行と、最も少なかった第97位の長崎銀行の差は183倍となった。

さらに、増減率を数値順に並べ替えたところ、前年同期比で経常利益を増やしたのは上位40行と前年の赤字を黒字転換させたきらやか銀行・福邦銀行の2行を合わせた42行となり、57行が中間純利益を減らした。増減率の上位および下位の各々10行を抽出したところ、上位には5行、下位には3行の第二地方銀行が入る形となった[図表4]。

 

個別の顔触れでは、上位に、第1位の東京スター銀行、第5位の東日本銀行という東京の2行が入った。下位には、第88位の北都銀行、第89位のみちのく銀行、第91位の山形銀行、第95位の荘内銀行という東北3県の4行が入った。地域経済の格差が、銀行の決算に投影された可能性を見込む。

利益上位に関東地方・増減率下位に東北地方の銀行が多数

以上の背景を踏まえ、前回触れた「その他有価証券」の通算損益を中間純利益の倍額で割り、「抱えた含み損は稼ぐ力の何年分に当たるのか」を試算し、期間順に機械的に並べ替えた[図表5]。結果は全体の1割超に該当する状12先が解消に5年超を要する計算値となった。第1位から第5位までは、10年超に及んだ。

 

好調な株価等を背景に、その他有価証券の損益は対前年同期比でプラスとしたものの、これら51行ではなお含み損を残した形だ。債券価格を低下させる金利上昇の足音が聞こえる中、上位に位置付けられた銀行では、早期の含み損解消を強く意識されていることだろう。

既に青森・みちのく銀行や八十二・長野銀行が合併・経営統合の方向を公表しているものの、今後も銀行持株会社内の再編を含む事業の再構築が図られる可能性を見込む。

10月27日より11月14日にかけて、地方銀行・第二地方銀行99行が順次今年度上期(9月末時点)の決算短信を公表した。銀行持株会社傘下の一部の子銀行には、今月下旬以降の決算公告時まで詳細な内訳の情報開示を行っていない先があるものの、これらの公表に伴って、概ね決算状況の定量的な把握が可能となった。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #地銀
前の記事
2023年度中間期 地方銀行・第二地方銀行 決算ランキング
②有価証券投資関係動向
2023.12.14
次の記事
アセットマネジメント鵜の目鷹の目 第1回 機関投資家向け運用と比較した個人投資家向け運用の「理想像」
2023.12.26

おすすめの記事

福岡銀行で「225」人気が衰えた理由は? 「純金」、「USリート」と「世界半導体投資」が人気化

finasee Pro 編集部

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

森脇 ゆき

みずほ銀行の売れ筋トップ10で「バランス型」3本がランクイン、市場のトレンドは変化するのか?

finasee Pro 編集部

サステナ投資促進策は終わり?「仕分け」の対象になってしまうのか

川辺 和将

【ブルームバーグ寄稿】日本のAI規制関連が急展開 金融セクターにとってはまたとない機会に

ノーマン・L・トゥエイボーム

著者情報

佐々木 城夛
ささき じょうた
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
1967年東京生まれ。1990年慶應義塾大学法学部法律学科卒、信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室 長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。2023年6 月より現職。沼津信用金庫非常勤参与。 「ダイヤモンド・オンライン(ダイヤモンド社)」・「金融財政ビジネス(時事通信社)」ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理(近代セールス社)」ほか。HP アドレスは https://jota-sasaki.jimdosite.com/
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
福岡銀行で「225」人気が衰えた理由は? 「純金」、「USリート」と「世界半導体投資」が人気化
みずほ銀行の売れ筋トップ10で「バランス型」3本がランクイン、市場のトレンドは変化するのか?
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」
サステナ投資促進策は終わり?「仕分け」の対象になってしまうのか
【ブルームバーグ寄稿】日本のAI規制関連が急展開 金融セクターにとってはまたとない機会に
年金を含む資産データ「一元化」は夢物語? 自民党「デジタルニッポン2025」の曖昧な書きぶり
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
米国経済 Deep Insight 第11回
トランプ関税を上回る注目トピック 減税・歳出法案審議が本格化
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
三菱UFJ銀行の売れ筋で「日経225」の評価に変化、新規にトップ10入りしたファンドの特徴は?
年金を含む資産データ「一元化」は夢物語? 自民党「デジタルニッポン2025」の曖昧な書きぶり
トランプ関税の混乱後の新規設定ファンドは安定重視? 750億円超の設定額となったファンドとは? =25年5月新規設定ファンド
みずほ銀行の売れ筋トップ10で「バランス型」3本がランクイン、市場のトレンドは変化するのか?
サステナ投資促進策は終わり?「仕分け」の対象になってしまうのか
マン・グループの洞察シリーズ⑨
何をしたらよいか分からない時にどうすべきか?
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
三井住友銀行の売れ筋で突出したファンドとは? 欧州株の上昇で「MSCIコクサイ」に勢い
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
今月スタートした「投資運用関係業務受託業」を金融庁が激推し!金融機関に勤める中堅・若手の有望な移籍先に?
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
トランプ関税の混乱を横目に「戦略的自律」をめざす欧州企業に可能性、「テンバガー・ハンター・ヨーロッパ」の視点とは?
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら