finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

マーサーの資産運用部門トップに聞く
2023年の市場振り返り&今後のリスク要因は?

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2023.12.12
会員限定
マーサーの資産運用部門トップに聞く<br />2023年の市場振り返り&今後のリスク要因は?

歴史的なインフレと金利上昇による先行き不安でスタートした2023年も、もうじき終わろうとしている。今年を振り返りつつ、来年投資家が留意すべきリスク要因は何か? 世界的な資産運用コンサルティング会社、マーサーの資産運用部門でエグゼクティブ・ディレクターを務める、リッチ・ヌザム氏に話を聞いた。

                                                          
                                                                                           マーサー
                                                                             インベストメント部門 
                                                                        エグゼクティブ・ディレクター
                                                      グローバル・チーフ・インベストメント・ストラテジスト
                                                                                リッチ・ヌザム氏

――昨年来、マーケットを取り巻く環境が大きく変化しています。これまでの市場環境を振り返っていただけますか。

昨年末から今年の年初にかけて投資家の多くが注目していた主要なリスク要因として、次の3つがありました。1つ目は急速なインフレによる価格高騰のスパイラルに陥っている中で、金融・財政当局がそれをいかにコントロールしていくか。2つ目はロシアのウクライナに対する侵攻がどのような影響を及ぼすのか。具体的には原油価格、食料価格、特に欧州における消費者心理・企業心理にどのような影響を及ぼすのか。そして3つ目は、中国と世界各国の貿易相手国との関係がどうなっていくのか。

2020年以降、コロナ禍の発生を受けて各国がこぞって大規模な財政出動を行ったわけですが、インフレが進んだことで、景気後退に伴うスタグフレーションのリスクも警戒されるようになりました。それに加えてロシアのウクライナに対する侵攻が発生し、市場が想定していなかったショックが発生ました。それから今後の成長に関わる問題として、中国経済が思ったほどに回復していないことがリスク要因として浮上したわけです。

その一方で、楽観的なトピックが2つあります。1つは生成AIが実体経済にもたらすインパクトで、企業心理・投資家心理にどのような影響を及ぼすのかについてです。もちろんデジタル技術全般についていえることですが、特に生成AIの技術の行方には要注目でしょう。もう1つは新興国市場の成長です。必ずしも足並みが揃っているわけではありませんが、中国以外の新興諸国の市場の成長は、直接投資という意味でも有価証券投資という意味でも注目に値します。その中でも特に注目すべきはインド市場でしょう。

このように、およそ1年前は悲観と楽観が錯綜している状況でした。1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムでは、オブザーバーの半数以上が景気後退を予想していましたが、その後、見立てが変わって今ではソフトランディングがメインシナリオになっています。それから経済成長率、消費者心理、企業心理も好転しています。雇用状況も下支えされており、賃金のスパイラル的な上昇もコントロールされつつあります。

実際、S&P500指数は年初来2桁のプラスリターンですし、VIX指数といったフォワードルッキングな指標を見ても安定した推移となっており、ボラティリティは低い水準で推移するだろうとの見立てです。実体経済、相場のオポチュニティという意味では総じて良い環境といえるのではないでしょうか。

 

――2023年の初めに警戒されていたリスク要因が解消されつつあるとのことですが、そうした環境下で投資家はどんな点に注意を払うべきでしょうか。

今の環境だから、というわけではありませんが、常に投資家が留意すべきは「分散」です。そのうえで、次なる危機への備えを進めることも大切です。分散という意味でアセットクラスとして注目されているのはプライベートクレジットやインフラストラクチャー投資です。また、新しい資金が不動産に向かっており、ヘッジファンドも見直されつつあります。

次なる危機への備えという点では、資金規模が大きく高度な運用を手がける投資家の多くは、オポチュニスティックな投資機会をうかがっています。すなわち、いざ危機が発生したときに、何をどう買っていくかについて、平時から考えているということです。

この20年あまりでもさまざまな危機がありました。もっとも象徴的なものが2008年の世界金融危機ですが、直近でも2020年2月のコロナ危機、さらに昨年9月の英国のLDIショック(英国債の急落を発端に発生)があります。時間軸で考えると、世界金融危機は2007年のサブプライムローン問題の発覚から月単位で影響が拡大していきましたが、2020年のコロナ危機は週単位へと短期化し、昨年のLDIショックではその間隔がさらに短くなりました。したがって、オポチュニスティックな投資機会を狙うならば、平時から備えを怠らず、いざという時に即座に動く必要があります。さもなければ、買いたいものを買えない時代です。

 

――それでは、投資家が留意すべきリスクイベントを挙げるとすれば何でしょうか。

ここまでのマーケットの環境は予想に反して良好に推移してきたわけですが、それがいまだに信じられません。毎朝起きて各種指標のチェックをするときに、頬をつねって「本当にこれが現実か?」と疑ってしまうほど、私も日々ナーバスになっています。

経済は順調に推移しソフトランディングが囁かれるようになっていますし、金利のある世界が復活したことで債券投資でもリターンがきちんと取れる環境が戻ったことは、財政当局、金融当局の手柄といえるのではないでしょうか。そうした中、金利高によって世界経済に何かひび割れが生じ、それがシステミックリスクへと発展しないか、注視しています。長らく資本コストがゼロであったことで、ビジネスにもレバレッジを掛けることができました。しかし金利のある世界が復活し、短期でも、長期でも金利が上昇しています。春先には米国の地銀破綻やクレディ・スイスの経営問題といったミニ金融危機も発生しました。また中国は景気が下方スパイラルに入っているとの観測の中、不動産市場の先行きも懸念されています。このように危機の火種のようなものは随所に見受けられるものの、今のところ世界経済は強靭さが保たれています。

仮にブラックスワンが起きるとすれば、未知のリスクから発生します。したがってシナリオをプランニングしても結局カバーできるのは既知のリスクのみです。しかし既知のリスクに対して頑健性のあるポートフォリオを構築しておくことで、未知のリスクに対してもある程度備えることができるでしょう。

                                                          
                                                                                           マーサー
                                                                             インベストメント部門 
                                                                        エグゼクティブ・ディレクター
                                                      グローバル・チーフ・インベストメント・ストラテジスト
                                                                                リッチ・ヌザム氏

――昨年来、マーケットを取り巻く環境が大きく変化しています。これまでの市場環境を振り返っていただけますか。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #マーサー
  • #マーケット情報

おすすめの記事

野村證券で「S&P500」人気が後退、「日経225」「グロース・オポチュニティ」「情報エレクトロニク」「宇宙」がランクアップ

finasee Pro 編集部

マン・グループの洞察シリーズ⑲
AI投資ブーム:いずれ調整を余儀なくされる

「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

文月つむぎ

【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは

佐々木 城夛

デジタル時代における地方銀行の勝ち筋
- アンケートから読み解く顧客行動とAI活用の方向性 -

生井澤 浩

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
マン・グループの洞察シリーズ⑲
AI投資ブーム:いずれ調整を余儀なくされる
「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは
野村證券で「S&P500」人気が後退、「日経225」「グロース・オポチュニティ」「情報エレクトロニク」「宇宙」がランクアップ
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
投信資金流入動向、オルカンとS&P500は2大巨頭だが…TOP10入りの中で注目したい4本の共通点とその理由
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
デジタル時代における地方銀行の勝ち筋
- アンケートから読み解く顧客行動とAI活用の方向性 -
立教大学教授 三谷進氏に聞く―約100年の歴史を誇る米国の投信市場から、日本の投信市場が学び、超えていくべきポイントは何か
【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは
「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

デジタル時代における地方銀行の勝ち筋
- アンケートから読み解く顧客行動とAI活用の方向性 -
顧客利益の最善を追求し、人生の質を高めることが IFA業界の発展と社会貢献につながる
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
マネックス証券で「オルカン」「S&P500」から「日経225」「日経半導体株」へのシフトが強まる、約40年ぶりの「円安」も一因
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
投信資金流入動向、オルカンとS&P500は2大巨頭だが…TOP10入りの中で注目したい4本の共通点とその理由
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
楽天証券の売れ筋は「国内株」に回帰、国内の「半導体関連株」はケタ違いの上昇率に
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
【金融風土記】一筋縄ではいかない「晴れの国」、岡山県の金融動向とは
政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ
「骨太の方針・日本成長戦略」と家計の資産形成――問われる「貯蓄から投資へ」の先

顧客利益の最善を追求し、人生の質を高めることが IFA業界の発展と社会貢献につながる
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
デジタル時代における地方銀行の勝ち筋
- アンケートから読み解く顧客行動とAI活用の方向性 -
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら