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地域金融機関のファンド投資最新動向2023(後編)

伝統資産とオルタナティブをどう共存させるか

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2023.11.29
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地域金融機関のファンド投資最新動向2023(後編)

2022年、海外ではインフレと度重なる金融引き締めが大きな話題になったが、市場は2023年も引き続きこのテーマに惑わされている。23年後半には物価も落ち着き景気が減速していくと見られていた米国経済は想定以上に底堅く、そのために金融政策も見通せない状況だ。 海外発の物価と金利の上昇を受けて、国内でも消費者物価指数の上昇とそれに伴う金融政策正常化の可能性が浮上している。身動きが取りにくい環境にあって、地域金融機関の運用は大きな困難に直面していると言えるだろう。 こうした背景から、地域金融機関の間でも注目される戦略について、伝統資産からオルタナティブ資産まで幅広く関係者に話を聞き、運用難にあえぐ機関投資家が取り得る方策を探っていく。

前編はこちらから
 

▪株式・J-REIT

株式についても、債券同様に悩ましい環境が続いている。日経平均株価は2022年の下落から回復し、バブル期以来の3万3000円に達したことで市場関係者を沸かせた。背景には東証の市場改革や外国株対比での割安感、海外著名投資家の日本株への注目などさまざまあり、米長期金利の動向や地政学リスクの高まりによって上下する展開になっている。

藤澤氏は、「このタイミングであえて株式を積み増すよりは、マネジャーの投資判断で銘柄を選別するアクティブ投資をポートフォリオの一部に組み入れる形で投資が進んでいます。その中でも、インカムを重視して高配当株が狙えるバリュー戦略、バリューやグロースといった戦略を相場に合わせて変更するスタイルフリー戦略、さらにESGなど特定のテーマに絞った戦略などが選好されています」と現状を語る。

J-REITに関しては、円建てで4%程度の利回りを狙える資産として引き続き魅力ある投資対象ではあるものの、やはり気がかりなのが国内の金利上昇リスクだ。債券同様にこの部分に対して何らかの手立てがあれば、十分に投資は検討できるだろう。

前田氏は、「J-REIT銘柄の多くは月末に配当の権利落ち日が集中しているため、月末に向けて売り圧力が減少するという傾向があります。このようなアノマリーを利用し、月初から月中までの期間はレバレッジを抑制し、月中から月末にかけてはレバレッジをかけるというルールベースの運用を行うことで、配当を受け取りつつ、安定したパフォーマンスを維持するといった手法も考えられます」と語っている。

進化を遂げたマルチアセット戦略やオルタナティブ投資で収益を狙う

▪マルチアセット戦略

2016年のマイナス金利政策導入以降、債券投資に代わる安定資産の1つとして人気を博してきたマルチアセット戦略は、2022年の市場環境では株式と債券の分散効果が発揮できず、多くの戦略が苦戦を強いられた。

こうした背景から、新規の投資・検討については慎重な姿勢を取る投資家が大宗を占めている。その一方で、株式が組み入れられていたために2023年の反発を捉え、単純なヘッジ付き外債ファンドよりもリターンが回復していることは救いだったかもしれない。そうした状況もあって、一部の投資家では再評価が進んでいるようだ。

もっとも、マルチアセット戦略のマネジャーも、従来のように株式と債券の分散のみに頼った戦略の提案に終始しているわけではない。2022年においても機能していた金利と為替の相関に注目して為替を組み入れたり、ショートポジションやデリバティブを駆使したりして、マルチアセット戦略であっても従来の投資対象や手法にとどまらない形に進化を遂げている(図2)。

 

▪オルタナティブ投資

2022年にも注目を集めたオプション・プレミアム戦略は、各社ともに引き続きニーズが高いと見ていて、市場の変動にさらされる中でより地域金融機関のニーズに応えられるよう、マルチアセット戦略と同様に戦略のアップデートがなされている。

一時期流行したデリバティブ活用戦略には、市場の変動が大きいとマイナスに傾いてしまったり、権利行使されるかもしれないピンリスクが集中してしまうというケースもあった。「こうした過去の経験を生かし、近年提供されるオプション・プレミアム戦略にはデルタヘッジを組み入れたり、満期までの期間の短期化や分散化を図ったりすることで、よりリスクの低減を図る戦略が開発されてきました。これにより、市場変動の影響を限定的にしつつインカムをコツコツと稼ぐことが可能になっています」と、SMBC日興証券の前田氏は語る。

こうしたオプション戦略に取り組むためは、主に米国市場にアクセスして膨大な取引量に対応しなければならない。それを地域金融機関が独自で行うのは実務上困難であり、ファンドを活用することの意義は大きいだろう。

このほか、オルタナティブ投資の一角を占めるプライベートアセットの中では、PDやインフラといった安定インカムが見込める資産のニーズが高まっていることはすでに指摘した。ただし、すべての投資家がこの分野に踏み込めているわけではなく、特にPDについては過去に海外のバンクローンやCLOなどに投資経験があり、海外クレジット資産に馴染みのある投資家が対象を一歩拡張させて関心を移してきているようだ。

PDの投資先は基本的に格付けのない企業への融資になるため、景気減速期に差し掛かるこのタイミングでの投資には懸念もある。ただ、海外で見られる資本規制に伴う銀行融資の減少や、米国地方銀行の経営不安などを受けてファンドの存在感がいっそう増してきており、競争環境の緩和によって貸し手優位の状況が続いている。
これは、投資家にとっては歓迎される点だろう。

また投資先の選定においても、プライベートエクイティ(PE)スポンサー付きの案件であれば、PEマネジャーが企業の収益性や将来性をチェックし、さらにPDマネジャーがデューデリジェンスを実行する。つまりマネジャーを適切に選べば、今後も安定したインカムの獲得が期待できるだろう。

もっとも、海外プライベートアセット投資を進めるには、投資家サイドにも十分な体制の構築が不可欠だ。その意味では、すでにプライベートアセットにおける投資経験を有しており、リスク管理やサポート面での専門知識があるゲートキーパーなどを活用することも手段の1つだろう。

一方、国内のプライベートアセットには投資機会がないかと言えば決してそうではなく、PEに関してはすでに投資を実行しているケースもあるようだ。プライベートアセットへの投資を考えれば、当然、国内のほうがハードルは低くなる。

またインフラも、国内の新たなプライベートアセット投資の機会として挙げられる。SMTBの投資家企画部で統括主任調査役の片岡俊輔氏は国内インフラの現状について、「インフラ投資と言えば国内投資家が海外市場へ向かう『内から外へ』の資金フローが一般的でしたが、『内から内へ』の投資機会が広がりつつあり、実際にそれを捉える戦略も動き出しています」と語っており、同社では国内インフラを投資対象とするファンドの運用を開始したところだ。

三井住友信託銀行 投資家企画部 統括主任調査役 片岡俊輔氏

脱炭素社会構築に向けた再生可能エネルギーの普及やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのデータセンターなど、国内の社会課題を解決するために必要なインフラを整備するには、官だけの資金では不十分。こうした機会を捉えて、国内のインフラファンドが立ち上がったことは、政権が目指す「資産運用立国」の実現にもかなうものだろう。

「近年、金融機関の間では経済的リターンだけではなくESGやサステナビリティを考慮した資金拠出が求められていますが、これらの観点からも国内インフラは投資に値するのではないでしょうか」(片岡氏)。

経済・金融市場の先行きを見通すことはますます困難になっているが、流動性の有無に関わらず新たな投資機会が発掘され、過去の経験を活かした戦略が開発されている。今回紹介した戦略以外にも、外部の専門家は豊富な選択肢を有しているはずで、金融機関それぞれの悩みを打ち明ければ的確なソリューションを提供してくれるに違いない。
 

 

前編はこちらから
 

▪株式・J-REIT

株式についても、債券同様に悩ましい環境が続いている。日経平均株価は2022年の下落から回復し、バブル期以来の3万3000円に達したことで市場関係者を沸かせた。背景には東証の市場改革や外国株対比での割安感、海外著名投資家の日本株への注目などさまざまあり、米長期金利の動向や地政学リスクの高まりによって上下する展開になっている。

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