生徒たちが挑む文化祭の屋台

文化祭が始まると、校庭に並んだ模擬店は一気に賑やかになった。由美が受け持っているクラスが出した焼きそば屋台にも、開店して間もなく客が集まり始める。鉄板の上で麺が音を立て、ソースの香りが辺りに漂っていた。

「先生、どう? 俺、結構うまくないすか?」

調理担当の男子生徒が、出来上がった焼きそばを得意げに見せる。確かに見た目は悪くない。ただし、容器から麺がはみ出しそうなほど山盛りだった。

「盛りすぎ。そんな調子じゃ、すぐに材料なくなるよ」

「サービスですよ」

「あとで足りなくなっても知らないからね」

由美が笑いながら釘を刺す横では、呼び込み担当の生徒たちが声を張り上げていた。普通に宣伝すればいいものを、いつの間にか誰が一番客を呼べるか競争になっている。由美は何度か声を抑えるよう注意したものの、本人たちはすっかりお祭り気分だった。

ところが昼が近づくと、笑って眺めている余裕はなくなった。テントの前には常に行列ができ、焼いても焼いても注文が途切れない。

「先生、割り箸がもうないです!」

「こっちもキャベツ、あとちょっとしかありません!」

「やばい! ソースも足りなくなりそう!」

立て続けに呼ばれ、由美は慌てて在庫を確認した。朝の時点では十分だと思っていた食材も備品も、予想をはるかに上回る勢いで減っている。

「キャベツと麺、それから割り箸。ソースも追加したほうがいいね」

「俺、買ってきます!」

「あっ、1人で行かないで。何人か連れてって。あと、レシートはちゃんと残しておいてよ」

「はーい! ダッシュで行ってきます!」

生徒数人を近くの店へ送り出すと、そのぶん屋台に残る人数が減った。すると呼び込みをしていた生徒が列の整理へ回り、商品の受け渡しをしていた生徒も鉄板の前へ立つ。あとはもう担当などあってないようなもので、手の空いた者が目についた仕事を拾う状態になっていった。

「先生、注文お願いします!」

「えっ、私?」

「今、そこ誰もいないんです!」

由美は息つく間もなく客の注文を取った。続いて空いた容器を運び、その途中で別の生徒から足りない備品の補充を頼まれる。目まぐるしくテントの内外を行ったり来たりしていると、買い出し組が戻り、追加の食材が鉄板へ運ばれる。どうにか販売を続けるうち、午後になってようやく客足が落ち着いてきた。

「やばかったね。こんなにお客さん来ると思わなかった」

「でも、めっちゃ売れたよな」

「先生も途中から普通に店員でしたよね」

「ほんとだよ。みんな、人使いが荒いんだから」

生徒たちから笑い声が上がる。額に汗を浮かべ、疲れた顔をしているのに、どこか誇らしげだ。

由美は、テントの外を見渡しながら、ようやく息をついた。予定どおりには何一つ進まなかったが、互いに声を掛け合って乗り切った嵐のような時間は、何とも文化祭らしかった。