シンガポール発の保険専門テック企業・ボルトテックジャパン(東京都千代田区)が主催するセミナーに登壇した篠原氏は、ビッグモーター事件をはじめとする業界内の一連の不祥事に言及。金融庁の着眼点が形式的な「体制」から、運用実態としての「態勢」へと移行しているとの分析を示し、次のように述べました。
「全ての行政処分に共通しているのは、『ルールがある、人がいる』だけではダメだというメッセージだ。ルールが有効かどうか、資質・能力を備えた人が役職を果たしているかが焦点となっている。経営管理で言えば、会議体を作ったのにそこで議論しないで、一部のメンバーによる非公式な会で経営方針が決められるなど、実が伴ってないことが問題視される。経営陣が業法に対する十分な知見も持ち、内部統制に関する議論をちゃんと行うことが求められている」
6月1日に改正保険業法が施行されたものの、業界内で最も注目されている比較推奨ルールの厳格化の部分については、肝心の施行規則の施行タイミングが未定となっています。
これまでの施行規則では、代理店都合で商品を絞り込むことができる「ハ方式」という項目がありました。改正によってこのハ方式が撤廃され、顧客の意向を把握しながら提案する「ロ方式」に実質的に一本化されることが決まっています。
篠原氏は比較推奨に関する部分の施行タイミングが「1年後」との見通しを提示し、複数の商品から最終的に顧客が契約した商品に絞り込んだ経緯や合理的な理由を記録しておく必要が生じると指摘。その上で、「比較推奨の新ルールに合わせたシステムを組み立てようとすれば、ベンダーと調整して導入し、業務フローや社内規則に落とし込んで研修を実施し、検証するまで1年ほど掛けなければ難しく、具体的な行動に移る必要が既に生じている。施行時期が(公式発表としては)『未定』であることにはこうしたメッセージがあると受け止めていただく必要があると思う」と述べました。
生損保ともに激化する「サービス競争」
元イオン・アリアンツ生命社長の野口氏は、保険業界の直近の動向を解説。同氏によると、ビッグモーター事件などを機に業界構造そのものが批判の的となる風潮の中で、生保・損保各社は収益基盤の強化・再構築に動いているといいます。
近年の傾向として、「昔は商品が主でサービスが従だったが、最近はサービスを主にして商品を従にする会社も出てきている」と野口氏は指摘します。
「生保も損保もサービスが多様化し、競争が激化している。商品の差別化が難しくなる中で、保険料のうち半分ぐらいをサービスの提供に費やし、サービスで商品を売ろうとする会社もある。生保業界では、サービスで売上を拡大する方向で社内の目標設定をしている保険会社もあるという話も聞こえており、損保についても同じようなことが起きるだろうなと思っている」
他業種のサービスに保険機能を提供する「組込型保険」の注目度が業界内で高まっている背景について、次のように分析します。
「『入りませんか』と聞かれても保険なんでだいたい誰も入りたくないものだが、必要なサービスのオプションとして保険があると選びやすい。クレジットカードの盗難、スマホの画面の損傷や水没など、一般のサービスに組み込まれた保険は、単に売りやすい側面があるだけでなく、契約者側が保険を悪用するモラルリスクが生じにくいというメリットもある。保険に入ること自体ではなく、何か特定のサービスを得ることを目的として契約する層は悪さをする蓋然性が低く、リスクを抑えられるとあって、大手の生損保がかなり力を入れて取り組んでいるところだ」
