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未来予想図

【プロが解説】2025年度 統合報告書審査を終えて― 企業価値向上に向けた評価視点と今後の課題

古川 輝之
古川 輝之
コモンズ投信 運用部 アナリスト
2026.01.20
会員限定
【プロが解説】2025年度 統合報告書審査を終えて― 企業価値向上に向けた評価視点と今後の課題

日本の新しい国づくりに向け“変化を始めた企業”、“変化にチャレンジする企業”を中心に、中長期的な視点で厳選した国内株式を主な投資対象とする、コモンズ投信のアクティブファンド「ザ・2020ビジョン」。その月次レポートから、アナリストによるコラムをご紹介します。
※本稿は「ザ・2020ビジョン」月次レポート(作成基準日 2025年12月30日)内『未来予想図』を転載・再編集したものです。

統合報告書から読み解く企業のレジリエンスと、従業員のエンゲージメント向上が企業価値に結びつく過程

毎年恒例行事になっておりますが、日本経済新聞社主催『日経統合報告書アワード2025』の審査(以下、本件とする)を 終えましたので、気づきや感想をふまえてお伝えしたいと思います。
あらためて、統合報告書とは投資家をはじめとした様々なステークホルダーに発信する為に編成された対話ツールです。 その中では、トップメッセージ、経営戦略・人財戦略、サステナビリティ等の観点を包含したうえで中長期の企業価値向上の考え方を整理し、ステークホルダーとの対話を通じてその実現可能性を高めていくためのツールと理解しております。

上記の統合報告書の性質をふまえたうえで、様々な設問がある中で特に重視して確認したポイントは、人財育成、特に従業員エンゲージメント向上への本気度です。つまり、トップメッセージとして発信しているか、その本気度はKPI※1又はKPIとはしないまでも重要性が高い取組みとして力を注ぐことになっているか、といった観点です。特に重視することとした背景は、従業員エンゲージメント向上の取組みが企業価値向上に帰結するからです。事実、ここ数年で同取組みが企業業績(≒企業価値)に貢献し、株価評価が高まった企業を目の当たりにしている為です。いわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)のSで語られる同取組みが、業績貢献と関連性をもって投資判断されている方は少ないかもしれません。企業のレジリエンス(≒困難な事業環境に陥った時に、その困難を克服する力)を確かめるうえであらためて大事にすべき観点です。

企業側の努力と真面目さを垣間見た観点では、ESG(環境・社会・ガバナンス)設問については、どの企業も相対的に遜色ないレベル、逆の言い方をすると差別化しにくいレベルまで開示の充実がみられました。一方で、複数の企業で特に目立 った取り組みはTNFD※2の開示がなされ、経営の感度の差を感じました。本件を通じて俯瞰してみますと高得点企業の共通点がありました。トップメッセージに具体性があり人財育成・投資強化等を通じて株価向上のコミットを謳っていることでした。株価向上については今期より付加された設問でしたが、しっかりと市場の期待値を探りコミュニケーションしている企業が評価されるという事だと思います。また、コーポレートガバナンスコードの改訂も近く行われる中で株価向上への意志がこれまで以上により鮮明でなければならないという事だと考えます。

最後に今後の課題2点について述べたいと思います。1つ目は企業理念の深堀りとその背景にある物語の説明です。企業理念の設問は審査対象全ての企業について低評価となりました。各社の企業理念自体は理解できますし、ホームページにも記載されていますが、その背景にある物語の説明や、厳しい事業環境時にその理念をもとにどのような取組みがなされたのか等、泥臭い企業の生き様がもっと垣間見えてもよいと考える為です。まさに冒頭で申し上げたレジリエンスにも直結する話だと考えます。2つ目は謙虚さの再確認です。私は製造業を主に審査をしましたが、グローバルに競争環境が深刻になっている中、その脅威を連想させる記述がほとんど見当たらず、リアルな現場での・課題・打ち手・実行においてその危機感が薄い印象を受けた為です。

統合報告書の性質は冒頭の通りですが、世の中には短期の動向を注視する投資家も一定数存在します。こうした背景を踏まえ、あえて統合報告書を「伏線回収のツール」として活用したらどうでしょうか。決算発表では業績、特に短期をメインに議論がなされるわけで、それ以外の人財や企業理念等の話はほぼなされません。普段議論されないこれら人財や企業理念等の論点を統合報告書に散りばめて、業績貢献した際にはきちんと決算発表で説明し伏線回収していく。そうすることで、統合報告書への関心が高まり、新規投資家層の開拓に繋がり、その投資家層の中に中長期の投資家も現れ、より中長期の議論が出来るようになり、経営の視座が高くなり、長期目線に変われるのではと考えます。

統合報告書の発刊にあたっては、社長、IR、関係各署、海外グループ会社、ディスクロージャーサービス会社、コンサルティング会社、企業予算、通年に近い時間等、様々なリソースが割かれています。その配分が完成度にも少なからず影響する為、豊富なリソースを有する企業だけが高評価になり過ぎないように思いを馳せて審査したつもりです。

あらためて、関係者の方々のご尽力に感謝申し上げるとともに、本件を通じて得た気づきを大切に、今後も長期目線で企業との対話や様々なイベントに向き合っていきたいと思います。

※1:KPI=Key Performance Indicatorの頭文字≒重要評価指標、※2:TNFD=Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの頭文字=自然関連財務情報開示タスクフォース

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コモンズ投信 運用部 アナリスト
日東電工はじめ、国内の事業会社にて経理、財務、IRに従事。2022年5月にコモンズ投信に入社。現在は機械セクター中心に幅広くリサーチ活動に従事。
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