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2026年、日米金融政策の「中立金利」探索の行方とマーケットを揺るがす3つのリスク 楽天証券経済研究所・愛宕伸康氏に聞く

finasee Pro 編集部
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2026.01.08
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2026年、日米金融政策の「中立金利」探索の行方とマーケットを揺るがす3つのリスク 楽天証券経済研究所・愛宕伸康氏に聞く
2025年の金融市場は波乱含みの展開となった。世界経済は米国第2次トランプ政権による保護主義的な通商政策が関税ショックを引き起こし世界を翻弄。国内では日銀が追加利上げを実施し、金融正常化を推進。春闘では2年連続5%台という高い賃上げ率を達成したものの継続的な物価高は消費者生活に色濃く影を落とし続けている。10月には初の女性総理となる高市政権が誕生。株式市場は活況を呈する一方、インフレと金利上昇圧力は継続している。世界株はAI投資に牽引され、国内株は日経平均が史上初の5万円台を突破し過去最高を更新。新NISA投資家にも大きな影響を与えた。2025年の流れを受け、投資家は2026年にどう挑むべきか。世界経済、金融市場の見通しについて楽天証券経済研究所の所長兼チーフエコノミスト、愛宕伸康氏に聞いた。

リセッション懸念から一転した米国経済が象徴した2025年の世界経済

――2025年を振り返って、世界経済および金融市場の主な動き、流れは?

2025年前半の世界経済は崩れそうで崩れない展開となった。それを象徴したのが米国経済。もともとソフトランディングをベースシナリオとしていたが、2025年1~3月期の3年振りとなるマイナス成長や4月のトランプ関税ショック※を受けて、年後半の景気後退入りが懸念された。

しかし、新型コロナ禍での現金給付による過剰貯蓄が残存する中、2024年後半以降の米連邦準備理事会(FRB)の利下げ効果もあって株価は上昇基調を回復。年後半にかけて、株価上昇による個人金融資産の拡大が4~6月期以降の高成長につながり、それがさらなる株価上昇につながるというアクセルの効いた展開となった。

※(注)トランプ関税ショック…米トランプ大統領が2025年4月2日に発表した相互関税をきっかけで各国株価が暴落したショック。発表された相互関税はすべての国・地域に対し10%の「基本税率」をかけたうえで、各国・地域が課している税率(「為替操作や貿易障壁を含む」)をもとに、それと同水準まで関税率を引き上げるための「上乗せ税率」を設定するというもの。トランプ大統領が「割引した相互関税」と言った上乗せ税率は、日本24%、欧州連合(EU)20%、中国34%、インド26%、韓国25%など。発表後の3日間(3日~7日)でニューヨークダウ工業株30種平均は4,259.7ドル(10.1%)、日経平均株価は4,589円(12.8%)の急落となった。

米国の次回利下げはパウエル議長退任後の6月か

――2026年の世界経済の見通しは?

2026年の世界経済の成長率見通し(IMFベース)は3.3%(2024年3.3%、2025年3.2%)を見込んでいる。2026年の米国実質GDPは前年後半の高成長によるベース効果から、2.0%を超える成長が見込まれる。

FRBでは、雇用情勢に悪化の兆しが見られることから2025年9月以降3回続けて利下げを実施した。その結果、現在の政策金利(FF金利の誘導目標)は3.5%~3.75%になったが、パウエル議長は「中立金利の推定の範囲内に入ってきた」と述べ、今後は経済・物価への影響を慎重に確認しながら利下げの是非を判断する構えを強調している。

中立金利とは、景気に対して緩和的でも引き締め的でもない政策金利のこと。実際には観察できない概念上の金利であり、推計方法によって結果にばらつきがあるため、金融政策実務においては、実際の経済・物価の反応を確認しながら探るしかないというのが現実だ。

現在のFRBの中立金利に対する見方を、金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者19人の見通しの中央値で見ると3.0%。しかし、その不確実性は極めて高く、2026年の金融政策運営はかなり慎重なものになることが予想される。次回利下げは、今のところパウエル議長が退任した後の6月になるとみている。

日銀「緩やかな利上げ」継続、そのぺースの焦点は?

――2026年の日本経済の見通しは?

2026年の日本経済は、高いインフレが持続するもとでも、名目賃金が高い伸びを維持することによって緩やかな拡大を続けるとみている。雇用環境が崩れず、かつ名目賃金が上昇している環境下で日本経済が景気後退に陥ったことはこれまでない。日本銀行は緩やかな利上げを続けるだろう。2025年12月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを実施した結果、政策金利は0.75%になった。将来的には、物価安定の目標2%が持続的・安定的に実現したと判断できる段階で、1.5%程度まで政策金利が上がっていることを想定している。

ただし、そこに到達するまでの利上げペースについては、次の2つの要因が大きく影響するだろう。1つは中立金利の水準である。日銀にとっても中立金利が何%程度かは重要で、現在「1.0%~2.5%」との言い方をしているが、FRBと同様、そのうち景気・物価に対する影響を慎重に見極めながら政策金利の適切な居所を探る段階に入って行く。政策金利を1%にするまではこれまでの半年に1回ペースを維持し、次回利上げは6月か7月と想定している。しかし、それ以降は判断が慎重化してペースが鈍るだろう。

2つ目は為替である。円安が過度に進めばコストプッシュ型のインフレを助長する。日銀は原則として為替を直接の理由に政策変更はしないが、1ドル150円台後半より円安になるようであれば利上げを実施する可能性が高まる。こうした為替要因も利上げペースに大きな影響を及ぼすとみている。

2026年、3つのリスク要因とは?

――2026年のマーケット展望は?

日本の長期金利(10年物)は、短期金利、景気指標、インフレ率、日銀の国債買入れなどによって推計すると、2026年は2%台が普通に出てくる。過去における政策金利と10年金利とのスプレッドを見ても、現在と似たような環境では1.3%程度であり、政策金利の0.75%に1.3%を足せばその時点ですでに2%程度が想定でき、政策金利が1.0%になれば10年金利は2%台半ば、場合によっては後半が想定される。日経平均株価は5万円台後半に向けて上昇して行くと予想している。

リスクは3つ。1つ目はインフレが予想以上に上振れるリスクである。高市政権による「責任ある積極財政」(財政支出を使った高圧経済政策)が予想以上にインフレを高めることになれば、長期金利がその分上振れ、景気に悪影響が出かねない。

2つ目は、財政リスクを意識して長期金利が不規則に跳ね上がるリスク。日本の財政が破綻するとは見ていないが、債券市場が過度に財政リスクを意識して一時的にでも需給バランスが崩れれば、長期金利が跳ね上がる可能性はある。

3つめが米国株価の調整。個人の金融資産に占める株式の割合がITバブルのころを大きく超えて拡大する中、一時的な調整局面が生じるリスクには注意しておきたい。

楽天証券経済研究所
チーフエコノミスト
愛宕 伸康氏

 

神戸大大学院経済学研究科修了後、1991年日本銀行に入行。政策委員会審議委員スタッフ、物価統計課長、日本経済研究センター主任研究員(チーフフォーキャスター、出向)、横浜国立大学派遣講師、人材開発課長などを歴任。岡三証券チーフエコノミスト、いちよし証券上席執行役員チーフエコノミスト(東京財団政策研究所主席研究員なども兼任)を経て、2023年10月より現職。著書に『日本経済 30の論点』(日本経済新聞出版、共著)等。

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