「政府・日銀本音トーク~新時代のマネーとフィンテック」と題するパネルディスカッションでは、財務省の理財局国庫課の課長兼デジタル通貨企画官・津田夏樹氏が、金融庁や日銀のフィンテック領域担当官らとともに登壇。政府・日銀が研究を進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)の活用の可能性や今後の展望について語りました。
CBDCは、ブロックチェーン技術を用いた法定通貨で、中国などが研究・実証実験で先行しています。日本政府と日銀は、現時点でCBDC発行の予定はないとの建前を維持しながらも、国際的な議論の動向を注視しつつ調査研究にリソースを割いています。
財務省内でCBDCの研究や関係省庁との調整を担っている津田氏は、税金や手数料の支払いといった場面でCBDCが利用されることで、行政サービスの効率化につながるとのメリットを説明。「例えば、税金や政府に対する支払手数料の分野では、(徴収機関は)国の機関もあれば自治体もあり、現状は手数料もバラバラの状態だ。その点、“少なくとも公金分野であれば、法定通貨であるCBDCを国も地方自治体も安価で使える”といった感じになれば、すごくいいのではないか」と話しました。
加えて津田氏は、国からのさまざまな給付における活用の可能性にも言及。「年金などの給付や、あるいは必要なときに一時的な給付金が迅速で安価にできるかもしれない」と述べ、受給者と行政の双方で利便性が向上するとの考えを示しました。
また、地域通貨との連携により、地域経済の活性化にも貢献できる可能性にも触れました。「今は自治体ごとにさまざまなデジタル商品券や地域通貨が出てきているが、どうしても地域の中だけで使うことを想定しているので、スケールメリットがない」と指摘。「僕が妄想するのは、仮にCBDCが全国的に普及したとき、プログラマビリティ(プログラムの力で通貨の動きや範囲をコントロールすること)などを使って特定の地域だけで流通させ、地域通貨として使うことで、安価に目的を達成する使い方もあるのでは」と語りました。
一方でCBDCについては、行政側による国民の監視や財産権の侵害につながる可能性も指摘されています。津田氏は「CBDCの導入にあたっては、国民的な議論を通じて、どのようなCBDCを目指すのかを決定していく必要がある」と述べながらも、CBDCが行政や地域社会のDXに大きく貢献する可能性を強調しました。
国や中央銀行が発行するCBDCとは別に、民間セクターで発行されるステーブルコインについても注目が集まっています。金融庁総合政策局フィンテック参事官室のチーフフィンテックオフィサー・牛田遼介氏は、同月にステーブルコインの取り扱いが認められる電子決算手段等取引業者の第1号(SBI VCトレード)が出現するといった足元の動向を紹介。「おそらく今(既存の)お金が当然いろんな形で使われているのと同様に、ステーブルコインが使われていくだろう」と展望を示しつつ、「(業界関係者による国際的な意見交換の場では)ステーブルコインを批判する意見も多くある」と説明。「少額の決済や送金ならクロスボーダーを含め使っていいとはいえ、米国の大手銀行に言わせれば『所詮その程度』の規模であり、例えば銀行間送金や大口の送金、クロスボーダー送金に本当にステーブルコインが使えるのかは疑問。場合によっては中銀が手がけるホールセールCBDCというものが、未来にはあるのではないかという話もある」と述べました。
■厚労省、金融庁、経産省…コラボの柔軟さ「足りない」
パネルディスカッション「前例、常識を超えたサービスを目指して~次世代フィンテックの可能性と課題」では、日銀出身の神田潤一衆院議員(法務大臣政務官)が登壇。FIN/SUMの発案者でもあり、岸田前政権下では内閣府大臣政務官として「資産運用立国」関連の政策に携わった立場から、省庁間連携を含めた制度整備の課題と展望を語りました。
神田氏は、「スタートアップ育成5か年計画」が4年目を迎える中、さまざまなボトルネックが解消され、イノベーションを生み出す環境が整いつつあると説明。その上で、「スタートアップを志す人たちも増え、大企業とのコラボも増えている」と成果を強調。石破現政権が掲げる「投資立国」の政策方針を念頭に、創薬など具体的な戦略分野への投資が加速している現状についても語りました。
その上で、フィンテックを含めた金融関連の制度整備について「金融庁はかなり柔軟に、民間の人たちと対話をしながら次に必要な法規制法改正は何かを考えている」と評価。その一方で、「金融庁だけが頑張って変えられる分野は狭い。業界の垣根がなくなっていく中で、金融庁、経産省、厚労省などが他省庁ともコラボしながら一緒に変えていかなければならないところが出てきている。他省庁にも、柔軟な発想で規制を見直していくことが求められていて、変わってきてはいるが、まだまだその部分は足りない」と認識を示しました。