finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

熱狂なき「投資立国」…暗号資産、マイナンバー紐づけで政官の温度差がいっそう拡大?
【オフ座談会vol.2:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2025.03.26
会員限定
熱狂なき「投資立国」…暗号資産、マイナンバー紐づけで政官の温度差がいっそう拡大?<br />【オフ座談会vol.2:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

かやば太郎氏 トランプ政権下でビットコインの値動きが激しくなり、暗号資産業界全体への注目が高まる中、政府・与党内でもこの波に乗ろうとする動きがありますね。

財研ナオコ氏   ただ永田町と霞が関のあいだには、やっぱり温度差もある。去年末の与党税制大綱では、一定の暗号資産を「広く国民の資産形成に資する金融商品」として位置付けると明記された……が、政府が閣議決定した大綱の段階では、この表現が外されていた。

本石次郎氏 金融庁の有力幹部は「結局は投機的な側面が強いので、資産形成の手段かどうかは時間をかけて考えていくべきだろう」と、与党内の論調から距離を置く姿勢を見せていましたよ。

かやば氏 2月の金融審議会総会でも、暗号資産仲介業を創設する方針についてある有識者委員が「あたかも金融庁が称揚・推奨し、『ぜひ皆さん使ってください』と言っているかのようにくれぐれも誤解されないよう」と念を押していたのが印象的でしたね。

本石氏 金融庁内からは「当局の気持ちを代弁してくれた」(職員)といった声も聞こえました。仲介業の創設は、制度を整備した実績として与党にアピールできます。しかし仲介業の中身をみると、むしろ将来的に規制を強める布石としての意味合いが強いわけですね。

かやば氏 3月上旬に開かれたFIN/SUM(金融庁などが例年実施する官民共同イベント)も、長官や大臣をのぞくと石破政権の独自政策に言及する場面は限られていました。むしろ、資産運用立国やスタートアップ育成といった、岸田政権下との連続性をベースにした話題が多かった印象です。

財研氏 講演やパネディス(パネルディスカッション)を見ているうちに、岸田政権がまだ続いているかのような錯覚を抱いてしまったよ(笑)

本石氏 「投資立国」のスローガンの下で推進しようとしている国内投資についても、庁内からは「資産運用立国」のときほどの熱量が感じられませんね。当局幹部は「海外企業に負けない魅力的な投資先が国内にあれば『投資立国』と『運用立国』は重なる部分がもっと増えるんだろうけど、現時点ではそれ以前に、投資家に選ばれる国内企業を育て上げる段階の域を出ない」と気乗り薄の様子でした。

かやば氏 民間セクターとの温度差という意味でもう一つ気になるのが、マイナンバーと銀行口座を紐づける預貯金口座付番制度についてです。すでに段階的に拡大してきた制度ですが、4月1日から全面実施となります。

財研氏 金融機関で新しく口座を作るお客さんに対して、職員側がマイナンバーと口座を紐づけするよう案内することが義務化される、という話だね。

本石氏 SNS上では、「国家による個人の財産の監視強化だ」というような論調が盛り上がっています。しかしデジタル庁は、「紐づけの義務化ではなく、紐づけの案内を義務化するだけだ」と強調しています。

財研氏 マイナンバーの話題はつねに政権にとって「炎上」のリスクがあり、今回も情報発信にはかなり慎重になっているようだ。

本石氏 デジタル庁幹部は「国税はマイナンバーの有無にかかわらず、調査権限に基づいて昭和のころから調査をしてきた」と強調しています。その一方、「場合によっては『マイナンバーを持っている口座を見たい』という話が(国税庁側から)あった際、金融機関側の方で探しやすくなる可能性はある」とも認めていました。利用者側の懸念が払しょくしきれない状況では、政府の旗振りで金融機関の現場がどこまで積極的に動いてくれるか、見通せないところがありますね。

財研氏 フィンテックやDXの話が注目を集めている一方で、投資信託など資産形成の影が薄くなってしまわないか心配だ。

本石氏 金融庁幹部は「金利が上がったとしても物価上昇幅には劣るので、『貯蓄から投資へ』の政策方針の意義は失われない。冷静にみれば労働人口の減少が続く中で30、40年後の日本経済を支えるのは消費であり、その原資を作ることが優先課題だ」と力をこめていました。

財研氏  総じて当局周辺の動きは依然として、岸田路線の延長上にあるといえる。商品券配布をめぐる問題で政局が不穏になるなか、金融庁も官邸のいうことをハイハイと聞くだけではない、より戦略的な立ち位置を模索しているようだ。今後の政局は見通しが難しいが、数カ月内に公表が見込まれる資産運用課の新レポートの中で、当局としての立ち位置がよりハッキリしてくるだろうね。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」

Finasee編集部

今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解

川辺 和将

常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?

finasee Pro 編集部

中国銀行で売れ筋にみる新しい流れを展望するファンドとは? 「世界厳選株式」や「国内小型株」などが人気

finasee Pro 編集部

変化の時期における「長期投資家」の立ち位置は?ベイリー・ギフォード共同経営者に聞く

川辺 和将

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
常陽銀行の売れ筋で「のむラップ・ファンド」が「ゴールド」や「NASDAQ100」より順位を上げた理由は?
今年の漢字は「熊」ではなく「牛」、26年末は日経平均株価6万円に! 暗号資産ETFが出てくれば…日証協会長が会見で見解
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
【新NISA開始から丸2年】オルカンが爆売れだったが…投資地域別にみると浮かび上がる「別の実態」
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
変化の時期における「長期投資家」の立ち位置は?ベイリー・ギフォード共同経営者に聞く
中国銀行で売れ筋にみる新しい流れを展望するファンドとは? 「世界厳選株式」や「国内小型株」などが人気
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」
福岡銀行で国内株「配当フォーカスオープン」が売れ筋トップ、「純金」「米国株」はランクダウン
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」
2025年の新規設定額トップは伝統的な株式・債券のバランスファンド、新しい投資アイデアを提案する新ファンドも続々 =25年11月新規設定ファンド
IBMから画商に転身して抱いた"違和感"の正体とアート市場の「リアル」
ECL計算方法は解釈の余地が大きすぎないか
⑫自社株評価から考える相続対策の本質
三菱UFJ銀行の売れ筋は「日経225」に人気集中、「純金」に代わって「オルカン」人気が復調
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
“霞が関文学”で読み解く金融界⑤ 表題は「FDレポート」なのにFDを突き放す当局
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
「AI以外はほぼリセッションに近い」米国経済はAIバブルか? ―強さと弱点から見通す2026年“変わりゆく”世界経済と投資環境
10年国債利回り2%接近でみずほ銀行の売れ筋に単位型ファンド、利回りニーズをとらえた人気ファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら