2月13日、内閣官房デジタル行財政改革会議はデータ利活用制度・システム検討会の第4回会合を開きました。
これまで検討会では、さまざまな産業分野におけるビッグデータの利活用を推進する観点で、個人情報保護法の改正を視野に意見交換やヒアリングを続けてきました。個人情報保護法は、企業が所有している個人情報、個人データを本来の目的外で活用する場合、事前に本人の同意を得ることを求めています。ただ、現行法はビッグデータの利活用がほとんど想定されていないため、時代に合わせて規制緩和を進めるべきとの論調が強まっています。
その上で今回の会合では、データ利活用を推進する重要性が高い準公共分野の一つとして、金融業界にフォーカスして議論が行われました。
この日、事務局(内閣官房)は「金融分野におけるデータの利活用によって実現する将来像」として次の2つの論点を示しました。
・データの相互運用によるイノベーション促進により、個人のニーズに即した金融商品やサービスを容易に選択できる環境づくりや、新ビジネスの創出等につなげることは考え得るか。
・家計等をはじめとして個人が金融データを柔軟に管理し、活用できる仕組みを整えることで、家計の収支管理や資産運用の利便性が向上し、資産運用立国の実現にもつながるのではないか。
1つ目の「データ相互運用」については、金融業界に限らず、政府全体として推進するビッグデータの利活用拡大に向けた施策の一環といえます。中島淳一元金融庁長官が顧問を務める金融データ活用推進協会(FDUA)においても、非競争領域でグループや企業の枠を越えてデータを共有するプラットフォームの創設などについて、すでに議論が進められています。
金融サービス仲介業に新枠?
一方、2つ目の「個人のデータの柔軟な管理・活用」は、不特定多数の利用者情報の集積であるビッグデータの利活用促進とは、やや文脈が異なります。一人一人の利用者が、別々の金融機関で所有している預金や株式、保険などの商品の情報について、ライフプラン設計のために横断的に集約し、見える化するサービスについて環境整備を進める趣旨とみられています。
事務局側は現時点で具体論に言及していませんが、参加した有識者側からは法改正に向けた踏み込んだ提案も聞かれました。金融サービス仲介業について、他の金融機関からの独立性の確保や顧客情報の管理に関するルールを再整備したうえで、顧客情報を活用したサービス提供を制度的に後押しする案や、2017年の銀行法改正で進められたAPI連携について、銀行以外の業種にも拡大すべきとの声が上がりました。
この日はゲストスピーカーとして、金融庁の堀本善雄・政策立案総括審議官も登壇。政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けた施策の一環として、金融経済教育の推進に関する直近の取り組みを紹介しました。
その上で堀本氏は、「私たちの考える金融経済教育とは、単なる教育・周知活動だけではなく、それを踏まえて自身の金融資産のストックやキャッシュを把握し、将来を見据えたライフプランの設計を促していく活動だと理解いただきたい」と説明。「その前提として、個々人がこれらのデータを容易に把握できる環境整備についても強い関心を持っている」と述べました。