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金融庁が仮想通貨仲介業を新設へ 背景に「金融サービス仲介業」の挫折?

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.12.03
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金融庁が仮想通貨仲介業を新設へ 背景に「金融サービス仲介業」の挫折?

「え、また仲介業を作るの?」……と既視感を覚えた人も多いかもしれません。金融庁は、暗号資産を用いたゲームアプリを手掛ける事業者などを想定した新たな業の枠組み、「暗号資産・電子決済手段仲介業」(仮称)を創設する検討に入りました。今回は、新たな業態の概要を解説したうえで、既存の仲介業がどうなっているかをみていきます。

11月21日に開かれた金融審議会「資金決済指導等に関するワーキング・グループ」の第5回会合で、事務局の金融庁側が新たな業の枠組みを創設する方向性を提示しました。

 

現行制度では、たとえばあるゲームの世界で暗号資産を使ってアイテムを購入する場合、ゲーム会社側は資金決済法上の「媒介」を行っていることになり、暗号資産交換業者の登録が必要になることがあります。

 

暗号資産交換業に登録するには、資本金1000万円の財務要件をはじめ、受託資産管理、利用者保護措置、広告規制などさまざまな制約があります。金融業界の水準感からすれば特別厳しいとは言い切れないものの、他の業界にとってはハードルが高すぎるとの声がありました。

そこで暗号資産交換業とは別に「暗号資産・電子決算手段仲介業」という業を創設し、比較的軽めの要件を設定することで参入ハードルを引き下げるという案が浮上したのです。

 

ただしもちろん現実的に考えれば、たとえばアプリで遊ぶ人からみた場合、暗号資産の取引をゲーム会社がつないでくれているというより、ゲームの仕組みそのものが暗号資産の利用を促してくるようにみえるはずです。暗号資産の直接的な窓口となる事業者の規制を緩めてしまって本当に大丈夫なのか、という懸念もあります。

 

この点について会合で金融庁側は、新業態は利用者の資産の預託も受けないので、利用者に生じるリスクは限定的との見解を提示。所属先の暗号資産交換業に指導・監督の役割を担ってもらう「所属制」を取ることでビジネスの規律付けを図る案を示しました。

 

脱・「脱所属制」のナゼ

法律上は既に、金融商品仲介業、金融サービス仲介業といった仲介業のくくりが存在します。

 

金融商品仲介業はIFAが、金融サービス仲介業は銀行、証券、保険などをワンストップで利用できるアプリの事業者などが典型的ですが、制度の立て付けのうえで両者の大きな違いは、所属制を取っているかという点にあります。

 

金融商品仲介業者は、IFAなど(仲介業者)が特定の証券会社(金商業者)に所属し、その金商業者から指導・監督を受けることになっています。一方、金融サービス仲介業者の場合は、特定の金商業者に所属することなく、提携先の幅を広げる自由度が高い設計となっています。

 

ビジネスの違いを脇におけば、所属制のない金融サービス仲介業者の方が事業者にとっては制約・負担が少なく、メリットが大きいようにもみえます。ただし、足元(10月末時点)の事業者数を比べると、金融商品仲介業者が687社であるのに対し、金融サービス仲介業者は最近増加傾向にあるとはいえ16社にとどまります。それぞれ適正規模の違いはあるにせよ、金融サービス仲介業の利用は活発とはいえません。

 

背景には、金融サービス仲介業の商品取り扱いの制約があります。現状、金融サービス仲介業ではたとえば保険金が1000万円を超える生命保険を扱うことができません。

 

金融サービス仲介業で取り扱える商品の幅が極端に狭いことについて業界内ではかねてから、既存業界からの圧力では…なんて憶測も囁かれています。ただしモニタリングという観点でみれば、問題はむしろ所属制の撤廃の方にあるようです。

所属制とはいわば、本来は監督当局が担うはずのモニタリングの役割を所属先の金融機関に委ねる仕組みです。所属制を敷かない業態においては、人手不足の慢性化している金融庁が全ての事業者に目を行き届かせることは難しく、結局は事業者が取り扱う商品の範囲をあらかじめ厳しく制限しておくしかない、というわけです。今回、創設が浮上した新たな仲介業における所属制の復活はその意味で、登録社数が伸び悩んでいる金融サービス仲介業の教訓からきた反動的な動きともいえるでしょう。

 

 

ちなみに先述のワーキング・グループでは、銀行によるステーブルコインの発行解禁についても議題に上っていましたが、こちらは現時点でニーズが明確でないなどとして結論を先送りすることになっています。

11月21日に開かれた金融審議会「資金決済指導等に関するワーキング・グループ」の第5回会合で、事務局の金融庁側が新たな業の枠組みを創設する方向性を提示しました。

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川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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