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サステナ商品に迫る政治・規制変更リスク…「またトラ」による脱炭素揺り戻しに業界で警戒感

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.11.25
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サステナ商品に迫る政治・規制変更リスク…「またトラ」による脱炭素揺り戻しに業界で警戒感

トランプ氏の返り咲きによって脱炭素に向けた取り組みの揺り戻しを危惧する声も上がる中、金融庁では足元で引き続き、サステナブルファイナンス拡大に向けた制度整備の議論が続けられています。直近で開かれた有識者会議では米大統領選について目立った直接的言及はみられなかったものの、状況変化のリスクを意識した発言も聞こえました。

排出量取引の「政治・規制変更リスク」

11月19日に金融庁で開かれた「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」の第2回会合では、東京海上日動火災保険の幹部が、東京海上グループにおけるカーボンクレジット関連の取り組みをプレゼンしました。

 

同グループでは、TCFD基準に準拠した気候変動対策に関する情報開示の支援、温室効果ガス(GHG)算定支援、再エネ導入、カーボンクレジット購入支援などに注力。また、危機管理コンサルティング費用などを補償する、国内初のクレジット購入企業向け専用保険も開発しています。

 

カーボンクレジットをめぐるリスクについては一般的に、価格変動のリスクや、いわゆる「グリーンウォッシュ」批判などレピュテーションリスクなどが注目されがちです。今回の会合で同社担当者は、カーボンクレジットに関するリスクとして、レピュテーションや価格変動のリスクに加え「政治・規制変更リスク」などを挙げました。

 

(同社担当者が挙げたカーボンクレジットにまつわるリスクの例)

レピュテーションリスク、購入後の価値毀損リスク、政治・規制変更リスク、(前払金を支払う前提)納品されないリスク、カーボンクレジット創出者側の信用リスク、カーボンクレジットの価格変動リスク

 

担当者は、「政治とか規制変更のリスクを感じているお客様は多い」と説明。「弊社でもいろいろなリスクに対して、保険の開発やソリューションの開発に取り組んでいきたいと考えている」と述べました。

 

共和党になれば「がらっと変わる」の声も

カーボンクレジットの仕組みは、企業ごとの排出量の多寡にかかわらず削減に向けたインセンティブを生み出し、社会全体としてGHG(温室効果ガス)の低減を目指すものです。近年は民間主導の市場(ボランタリーカーボンクレジットマーケット)の存在感が高まっていますが、そもそも正確な排出削減量は企業の外部から見えにくいだけに、クレジット取引の信頼性をいかに確保するかが課題となっています。

 

今年5月には米ホワイトハウスが、カーボンクレジット市場の健全な発展を目的としたプリンシプル(「Principles for Responsible Participation in Voluntary Carbon Markets」)と、政府として市場拡大に向け働きかけを強める趣旨の声明を公表しています。


ただ、検討会の第1回会合(6月開催)で、ある有識者は「バイデン大統領の声明も、政権が共和党になればがらっと変わる。実際、米国各州のクレジットに関する考え方はまるっきり違う」と指摘。「混乱期というところを、いかに整理していくかが重要」と述べました。

 

また、11月18日に開かれた、スチュワードシップコードに関する有識者会議の第2回会合では、気候変動対策に向けた国際的な枠組みの動向について委員がプレゼン。この中で、運用会社やアセットオーナーが多数参加している「クライメートアクション100+」において、今年に入ってメンバーの離脱が相次いでいる状況に言及し、その背景について「アメリカにおいて、政治的な観点から環境に関してさまざまな検証がなされる事態に陥ったからだ」と説明しました。

排出量算定や情報開示、クレジット取引の枠組みやルールについてはこれまで国内外で議論が続き、少しずつ実施段階に移行している状況です。トランプ氏の返り咲きによって状況変化が予想されるなか、各主体がどのような立ち位置を取るのか、行政も事業者も難しい判断を迫られることになりそうです。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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