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損保不祥事を受けた法制度改正の議論、金融審WGで着地点が見え始める

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.10.22
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損保不祥事を受けた法制度改正の議論、金融審WGで着地点が見え始める

金融庁で16日、「損害保険業等に関する制度等ワーキンググループ」(WG、座長=洲崎博史・同志社大院司法研究科教授)の第2回会合が開かれました。注目を集めた中古車販売大手の不祥事を受け、代理店ビジネスとそれを監督する保険会社の方策について意見を交わし、法改正に向けた議論の着地点が少しずつ見えてきました。

大規模乗合に限定した上乗せ規制案が浮上

昨年、注目を集めた中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求事件。すでに3月以降、金融庁設置の別の会議体(「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」)が問題点の洗い出しを進め、6月に報告書を策定。「大規模代理店に対する指導等の実効性確保」「保険会社による代理店等への過度な便宜供与等の制限」「乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保」といった論点を示していました。

 

今回会合を実施したWGは、この有識者会議の報告書を踏まえて具体的な法制度の改正に向けた議論を進める作業部会として、首相の諮問機関である金融審議会の傘下に設置されました。

 

2回目となったWG会合では事務局側が、これまでの議論を踏まえた法制度の改正について、以下のように一定の方向性を提示しました。

 

□保険代理店に求める対応

・「特定大規模乗合保険募集人」として

(1)保険金関連事業のうち、不当なインセンティブにおより、顧客の利益または信頼を害するおそれがある取引を特定し、それを適切に管理する方針の策定・公表等を義務付ける。

(2)保険募集にかかる内部管理態勢を強化する観点から、体制整備義務を強化することとしてはどうか。

・保険会社に求める対応

(1)保険金関連事業を兼業する保険代理店における、不当なインセンティブにより、顧客の利益または信頼を害するおそれがある取引を特定し、それを適切に管理する方針の策定・公表等を義務付ける

(2)大規模な(乗合)保険代理店に対する指導力等の強化を目的とした体制整備義務を課す。

(3)求償権行使の適切な把握・管理を求める。

 

有識者会議報告書では、兼業代理店ならではの問題と、乗合代理店ならではの問題について対応が必要と指摘していました。ただ、乗合代理店については大小さまざまな規模の事業者があることから、法改正に向けた議論においては大規模な乗合代理店が抱える課題の解決にフォーカス。結果的に、兼業代理店と大規模乗合代理店という2つのテーマに焦点を当てる方向性が固まりつつあります。

 

中小規模向け行為規制を別途求める声も

出席した有識者委員からは「保険会社に従属するような代理店と、独立性の高いところとを分けていく方向が考えられる」などと、事務局が提示する方向性におおむね賛同する意見が相次ぎました。

 

ある委員は「(既存の大規模事業者のくくり方である)特定保険募集人も15社以上の乗り合いであったり、手数料収入だけで10億円以上に上ったりということがあり、保険会社によるよる指導管理だけでは、なかなか厳しい面があるのではないか」と指摘。保険会社による管理の強化に加え、代理店側の体制整備の義務化も視野に入れるべきとの考えを提示しました。

 

別の委員は「一般論として大規模代理店は保険会社との間で力関係が逆転する可能性があるため、大規模代理店に限定した形で上乗せ規制を課すことに特段の違和感はない」と事務局提案に賛同したうえで、「今回の問題を起こしている兼業代理店は必ずしも大規模代理店の定義に該当せず、今回の上乗せ規制の対象にはならないことにはやはり留意が必要ではないか。不適切な事案の再発防止という意味で別途、行為規制を課すとともに、監督指針等でグラデーションをつける形で体制整備義務を課すことは必要だろうなと思う」と述べました。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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