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FD原則確定、新たな情報連携の枠組みは「あらゆる金融商品が対象となり得る」と金融庁

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.10.16
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FD原則確定、新たな情報連携の枠組みは「あらゆる金融商品が対象となり得る」と金融庁

金融庁は9月26日、「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)の改定版を正式に公表しました。投資信託など金融商品の組成会社に対し、想定顧客属性の特定などを求める5つの補充原則が追加されました。ただ、どの範囲の事業者が具体的にどのような対応を求められるのか、書きぶりが曖昧なところもあります。パブリックコメントへの金融庁の回答文から、当局のスタンスを読み解きます。

FD原則改定については何度か別の記事でも触れていますが、改めてポイントを簡単に確認しましょう。

 

FD原則はもともと、7個の原則で構成されています。

今回の改定では、この7個のオリジナルの原則と別に、5つの「補充原則」が追加されました。

補充原則では、投資信託などの金融商品の組成会社がプロダクトガバナンス(顧客利益を優先した商品管理の高度化)確保に向けて取り組むべき事項を示しています。商品を企画・組成する際に、その商品をどのような顧客層が購入するか(「想定顧客属性」)をあらかじめ特定することや、販売会社との情報連携を通じ、実際に想定した通りの顧客層に商品が届いているかを含め、組成後の商品管理を徹底すること、そのための体制整備に取り組むことなどを促しています。

また、既存の原則のうち「原則6」に新たな注釈を追加。ここで、販売会社側が果たすべき役割(組成側との情報連携など)について規定しています。

 

改定に向けて、金融庁は7月から8月にかけて意見募集(パブリックコメント)を実施。正式確定にあわせて、パブコメで寄せられた質問や意見に対する金融庁の回答を公表しました。

110項目にわたるパブコメ回答のうち、ここでは、押さえておきたい注目ポイントを二つ取り上げます。

 

「あらゆる金融商品が対象になり得る」

補充原則を取りまとめる過程では、投資信託の組成会社を念頭に金融審議会内での議論が進められてきました。ただ、最終的な改定版では、取り組みを求める対象となる金融商品の範囲について明確な線引きを設けない書きぶりとなっています。

パブコメでは、今回追加される補充原則について、元本保証のない商品について適用すべきといった意見も寄せられました。これに対し金融庁側は、改定版のFD原則の表現を引きつつ、対象となる「金融商品」について「特に定義を設けない」とし、「あらゆる金融商品が対象となり得る」との見解を改めて示しました。

ある金融庁職員は、元本保証の有無と補充原則適用の関係という文脈で、あえて金融庁として明確な線引きを設けない考えを示したことについて「今回のパブコメ回答のうち、重要な要素の一つだ」と話しています。

 

報告様式の改定

FD原則は、法律的なルールとは違って直接的な強制力のないプリンシプル(行動規範)の位置づけです。

原則を採択する事業者は、取組方針や取組内容を自社ホームページで公表したうえで、規定のフォーマットで報告すると、金融庁が公表する採択事業者リストに社名が掲載されます。逆に、金融庁から「お墨付き」を得るためには、定められたフォーマットで報告する手続きが必須となっています。

 

パブコメ回答では、原則改定後の報告の方法についても言及。改定後の原則に基づく報告様式について「2025年1月を目途に新しい報告様式を公表」し、提出期限が25年6月末(同年9月末公表予定)の分から適用すると明らかにしました。

そのうえで、「改定後原則に基づく『金融事業者リスト』への掲載を希望する場合には、報告時点(2025年6月まで)で取組方針・取組状況を公表していることが要件になる」と説明しています。

たてまえ上、金融庁側は採択事業者から受け付けた報告が規定のフォーマットに従っているかだけを審査しており、各社における取り組みのよしあしは評価していないことになっています。

ただ、商品横断的な比較書面「重要情報シート」を導入した前回改定(21年)時から報告を受理するハードルが上がり、報告から掲載まで一部事業者でタイムラグが発生する事態も目立つようになりました。新フォーマットによる報告の受付が開始したあと、新たに求められる情報連携の取り組みについて、金融庁としてどの程度まで目を光らせることになるかも業界内で関心を集めることになりそうです。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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