finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

「サステナブル投資商品はテーマ型にあらず」 金融庁公表資料でさりげなく初明記

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.07.17
会員限定
「サステナブル投資商品はテーマ型にあらず」 金融庁公表資料でさりげなく初明記

金融庁は、ESG投信を含むサステナビリティ投資商品の取扱いについて議論する場として昨年12月に設置した「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」での意見を整理した資料を公表しました。この中では、サステナビリティ投資が、手数料目当ての短期的な回転売買を誘発しやすいとして問題視されてきた「テーマ型」に該当しないとの見解が明記されています。かつて金融庁が公表した別資料でESGやSDGsなどを”テーマ視”する表現もみられましたが、インパクト投資を中心として課題解決事業への資金供給が政府課題となる中、ここにきてサステナビリティ投資は長期投資に資するという考えを明確に打ち出した形です。

21年FDレポートではESGを「テーマ」と…

個人投資家、機関投資家含め幅広い投資家にとって「魅力的」なサステナビリティ商品の供給環境について話し合う目的で設置された「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」。昨年12月以来4回にわたり会合を実施し、7月5日にその成果を「『サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ』対話から得られた示唆」として公表しました。

この中で、サステナビリティ投資とテーマ型投資との関係性について、以下のように記載されています。

 

「サステナビリティ投資は(略)産業や技術など、特定の分野に投資対象を限ったいわゆるテーマ型の投資商品の1つとして、理解される場合がある。

 

同一の環境事業に投資する商品であっても、特定の分野に着目するいわゆる「テーマ型投資」と、当該事業の長期的な潜在性に着目する「サステナビリティ投資」は、概念的には異なりうるものである。

 

特に後者は、長期の資産運用に資することを戦略的に検討し、投資領域の判断というよりも、投資先の長期的な持続可能性を見出し、これにつながる建設的な投資行動を行っているかが重要となる」

 

サステナビリティ投資を、短期的な売買を誘発しかねない「テーマ型投資」といかに区別するか(あるいはそもそも区別しうるのか)といった議論は、今やある種のタブー的な扱いとなっています。しかし金融庁としては過去に、ESGやSDGsをテーマの一種とみなすような情報発信を行ったこともあります。たとえば2021年6月公表の「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」では、当時販売が集中していた「テーマ」として医療関連、デジタル関連と並び「SDGsやESG関連」を挙げています。

 

この点について金融庁幹部は「それぞれの資料にはそれぞれ文脈があり、矛盾はない」と説明。「サステナビリティ投資を掲げているからといって、通常の金融商品に適用されるプリンシプルやルールが免除されることはない」と強調します。

今回の資料は官民の対話の場における議論を整理したものであり、厳密には当局の公式見解とはいえません。ただ、「成長と分配の好循環」の青写真を実現する重要な推進力として、インパクト投資を含むサステナブル投資の拡大に政府全体として傾斜するなかで、金融庁の現在の立ち位置を明確化させた格好です。

 

アクティブ投信の"手触り感"を強調

また資料中には、アクティブ投信のメリットを強調している記載もみられます。アクティブ投信は流動性が低く、手数料が高い傾向にある一方で「特定の観点から特徴的な企業を個別に選別するなど、投資戦略に沿った『優良な』企業を投資家につなぐ役割が期待される」と説明。「市場平均的である場合に投資の効果を直感的に捉えづらい」インデックス投信との比較を際立たせる書きぶりとなっています。

 

そのうえで資料では今後の取り組みの方向性として、①フラグシップとなり得る代表的な投資商品の輩出、②ロールモデルとなる運用者、資産運用会社、企業経営者のビジョンや動向(の見える化)③サステナビリティ、インパクトを可視化するデータ整備(組入下位銘柄の開示を含む)――などを挙げています。

21年FDレポートではESGを「テーマ」と…

個人投資家、機関投資家含め幅広い投資家にとって「魅力的」なサステナビリティ商品の供給環境について話し合う目的で設置された「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」。昨年12月以来4回にわたり会合を実施し、7月5日にその成果を「『サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ』対話から得られた示唆」として公表しました。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
  • #ESG・SDGs

おすすめの記事

新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか

みさき透

不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

finasee Pro 編集部

ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋トップに新設の単位型ファンド、バランス型人気も続く

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔

文月つむぎ

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
新プログレスレポートと金融庁幹部人事の背景を読む、キーワードは「官邸の弱体化」と「尻に火が付いた暗号資産対策」
【オフ座談会vol.6:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【みさき透】金融庁はなぜ毎月分配型に「免罪符」を与える気になったのか
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
不安定な市場環境で「利回り」と「信用力」の高さを併せ持つ米国地方債にチャンス=フランクリン・テンプルトン・アメリカ地方債ファンドが設定3周年

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
アクティブファンド復権!? 中国銀行で株式アクティブへの期待高まる。「ROBO」と「純金」の評価も向上
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋トップに新設の単位型ファンド、バランス型人気も続く
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
ターゲットは“デジタル富裕層”―SMBCグループとSBIグループの新会社設立により「Olive」に新たな“プレミアムクラス”
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
アクティブファンド復権!? 中国銀行で株式アクティブへの期待高まる。「ROBO」と「純金」の評価も向上
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
資産形成を達成した後…「次なる課題」
ターゲットは“デジタル富裕層”―SMBCグループとSBIグループの新会社設立により「Olive」に新たな“プレミアムクラス”
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
常陽銀行にみる株式ファンドへの逡巡、「相互関税」と「中東緊張」で様子見の中を上値に進むファンドは?
【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
⑥経営者保証がもたらす問題点と解決策【動画つき】
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら