finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

金融商品の「ゆりかごから墓場まで」を見つめる?一見、ポエムな金融庁ペーパーの狙いとは

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.05.15
会員限定
金融商品の「ゆりかごから墓場まで」を見つめる?一見、ポエムな金融庁ペーパーの狙いとは

金融庁が4月26日、「商品・サービス及び業務のライフサイクル管理に関する基本的な考え方」(案、以下「LCペーパー」)を公表しました。金融商品が生み出され、販売現場を経由して利用者(投資家)のもとに届き、その役目を終えるまでを生き物の一生に見立て、そのライフサイクルに焦点を当てて金融機関に求められる対応を記載しています。今年3月に新設された「最善利益義務」との関係に焦点を当てながら、一見「ポエム」的にも感じられる文書の狙いについて考えます。

必要に応じ「取り扱い停止判断」を促す

無機質な商品を有機的な生き物に見立ててその一生(ライフサイクル)に焦点をあてるというロジックは、霞が関では珍しくありませんが、従来は金融よりも脱炭素の分野でよく使われてきました。たとえば環境省は自動車や家電などの製品について、材料を調達して加工、販売し、エンドユーザーのもとで消費され、廃棄されるまでに排出される温室効果ガスの総量を計測する「ライフサイクルアセスメント」のガイドラインを策定しています。

一方で今回、金融庁が公表したLCペーパーが注目しているのは温室効果ガスではなく、金融商品やサービスが金融機関において企画・立案されてから、その役目を終えるまでに生じる「リスク」です。ここでいうリスクは財務的リスクだけでなく、レピュテーション(評判)など非財務的なリスクも含まれているということです。

LCペーパーでは、ライフサイクルの各局面を「新商品管理等」と「商品等の継続的な管理」の2つに大別。銀行グループや証券会社グループにおいてそれぞれ求められる対応の方向性を記載しています。

「新商品管理等」については、グループ全体を統括する経営陣が取締役会の責任の下、「グループの経営戦略との整合性やリスクアペタイトを踏まえて、適時に新商品等の導入を行うこととのできる態勢を整備すべきである」と指摘。新商品等管理態勢を整備し、運用するチームの重要性を強調し、内部監査部門を含めた3線管理によるリスク評価機能、けん制機能の発揮を求めています。

「商品等の継続的な管理態勢」に関しては、商品導入後において「(環境変化などによって生じる)リスクが顕在化する前に特定し、リスク管理態勢の強化やオペレーションの見直しを行う、あるいは自社の経営戦略と不整合となっているのであれば商品の取り扱いを停止する決断を行うことが、商品等のライフサイクル管理の要である」と指摘します。そのうえで、取り扱い件数や金額、苦情、事務事故の件数や推移などのデータ整備を含めたリスク変化を検知し、効率的に商品リストなどの見直しを行うよう促しています。

「強制力はない」というものの…

この文書の位置づけは、あくまでも金融庁が事業者を対象に実施するモニタリングの場で対話の材料として用いる「ディスカッションペーパー」です。廃止された検査マニュアルの代替的なツールではありながら、たてまえ上、この文書が最終化されたあともその内容に法的な強制力は生じません。金融機関が求められる対応について明確な具体性をもって記載されている部分が極めて少ないだけに、意地悪な見方をすれば、理論的体系に落とし込むことなく生のままの発想を書き綴ったポエム的な印象さえ受けるかもしれません。

とはいえ、この文書には事業者側にとって、単なるポエムとして無視しきれないところがあります。LCペーパーの冒頭では「経営環境が複雑化し、急速に変化する中で、金融機関における商品等の管理態勢を見直し、高度化する必要性が増している」と説明。その環境変化の例として、今年3月の改正金融サービス提供法施行による「最善利益義務」の新設を挙げています。

仕組債販売をめぐる一連の議論を背景に創設に至った最善利益義務をめぐっては、何をもって「最善」と判断するのかが曖昧で、事業者側で不安の声が上がっています。新ルールの運用では、「顧客本位の業務運営に関する原則」など既存のプリンシプル(法的ルールと別に当局が策定する行動規範)がよりどころになるとの見方もあります。

こうしたタイミングでLCペーパーが公表されたことは、金融商品のライフサイクル管理の観点から「問題を認識しながら取り扱いを停止しなかった」、あるいは「問題を検知するための体制整備そのものを怠っていた」といった監督当局の判断が、行政処分に結び付く可能性もあるとけん制するメッセージとも解釈できそうです。

金融庁は5月31日午後5時まで意見募集(パブリックコメント)を実施したのち、文書を最終化させる見通しです。

必要に応じ「取り扱い停止判断」を促す

無機質な商品を有機的な生き物に見立ててその一生(ライフサイクル)に焦点をあてるというロジックは、霞が関では珍しくありませんが、従来は金融よりも脱炭素の分野でよく使われてきました。たとえば環境省は自動車や家電などの製品について、材料を調達して加工、販売し、エンドユーザーのもとで消費され、廃棄されるまでに排出される温室効果ガスの総量を計測する「ライフサイクルアセスメント」のガイドラインを策定しています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

【プロが解説】エネルギー安全保障を支える「軽くて曲がる」次世代太陽電池への期待

伊藤 里沙

【第4回】オルタナティブ戦略ファンドは何を見て選ぶのか

八杉 哲史

CDSにヘッジ会計が適用できるのか

岡本 修

SBI証券で日本株「4.3倍ブル」が人気、米国ハイテク株には慎重姿勢? 日経平均の急落にも買い向かう投資家

finasee Pro 編集部

Japan Weeks初日に高市首相と伊藤長官が語ったこと

川辺 和将

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【第4回】オルタナティブ戦略ファンドは何を見て選ぶのか
CDSにヘッジ会計が適用できるのか
「テクノロジー×教育×アクセス向上」でプライベートアセットの民主化を――iCapitalが描くオルタナ市場拡大への道筋
中国銀行の売れ筋で外国株式ファンドの勢力図を再編、「世界のベスト」「WCM」が上位固定の一方で新興勢が存在感
SBI証券で日本株「4.3倍ブル」が人気、米国ハイテク株には慎重姿勢? 日経平均の急落にも買い向かう投資家
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
【プロが解説】エネルギー安全保障を支える「軽くて曲がる」次世代太陽電池への期待
歴史的な金利上昇局面で「オルカン」「S&P500」が盤石な理由は? SBI証券の売れ筋でにわかにランクアップした「ゴールドファンド」
新NISA戦略を運用会社に聞く⑥ アセットマネジメントOne、窓口でも低コスト「たわらノーロード」をきっかけに幅広い商品提案につなげる
特例処理を「使ってみる」
【第4回】オルタナティブ戦略ファンドは何を見て選ぶのか
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
社債620兆円、その先に何がある?――日証協2040年ビジョンを読む
常陽銀行の売れ筋で「NASDAQ100」が第3位に浮上、「グローバル・ロボティクス」は「フィジカルAI」の本命か?
マン・グループの洞察シリーズ⑳
新たな投資局面の原動力となるインフラ資産
Japan Weeks初日に高市首相と伊藤長官が語ったこと
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
CDSにヘッジ会計が適用できるのか
「支店長! もっと自分を必要としてくれる会社に転職したいです」
SBI証券で日本株「4.3倍ブル」が人気、米国ハイテク株には慎重姿勢? 日経平均の急落にも買い向かう投資家
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
J-FLECの労作「家計見える化報告書」で“先送り”にされた2つの論点
「支店長! もっと自分を必要としてくれる会社に転職したいです」
中途半端な再発防止策も容赦なく「処分の対象」に?--他人事にしにくいプルデンシャル行政処分の3つの注目点
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
三菱UFJ銀行の9月ランキングで「ウェルス・インサイト(標準型)」がトップ維持、「世界のベスト」が急浮上
みずほ銀行で「キャピタル世界株式」がトップに、想定最終利回り約2.7%の「グローバル債券ファンド」も人気化
【第4回】オルタナティブ戦略ファンドは何を見て選ぶのか
Keyaki Capital、投資アドバイザーを対象としたオルタナティブ投資プラットフォームの提供を開始
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら